クレスコ、26年3月期2桁増益予想で1Q順調、好調な受注と積極的な事業展開が牽引

 クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系システムインテグレータである。ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力に、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。26年3月期も2桁増益予想としている。受注が好調に推移し、人件費増加などを吸収する見込みだ。第1四半期が2桁営業増益と順調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸した6月の最高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化

 独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。

 セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。

 25年3月期のセグメント別業績はITサービス事業の売上高が540億82百万円で営業利益(全社費用等調整前)が76億77百万円(内訳はエンタープライズの売上高が220億50百万円で営業利益が24億98百万円、金融の売上高が171億65百万円で営業利益が23億92百万円、製造の売上高が148億66百万円で営業利益が27億86百万円)、デジタルソリューション事業の売上高が46億77百万円で営業利益が1億67百万円、営業利益調整額が▲18億60百万円だった。収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。

■M&A・子会社再編

 M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、23年2月に日本ソフトウェアデザイン(JSD)の全株式を取得して子会社化、23年3月にフォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同で、フォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)に出資した。23年9月には飲食業界のDX推進支援の拡大に向けて、ベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業CAPICHI社と資本業務提携した。23年12月には、セキュリティ脆弱性診断サービスやSOC(セキュリティオペレーションセンター)構築・運用など情報セキュリティサービスを展開するセキュアイノベーションと資本業務提携した。

 24年4月にはシステムコンサルティングやインフラ設計構築・運用などを展開するジェット・テクノロジーズを子会社化した。24年6月には連結子会社クレスコ ワイヤレスの全株式を譲渡した。24年7月には同社、連結子会社のJSDおよびメクゼスの3社の組織再編を実施した。メクゼスがJSDを吸収合併(合併後の商号はメクゼス)するとともに、同社がJSDの一部事業(JSDが名古屋営業所において営む事業の全て)を譲り受けた。3社のノウハウやリソースを地域別に整理・統合して人財・経営資源を有効活用する。24年9月には子会社のクレスコ・ジェイキューブが電気・電子部品業界に向けに特化した基幹システム開発の高木システムを子会社化した。

■働き方改革や健康経営を推進

 24年4月に発表した新中期経営計画2026(24年度~26年度)では、成長に向けた方向性として「IT・技術を通じて顧客の競争優位性を創出し、ともに社会を前進させるデジタル価値創造企業を目指す」を掲げた。目標値としては30年までに売上高1000億円企業を目指し、27年3月期売上高700億円、営業利益80億円、営業利益率11.5%、ROE15%を掲げた。配当性向は25年3月期より40%に引き上げる。またサステナビリティ経営関連の目標としては女性管理職比率13%、エンゲージメントスコア70などを掲げた。

 重点戦略としては、共創型モデル確立、品質リーダーシップ発揮、人的資本経営推進、技術・デジタルソリューション拡張、事業連携促進、デジタル変革実現、グループ一体経営を掲げた。

 事業別戦略としては、ITサービス事業のエンタープライズ分野ではワンストップサービスの提供拡大・効率化、主力業界の深耕、エンタープライズ領域のさらなる拡大、新しい価値のサービスの顧客との共創、金融分野ではバックエンド領域の拡大、データ連携・処理技術(ミドルウェア)の強化、共創をテーマとした業務推進、さらなるデータ利活用、業務知識の強化・法規制対応、製造分野ではインフォテインメント系の統合・充実、サイバーセキュリティ対応・セーフティな製品設計、モビリティ領域への集中、モビリティサービスの実装、顧客企業のITケイパビリティ強化、デジタルソリューション事業ではクラウド・オートメーション領域の継続的なアップデートへの取り組み、プリセールス・カスタマーサクセスの強化、経営課題の解決に寄与するソリューションの拡充、クレスコブランドのデジタルソリューション開発・実装、ブランド力向上による業界内の地位確立を推進する。24年7月にはグループ内AI技術活用等に取り組む仮想組織「生成AIビジネス変革研究室」を設立、新たな開発拠点「Teq-C」を開設した。

 25年5月には子会社アイオスが三菱UFJ信託銀行と、システム開発とそれに付帯関連するIT技術者の長期的・安定的な確保を目的として、10年間のパートナーシップ基本合意書を締結した。25年8月には子会社クレスコ・イー・ソリューションが、セゾンテクノロジーによるERPモダン化共同推進に技術パートナーとして参画した。

 なお健康経営・社会貢献関連では、25年3月にはスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2025」に認定された。3年連続となる。また経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度に基づく健康経営優良法人2025(ホワイト500)に認定された。健康経営優良法人は19年から6年連続、ホワイト500は2年連続となる。

■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大

 オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。

 23年10月にはホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」をリリース(JR九州ホテルズで導入)した。23年11月には歯のパノラマレントゲン画像から個々の歯を識別する情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムの特許を取得した。24年8月にはホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」の新バージョンをリリース(横浜ベイシェラトンホテル&タワーズで導入)した。24年8月には新サービス「業務整理ワークショップ」をリリースした。24年11月には自動車産業サイバーセキュリティガイドライン対応サービスの提供を開始した。25年3月には生成AIを活用した「社内DX推進支援サービス」の提供を開始した。

■26年3月期2桁増益で大幅増配予想

 26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比8.9%増の640億円、営業利益が17.0%増の70億円、経常利益が13.5%増の71億40百万円、親会社株主帰属当期純利益が11.2%増の49億円としている。配当については5月9日付で配当方針の変更を発表し、26年3月期より、配当性向の目処を従来の40%から50%へ引き上げるとともに、中間配当を実施することとした。これに伴い26年3月期の配当予想は前期比16円増配の58円(第2四半期末29円、期末29円)とした。連続大幅増配で予想配当性向は48.8%となる。

 第1四半期は、売上高が前年同期比9.6%増の150億80百万円、営業利益が16.6%増の10億14百万円、経常利益が6.6%増の10億95百万円、親会社株主帰属四半期純利益が0.2%減の7億54百万円だった。

 増収・2桁営業増益と順調だった。一部案件で計画延期が発生したものの、全体として受注が高水準に推移し、利益面では前期の不採算プロジェクトの影響が一巡したことも寄与した。なお親会社株主帰属四半期純利益については前年同期に比べて税負担が増加したため小幅減益だった。

 ITサービス事業は売上高が1.1%増の129億29百万円、営業利益(全社費用等調整前)が3.8%増の14億24百万円だった。

 内訳として、エンタープライズは売上高が7.2%増の54億34百万円、営業利益が82.0%増の5億67百万円だった。増収・大幅増益だった。売上面は情報・通信・広告分野におけるアプリケーション開発支援業務が増加し、利益面は前年同期の人材紹介・人材派遣分野で発生した不採算プロジェクトの影響が一巡したことも寄与した。

 金融は売上高が1.6%減の41億16百万円で、営業利益が27.5%減の3億98百万円だった。銀行・保険分野における案件延期発生の影響で減収減益だった。なお延期した案件については下期に立ち上げ見込みとしている。

 製造は売上高が4.5%減の33億78百万円で、営業利益が10.4%減の4億57百万円だった。減収減益だった。自動車・輸送機器分野の受注が伸び悩んだことに加え、機械・エレクトロニクス分野における製品開発プロジェクトの中止・延期の影響を受けた。

 デジタルソリューション事業(ライセンス販売)は売上高が122.2%増の21億51百万円、営業利益が18.0倍の1億61百万円だった。基幹システム導入を主力とする高木システムの新規連結効果などにより大幅増収増益だった。

 通期の連結業績予想は据え置いて、増収・2桁増益予想としている。受注が好調に推移し、人件費増加などを吸収する見込みだ。第1四半期が2桁営業増益と順調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 25年5月9日付で発表した自己株式取得(上限100万株または15億円、取得期間25年5月12日~25年11月28日)については、25年7月31日時点での累計取得株式総数が45万7800株となっている。

 株価は急伸した6月の最高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。8月22日の終値は1774円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS119円55銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の58円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS747円27銭で算出)は約2.4倍、そして時価総額は約745億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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