【どう見るこの相場】ロシアのウクライナ軍事侵攻で株式市場はどうなるか?今後の影響と見通し

■「遠い戦争」に「近い戦争」がダブってセキュリティ関連株はバーチャル系からリアル系までまだまだ出番

 侵略、蛮行、暴挙、残虐、強奪、国家テロ……百万言を費やしてもロシアのウクライナへの軍事侵攻のショックは言い尽くせない。侵攻に先立つウクライナ国境周辺への部隊増強は、交渉で譲歩を引き出すためのブラフ(脅し)とばかり思っていたが、ロシア軍が軍事侵攻した途端にウクライナ全土で一斉に攻撃を仕掛けて短時間で制圧し、首都キエフ陥落も時間の問題と伝えられている。米国やフランス、ドイツとの首脳会談や米ロの外相会談などは交渉の事実だけを残すアリバイ工作にしか過ぎず、初めから用意周到な軍事作戦のうちだったとも疑われる。

 その「遠い戦争」の成り行きにばかり目を奪われていたら、国際社会や新聞・テレビ報道、外交専門家の間で「近い戦争」についても警告する論調が目立っている。その一つは、日本がG7(主要7カ国)の一国としてロシアへの経済制裁を発動したと同時に、金融庁や日本銀行、経済産業省が、銀行や企業にサイバー攻撃のリスクが高まったと警戒を呼び掛けたことである。かねてよりロシアは、ハッカー集団の巣窟と目されていた。実際にロシアは、ウクライナ侵攻とともに同国の政府系サイトへサイバー攻撃を仕掛けた。経済制裁の報復として、電脳戦の勃発は大いにあり得る。

 「近い戦争」は、こればかりではない。中国の王毅外相は、ロシアのラブロフ外相との電話会談でウクライナ侵攻は理解できると発言したが、中国とロシアは同じ強権国家ある。ユーラシア大陸の向こう側のウクライナとこちら側の東アジアとで呼応して力による一方的な現状変更が行われことも懸念されるというのである。中国は、ロシアの軍事侵攻に対して、G7各国がどの程度の対抗措置を取れるのか瀬踏みしているのかもしれない。その見極めがつけばあるいた力による一方的な現状変更を選択する可能性も指摘されているのである。8年前のクリミア併合が、ウクライナ一国にとどまったのとは大違いで、そうなれば侵攻地域は、台湾海峡、東シナ海、尖閣諸島、南シナ海と広がり、すぐ隣に迫ってくる。すでに台湾政府は、厳重警戒を呼び掛けているほどだ。

 中国は、2月20日に人権問題や台湾問題でG7各国から外交的ボイコットを受けた北京冬季オリンピックを終え、3月5日から日本の国会に当たる全国人民代表大会を開会し、並行して3月4日から北京冬季パラリンピックを開幕させる。グルジア戦争にしろクリミア併合にしろロシアの武力行使はオリンピックの年に行われており、今回も、まずこの2つ目の冬の「平和の祭典」を通過する3月13日以降が、台湾海峡が風雲急となって波高しとなるかならないか注目されるタイミングとなる。

 世界のマーケットは、ウクライナの地政学リスクによりリスクオンとリスクオフが交錯し、リスクオフでは原油価格、金先物価格の急騰のみに反応し、この関連株買いの一点張りで終始してきたが、2月24日のロシアのウクライナ侵攻とともに利益確定売りで急反落した。一方、リスクオンでは、前週末25日の米国市場でダウ工業株30種平均(NYダウ)が、ロシアから停戦交渉合意の用意があると伝えられ834ドル高と今年最大の上昇となった。しかしこの停戦交渉の示唆自体も、揺さぶり、駆け引きの一種で、最終的にはウクライナのゼレンスキー大統領の強制排除、傀儡政権の擁立まで目指しているのかもしれずなかなか油断はできない。

 ということで「遠い戦争」と「近い戦争」がダブってなお混迷するとすれば、地政学リスクへの対応は、もう一度ギアアップは不可避で、ハイテク技術・製品の輸出規制強化の経済安全保障問題も含めて、関連株へのアプローチが求められるはずである。今週の当特集では、市場の後追いとお叱りを受けそうだが、地政学リスクは、実際の紛争地域ばかりか「銃後の守り」まで及び総力戦が長引くという前提で、バーチャル系からリアル系までのセキュリティ関連株に網を広げることとした。マーケットのノイズに振るい落とされないよう「銃前の守り」を固めたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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