【首都圏本社移転】過去10年で最多、2025年上半期200社が転入

■地方からの本社移転加速、6年ぶり転入超過で「首都圏回帰」鮮明に

 帝国データバンクは9月18日、2025年上半期(1~6月)の首都圏「本社移転」動向調査を発表した。同期間に地方から首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)へ本社機能を移した企業は200社で、過去10年で最多となった。首都圏から地方への転出は150社にとどまり、前年同期比10%減少した。この結果、首都圏の転入超過は50社と、2019年以来6年ぶりに半期ベースで転入超過へ転じた。中小企業を中心に「首都圏回帰」の傾向が鮮明化している。

■サービス業が最多80社、ソフト開発や小売も増加

 業種別では、地方からの転入は「サービス業」が80社で最多となり、「受託開発ソフトウェア業」が突出した。次いで「卸売業」32社、「小売業」29社が続いた。サービス業は1990年以降で最多ペースでの移転が続く。一方、首都圏からの転出も「サービス業」が50社で最も多く、「他の事業サービス」「経営コンサルタント業」「広告制作」などが目立った。ただし件数はコロナ禍以降で最少水準にとどまった。卸売業や小売業でも一定の転出は見られるが、総体的には首都圏にとどまる動きが強まっている。

 売上高規模別では、地方からの転入は「1億円未満」が79社で最も増加幅が大きく、「1~10億円未満」も84社に達した。他方で「100億円以上」の大企業は9社にとどまり、比率は3年ぶりに2割を下回った。転出企業では「1~10億円未満」が71社で最多で、中堅規模企業の動きが強まった。転入元は大阪府が40社で最多、次いで福岡県22社と、地方広域からの集中が進む。転出先は大阪府や静岡県など近隣や大都市圏が多く、コロナ禍で見られた遠方移転は減少傾向となった。

 今回の調査では、企業の「脱首都圏」の流れが一服し、営業機会や人材確保、ブランド力といった要因から「首都圏回帰」が鮮明化していることが浮き彫りになった。リモートワークや地方創生への理解は一定の浸透を見せたものの、対面営業の再活発化や採用競争の激化により、首都圏に本社を置く優位性が再び注目されている。2025年通年では5年ぶりに転入超過となる可能性が高く、過去35年で最多水準に達する見通しである。企業立地の集中が再び首都圏に傾斜する動向は、今後の地方創生政策にも影響を与えるとみられる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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