【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートは下値固め完了、中期成長力を評価して出直り

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ワイヤレスブロードバンドサービス事業を展開するワイヤレスゲート<9419>(東マ)の株価は3000円近辺で下値固めが完了したようだ。15年12月期大幅増収増益見通しや中期成長力を評価して出直り展開だろう。

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレスブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供している。販売チャネルはヨドバシカメラでの販売、および携帯電話販売最大手ティーガイア<3738>での販売を主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造だ。

 中期成長に向けた重点戦略としては、M&A・提携も活用したサービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。

 新規事業では14年1月、法人向けWi-Fi環境イネーブラー(構築運用支援)事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体(災害時通信インフラ)、観光地(外国人旅行客誘致)、商店街(集客力向上)などに広がり、20年東京夏季五輪開催も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービス提供を拡大する。

 14年8月にはLTE領域ソリューション拡充の一環として、M2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」の販売開始と、訪問看護サービスのNフィールド<6077>との業務提携を発表した。14年11月にはWeb会議システムのブイキューブ<3681>と業務提携、世界200カ国以上に1300万ヶ所以上のWi-Fiスポットを保有するFon(スペイン)および日本法人フォン・ジャパンと業務協力した。

 なおFonとの業務協力に関して3月18日、日本のWi-Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始すると発表した。20年東京夏季五輪を視野に入れて国内において20万スポットを構築するとともに、Wi-Fiを活用したマーケティング事業をFonおよびフォン・ジャパンと共同で開始し、観光地や商業施設などのパブリックエリアにFonのルーターを活用したWi-Fiエリアを構築する。

 また3月18日には、移動販売者向けプラットフォームを提供するアンデコ社(大阪市)との資本業務提携、およびWi-Fi環境の構築・保守のバディネット社(東京都)との業務提携も発表した。

 観光地や商業施設などに構築するWi-Fiインフラにおいて、アンデコ社「Mobility-Store Platform」と組み合わせてロケーションコマース事業を共同展開する。このロケーションコマース事業の共同展開に関して、バディネット社のWi-Fiインフラ構築体制とノウハウを活用し、ロケーションコマース・ソリューションの拡大を目指すとしている。

 SIMカードに関しては14年9月に「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」を販売開始し、14年12月に「ワイヤレスゲート Wi-Fi」併用可能な訪日外国人向けプリペイド型SIMカードを販売開始した。15年2月には音声機能付きSIMカードの提供開始を発表した。

 前期(14年12月期)連結業績の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)20億45百万円、第2四半期(4月~6月)21億59百万円、第3四半期(7月~9月)23億69百万円、第4四半期(10月~12月)25億32百万円で、営業利益は第1四半期2億07百万円、第2四半期2億00百万円、第3四半期1億76百万円、第4四半期2億11百万円である。

 四半期別の営業利益はSIM事業開始に伴うオペレーション費用発生でやや伸び悩みの形となったが、モバイルインターネットサービス「Wi-Fi+WiMAX」が好調に推移して増収基調を維持している。前期末の会員数は50万人で前々期末比8万人増加した。

 今期(15年12月期)の連結業績見通し(2月12日公表)については売上高が前期比37.0%増の124億72百万円、営業利益が同69.9%増の13億50百万円、経常利益が同70.8%増の13億48百万円、純利益が同71.6%増の8億56百万円、配当予想が同1円増配の年間26円(期末一括)としている。

 個人向けでは公衆無線LANサービスやモバイルインターネットサービス「Wi-Fi+WiMAX」「Wi-Fi+LTE SIMカード」「訪日外国人向けプリペイド型SIMカード」などの販売を強化し、法人向けではWi-Fiインフラ事業(環境イネーブラー事業から名称変更)の収益化を目指す。

 会員数が順調に増加して人件費の増加などを吸収する。前期のSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響も一巡して大幅増益見通しだ。中期的にも成長を加速して収益拡大基調が予想される。

 2月4日に東京証券取引所本則市場への変更申請取り下げを発表したが、企業統治と執行を強化することによって成長スピードを再び加速し、市場変更準備は今後も継続するとしている。

 株価の動きを見ると、東京証券取引所本則市場への変更申請取り下げを嫌気した2月5日安値2653円から反発したが、やや上値が重く安値圏3000円近辺でモミ合う展開だ。ただし足元では徐々に水準を切り上げている。3月25日には3385円まで上伸する場面があった。18日発表の新規事業展開も好感されているようだ。

 3月30日の終値3220円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円53銭で算出)は38倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS224円48銭で算出)は14倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線が上向きに転じた。そして週足チャートで見ると抵抗線の13週移動平均線を突破し、さらに26週移動平均線突破の動きも強めている。3000円近辺で下値固めが完了して強基調に転換する動きのようだ。15年12月期大幅増収増益見通しや中期成長力を評価して出直り展開だろう。

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