シナネンホールディングスは24年3月期3Q累計赤字、25年3月期回復期待

(決算速報)
 シナネンホールディングス<8132>(東証プライム)は2月9日の取引時間終了後に24年3月期第3四半期累計連結業績を発表した。電力事業の「逆ザヤ」による売上総利益悪化などにより各利益は赤字が拡大した。そして通期の赤字予想(23年11月13日付で売上高を上方修正、各利益を下方修正)は据え置いた。電力事業については価格変動リスクを最小化すべく今後の実施体制を見直したとしている。四半期別に見ると第3四半期は赤字が縮小しており、第2四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で25年3月期の収益回復を期待したい。株価は1月の高値圏から反落したが、24年3月期の収益悪化は織り込み済みであり、1倍割れの低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。

■24年3月期3Q累計赤字、通期赤字予想据え置き

 24年3月期第3四半期累計連結業績は売上高が前年同期比0.9%増の2375億53百万円、営業利益が22億02百万円の損失(前年同期は4億65百万円の損失)、経常利益が15億62百万円の損失(同2億30百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が21億64百万円の損失(同7億76百万円の損失)だった。

 売上面は、石油製品市況の低下に伴い販売価格が低下したものの、石油類と電力の販売数量増加などにより小幅増収だった。利益面は、電力事業の売上総利益悪化により赤字が拡大した。低位で推移する卸電力市場価格の影響を受け、調達価格と販売価格が逆転する「逆ザヤ」での売却を余儀なくされた。なお営業外収益では受取保険金が2億04百万円増加、営業外費用では前期計上の持分法投資損失2億46百万円が剥落、特別利益では前期計上の固定資産売却益23億53百万円が剥落、特別損失では前期計上ののれん償却額4億09百万円が剥落、減損損失が19億83百万円減少した。

 エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)は、売上高(外部顧客への売上高)が9.1%減の486億82百万円、営業利益(全社費用等調整前)が4億95百万円の損失(前年同期は8億39百万円の損失)だった。平均気温が平年と比較して高く推移したためLPガス・灯油販売の販売数量が減少し、電力事業の売上総利益悪化もマイナス要因だったが、主力のLPガス販売において前期実施した価格改定効果などにより赤字縮小した。

 エネルギーソリューション事業(BtoB事業)は売上高が3.5%増の1736億95百万円、営業利益が23億35百万円の損失(同1億83百万円の損失)だった。売上面は、石油事業におい石油製品市況低下に伴う販売単価下落の影響があったが、電力事業における大口顧客獲得などにより増収だった。利益面は、電力事業の売上総利益悪化に加え、前期好調だった石油事業の売上総利益が平年並みの水準に落ち着いたことも影響して赤字拡大した。

 非エネルギー事業は、自転車事業の好調が牽引して売上高が8.4%増の150億05百万円、営業利益が36.2%増の6億58百万円だった。自転車事業(シナネンサイクル)は前期後半から実施した価格改定効果や新規法人開拓などで増収増益だった。シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS)はシェアサイクルサービス「ダイチャリ」の拠点開発を推進して増収増益だった。23年12月末時点のステーション数は3400ヶ所超、設置自転車数は1.2万台超の規模となった。環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク)は建設系廃木材の搬入量減少や販管費の増加で減収減益だった。抗菌事業(シナネンゼオミック)は国内向け販売が順調に推移して増収増益だった。システム事業(ミノス)はLPガス基幹業務システムが安定的に推移して前年並みだった。建物維持管理事業(グループ4社を23年10月に統合してシナネンアクシア))は、集合住宅の建物メンテナンス業務のエリア拡大などで増収だが、統合に伴う販管費の増加で減益だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が713億93百万円で営業利益が7億18百万円の損失、第2四半期は売上高が698億20百万円で営業利益が14億32百万円の損失、第3四半期は売上高が963億40百万円で営業利益が52百万円の損失だった。第3四半期は赤字縮小した。

 通期の連結業績予想(23年11月13日付で売上高を上方修正、各利益を下方修正)は据え置いて売上高が23年3月期比11.0%増の3800億円、営業利益が8億円の損失(23年3月期は8億95百万円の利益)、経常利益が2億円の損失(同12億27百万円の利益)、親会社株主帰属当期純利益が7億円の損失(同4億78百万円の利益)としている。配当予想も据え置いて23年3月期と同額の75円(期末一括)としている。

 24年3月期は電力事業の売上総利益悪化により赤字予想だが、電力事業については価格変動リスクを最小化すべく今後の実施体制を見直したとしている。四半期別に見ると第3四半期は赤字が縮小しており、第2四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で25年3月期の収益回復を期待したい。

 なお2月9日には代表取締役の異動および社長交代を発表した。24年3月期の業績悪化に対して経営責任の明確化を図るとともに、第三次中期経営計画必達のため経営体制を刷新する。

■株価は上値試す

 株価は1月の高値圏から反落したが、24年3月期の収益悪化は織り込み済みであり、1倍割れの低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。2月9日の終値は4015円、今期予想配当利回り(会社予想75円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS4902円63銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約524億円である。情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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