【小倉正男の経済コラム】日本の地政学、北朝鮮・サバイバルの手口

■どこで矛を収めるのか

 これは一体どうなるのか――。アメリカのトランプ大統領が、「北朝鮮がアメリカを脅すなら、世界がこれまで目にしたことがない炎と怒りに直面することになる」と言明した。

 北朝鮮は北朝鮮で、すかさず「グアム島周辺に中距離弾道ミサイル4発を同時に撃ち込む計画を検討している」と表明している。この計画の策定は8月中旬とみられている。

 トランプ大統領は、「炎と怒り」では、厳しさが足りなかったかもしれないとしている。「彼(金正恩・朝鮮労働党委員長)がグアムに対して何かすれば、これまで誰も目にしたことのないようなことが北朝鮮に起こる」。さらに、「いまにわかる」、と。

 言葉の上とはいえ、最大限の激しい応酬となっている。どこかで矛を収めるのかもしれないが、予断はできない状況である。今回は矛を後ろに下げても、いずれにせよこの先はわからない。

■恫喝してするりと逃げるサバイバルの手口

 北朝鮮は金一族による世襲の独裁国家という最悪の「国体」を採っている。この国体護持のためにひたすら核爆弾、ミサイルを持とうとしている。
 アメリカに対しては、北朝鮮の国体護持を認めさせる交渉のテーブルに着かせることが戦略目標にほかならない。

 したがって、北朝鮮は挑発を繰り返して、その結果として戦争になれば、いずれにせよ「負け」である。

 韓国や日本を道連れにすると恫喝して、やるぞ、やるぞと見せながら、するりと逃げる。それが北朝鮮のサバイバル戦略というか、巧妙な手口である。

 こんな危ない綱渡りをやっているのが隣国なのだから、困ったものである。地政学とはそういうもので、引越しが効かないところから始まる。

■企業でいえばコーポレートガバナンスのない状態

 世襲の独裁体制で誰も何もいえない国体、何かいえば粛清させる――。そんな息が詰まるような国体は考えただけでもゾッとする。
 そんな国体を存続させるのが第一の目標というのだから、これは言葉がない。

 日本でいえば、世襲の一族企業組織で、番頭さんなども存在せずというコーポレートガバナンスがないような状態である。まわりは何も言わない人で固めて、どんどん会社はおかしくなっていく。何か思う社員は自然にその組織からいなくなるわけである。

 それでも日本の会社なら、どこかで傾いたり、改革されたり、という新陳代謝がなんとか行われる。時間はかかっても、そうした作用がなければ息が苦しい。

 「国体護持」、なんだかどこかで聞いた言葉だが、北朝鮮はいつまで恫喝外交を繰り返すのか――。

 北朝鮮、中国、韓国、ロシアと困った隣人が多いが、それは日本の地政学として受け止めなければならない。引っ越すわけにもいかないのが地政学にほかならない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■東京・愛知・兵庫で屋外広告も掲出、号外や無料バッティング企画も実施  Major League …
  2. ■新生児対象の臨床試験で抗炎症作用と菌叢改善を実証  森永乳業<2264>(東証プライム)は7月2…
  3. ■「日本栄養・食糧学会大会」で研究成果発表、科学的根拠を提示  味の素<2802>(東証プライム)…
2025年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■東証市場、主力株急落と中小型株逆行高で投資戦略二極化  証市場は9月19日に主力株の急落と中小型…
  2. どう見るこの相場
    ■プライム市場の需給悪化を警戒し、個人投資家は新興市場へ資金を逃避  「桐一葉 落ちて天下の秋を知…
  3. ■01銘柄:往年の主力株が再評価、低PER・PBRで買い候補に  今週の当コラムでは、買い遅れカバ…
  4. ■日米同時最高値への買い遅れは「TOPIXコア30」と「01銘柄」の出遅れ株でカバー  日米同時最…
  5. ■東京株、NYダウ反落と首相辞任で先行き不透明  東京株式市場は米国雇用統計の弱含みでNYダウが反…
  6. ■株式分割銘柄:62社に拡大、投資単位引き下げで流動性向上  選り取り見取りで目移りがしそうだ。今…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る