クリーク・アンド・リバー社は上場来高値に接近、22年2月期増収増益・過去最高更新予想

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。中期経営計画では「プロフェッショナル50分野構想」を掲げた。21年2月期は新型コロナウイルスによるマイナス影響を吸収して2桁増収増益・過去最高で着地した。22年2月期も増収増益・過去最高更新予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値更新の展開だ。そして00年の上場来高値に接近してきた。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業を主力としている。約8万5000名のクリエイターと約1000社のパートナープロダクションをネットワーク化している。

 21年2月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野9%、医療分野10%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)6%、営業利益が日本クリエイティブ分野73%、韓国クリエイティブ分野▲2%、医療分野30%、会計・法曹分野4%、その他▲4%だった。

 韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。

 収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。

■事業領域拡大戦略を加速

 M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速している。20年8月には任天堂<7974>が著作権を有するゲーム著作物の利用に関する包括的許諾契約を締結した。MCN(マルチチャンネルネットワーク)としてOC(The Online Creators)を運営し、YouTubeを中心に活動する動画クリエイターをサポートしているが、許諾契約締結によってOC所属クリエイターは、任天堂のゲーム著作物を利用した動画や静止画等の共有サイトへの投稿、および指定のシステムによる収益化が可能となった。

 新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、さらにCXO(CXOはCEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称、20年8月本格始動)を展開している。

 新規サービスとしては、米国C&R Globalが法務領域コンサルティングサービス、プロフェッショナルメディアが求人メディア運営、VR Japanが中国IDEALENS社製VRゴーグル販売、台湾インツミット社と合弁のIdrasysがAIプラットフォーム「SmartRobot」開発、クレイテックワークスがゲームコンテンツ開発・運営を展開し、ジェイアール東日本企画と共同でデータドリブンマーケティング事業を推進するJDDLを設立している。

 VR関連ではVR Japanが独自の低遅延リアルタイム配信システムの事業化を推進し、法人向けVR・AR・MR関連サービスの導入実績が4000件を超えている。また、がん治療の中核病院から遠隔医療への応用を見据えて、手術の模様を遠隔地からリアルタイムに視聴する実証実験を受注している。

 クレイテックワークスはインタラクティブブレインズの3DCGアバター事業、VR事業、コンテンツ開発事業を譲り受けた。クレイテックワークスは自社開発ゲームが不振のためモデル転換を推進している。

 さらに20年7月には、VR・Web関連を展開するGruneを子会社化、NHKおよび関連会社の番組制作・編集部門へのスタッフ派遣などを展開するウイングを子会社化した。20年10月にはコンサルティング事業のきづきアーキテクトを子会社化し、協業事例第一弾として東京都が実施する「5G技術活用型開発等促進事業」の開発プロモーターに採択された。21年4月にはブロックチェーンエンターテインメント事業のDEA社(シンガポール)に出資した。なおエコノミックインデックスは21年3月に株式を譲渡して連結から除外した。

 また東大発バイオベンチャーのCO2資源化研究所(UCDI)に出資(18年3月)し、水素と二酸化炭素から菌体を培養してBiofeeds(バイオフィーズ:飼料蛋白素材)やバイオ燃料の資源化を目指す研究開発に協力している。

■中期経営計画で「プロフェッショナル50分野構想」

 21年4月策定の中期経営計画では「プロフェッショナル50分野構想」を掲げ、目標数値を24年2月期売上高460億円、営業利益35億円、営業利益率7.6%とした。

 基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。

■21年2月期は2桁増収増益で着地、22年2月期も増収増益予想

 21年2月期連結業績は売上高が20年2月期比13.3%増の373億14百万円、営業利益が17.4%増の24億47百万円、経常利益が18.1%増の24億85百万円、親会社株主帰属当期純利益が21.2%増の16億47百万円だった。配当は1円増配の16円(期末一括)とした。

 従来予想(1月8日に下方修正)を上回り、2桁増収増益・過去最高で着地した。日本クリエイティブ分野のライツ事業、ゲーム事業、医療分野の医師紹介事業などが好調に推移し、新型コロナウイルスによるマイナス影響(クリエイティブ分野および法曹・会計分野の新規成約・稼働遅れ、クリエイティブ分野のアウトソーシング案件減少、医療分野のレジナビフェア中止、その他分野のアパレル派遣減少、VR機材生産ラインストップによる注文キャンセルなど、全社ベースで売上高20億円、営業利益6億円のマイナス影響)を吸収した。経費の効率化も寄与した。

 四半期別に見ると第1四半期は売上高が前年比15%増で営業利益が33%増、第2四半期は売上高が8%増で営業利益が15%減、第3四半期は売上高が13%増で営業利益が16%増、第4四半期は売上高が16%増で営業利益が26%増だった。新型コロナウイルスの影響は第2四半期に集中した形である。

 医療分野のレジナビフェアは、イベント開催自粛のためオンライン開催に切り替えて、20年7月~21年2月に約550施設の配信を実施した。全国のあらゆる病院の参加が可能になり、医学生も全国からアクセスできるようになった。病院の満足度は95%と好評だった。さらに準備コストも低減した。

 22年2月期連結業績予想は、売上高が21年2月期比7.2%増の400億円、営業利益が16.4%増の28億50百万円、経常利益が14.7%増の28億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が6.2%増の17億50百万円としている。配当予想は1円増配の17年(期末一括)である。

 新型コロナウイルスの影響が一部継続するが、成長分野に対する積極的な投資を継続し、日本クリエイティブ分野を中心にベース事業が2桁伸長して増収増益・最高更新予想としている。さらに上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上場来高値に接近

 1月8日発表の自己株式取得(上限50万株・5億円、取得期間21年1月12日~21年5月31日)については、3月31日時点で累計取得株式数3万1000株となっている。

 株価は年初来高値更新の展開だ。そして00年の上場来高値に接近してきた。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。4月28日の終値は1585円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS78円51銭で算出)は約20倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約1.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS455円87銭で算出)は約3.5倍、時価総額は約365億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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