【アナリスト水田雅展の銘柄分析】川崎近海汽船は9月安値で底打ちして下値固め、指標面の割安感を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を展開している。株価は9月の年初来安値で底打ちして下値を固める動きだ。6~7倍近辺の予想PER、3%近辺の予想配当利回り、そして0.4倍近辺の実績PBRという指標面の割安感を見直して反発展開だろう。なお10月30日に第2四半期累計(4月~9月)の業績発表を予定している。

■近海輸送と内航輸送を展開、新規のオフショア支援船は16年竣工予定

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門を展開している。

 中期成長に向けた新規分野として、13年10月オフショア・オペレーションと均等出資で合弁会社オフショア・ジャパンを設立した。日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出する。オフショア支援船は16年2月竣工予定だ。なお15年5月1日付でオフショア支援船事業推進室を新設している。

 15年3月には、18年春予定で岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路を開設するべく検討を開始した。宮古港、室蘭港とも近隣に国立公園など観光資源が豊富なため旅客需要も期待できるとしている。

 また15年7月には、16年秋に静岡県清水港と大分県大分港をRORO船で結ぶ新たな航路を開設するべく検討を開始したと発表している。深刻なドライバー不足で関東・甲信~九州間の陸上長距離輸送が困難となっている実情を踏まえ、海上輸送へのモーダルシフトを推進する。清水~大分間を20時間で結ぶことで、関東・甲信~九州間をトレーラーでの海陸一貫輸送により、集荷から3日目の早朝までの配送が可能になる。

■修繕費増加した15年3月期第1四半期をボトムに営業損益改善基調

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)111億91百万円、第2四半期(7月~9月)122億87百万円、第3四半期(10月~12月)119億83百万円、第4四半期(1月~3月)104億85百万円だった。営業利益は第1四半期56百万円の赤字、第2四半期8億59百万円、第3四半期9億60百万円、第4四半期5億98百万円だった。第1四半期は所有船のドック入りが集中して修繕費が増加したが、第1四半期をボトムとして営業損益は改善基調だろう。

 また15年3月期の配当性向は57.8%だった。ROEは14年3月期比0.2ポイント低下して2.2%、自己資本比率は同3.6ポイント上昇して56.3%となった。

■16年3月期営業減益予想だが、原油価格下落メリット

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月30日公表)は売上高が前期比4.7%減の438億円、営業利益が同4.7%減の22億50百万円、経常利益が同9.8%減の22億円、純利益が同3.0倍の15億円としている。配当予想は前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)で予想配当性向は19.6%となる。

 近海部門は市況低迷が長期化しているが、バルク輸送では効率配船、木材輸送や鋼材・雑貨輸送では運航効率の向上を図る。内航部門は総じて安定した荷動きを見込んでいる。純利益は前期計上した保有船舶減損損失の一巡が寄与して大幅増益予想だ。なお前提は為替レートが1米ドル=120円(前期は1米ドル=108円13銭)、燃料油価格(国内価格)が5万6600円(前期は6万8175円)としている。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比4.2%減の107億16百万円と減収だが、営業利益が3億円(前年同期は56百万円の赤字)、経常利益が3億09百万円(同70百万円の赤字)、純利益が2億01百万円(同64百万円の赤字)だった。為替のドル高・円安効果、修繕費の減少、燃料油価格の下落などで営業損益が大幅に改善した。

 セグメント別に見ると、近海部門は売上高が同0.3%増の43億04百万円、営業利益(全社費用等調整前)が1億21百万円の赤字(同3億02百万円の赤字)だった。バルク輸送では石炭・スラグなどの年度契約で安定輸送量を確保し、円安も寄与した。利益面では効率配船の取り組み強化なども寄与して赤字幅が縮小した。内航部門は売上高が同7.0%減の64億11百万円だが、燃料油価格下落も寄与して営業利益が同71.5%増の4億22百万円だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が24.5%、営業利益が13.3%、経常利益が14.1%、純利益が13.4%である。利益進捗率が低水準だが、原油価格下落メリットも寄与して第2四半期以降の挽回が期待される。

■中期経営計画で18年3月期ROE8.9%を目指す

 15年4月に発表した15年度中期経営計画では、目標値を18年3月期売上高495億円(近海部門175億円、内航部門320億円)、営業利益34億円(近海部門5億円の赤字、内航部門39億円の利益)、経常利益35億円、純利益24億円、ROE8.9%、自己資本比率61.1%、DER0.45倍とした。前提の為替レートは1米ドル=120円、燃料油価格は7万1500円である。

 また新造船建造等に対する3年間の合計投資額は133億円とした。期間中の新造船は近海部門の一般貨物船1隻(社船または傭船)、内航部門の石炭船一隻(傭船)、一般貨物船1隻(傭船)、石灰石専用船1隻(社船)、RORO船1隻(社船)、新規事業のオフショア船1隻(共有船)の予定である。

 近海部門では、喫緊の課題である収益改善に向けて、適正な船隊規模による効率配船と新規顧客の獲得を目指す。内航部門では、不定期船輸送における各専用船の安定輸送確保と新規貨物開拓、定期船輸送とフェリー輸送における新規航路の開設を進める方針だ。

 陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目されており、中期的にはオフショア支援船業務や新航路開設も寄与して収益拡大が期待される。

■株価は9月安値で底打ちして下値固め

 株価の動きを見ると、年初来安値圏330円~340円近辺でモミ合う展開だが、8月25日の322円、9月7日の年初来安値314円を割り込む動きは見られない。9月7日の年初来安値で底打ちして下値を固める動きだ。

 10月7日の終値337円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円09銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は3.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS784円66銭で算出)は0.4倍近辺である。なお時価総額は約99億円である。

 週足チャートで見ると9月の年初来安値圏での長い下ヒゲで底打ちし、その後は下値を固める動きだ。また日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。6~7倍近辺の予想PER、3%近辺の予想配当利回り、そして0.4倍近辺の実績PBRという指標面の割安感を見直して反発展開だろう。

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