
■雇用統計への懸念と政治的対立が重しに
5日のNY株式市場は、翌日に発表される5月の雇用統計を控え、慎重な投資姿勢が広がる中で主要株価指数が全面安となった。ダウ工業株30種平均は42,319.74ドル(前日比108.00ドル安)で引け、2日続けての下落となった。NASDAQ総合指数も19,298.45(同162.04ポイント安)と下げて取引を終えた。
下落の要因として、テスラ株の急落が投資家心理を冷やし、とりわけテクノロジー関連銘柄に売り圧力をかけた。雇用関連指標の弱さも相まって、前日に発表された民間雇用者数が市場予想を大きく下回ったことに加え、この日の新規失業保険申請件数も24.7万件と、予想の23.5万件を上回った。これにより、雇用統計への懸念が一段と強まった。
■テスラ株、1日で約22兆円の価値失う
テスラ株は14%超の急落となり、時価総額は1日で約1520億ドル(約22兆円)失われた。欧米の報道によれば、テスラにとって1日あたりの下落幅としては過去最大とされる。急落の背景は、イーロン・マスクCEOとドナルド・トランプ前大統領との関係悪化がある。マスク氏は、大型減税法案に対し批判的な立場を取り、同法案にEV(電気自動車)への優遇措置が盛り込まれていない点に不満を表明した。これに対し、トランプ氏がテスラやマスク氏に対する政府契約や補助金の停止を示唆したとされる。この政治的対立がテスラの業績に悪影響を及ぼすとの懸念が市場に広がった。
■米中首脳の電話会談も効果限定的
同日には、トランプ氏と中国の習近平国家主席による電話会談が実施され、貿易問題を巡る協議が行われたことが一時的な好材料とされた。実際に、ダウ平均は取引中に一時173ドル高まで上昇する場面もあったが、終盤にかけて再び売りが強まり、結局はマイナス圏での引けとなった。影響は他業種にも波及し、一般消費財セクターや生活必需品が下落した。投資家の不安心理を表すVIX指数は前日の17.61ポイントから18.48ポイントに上昇し、市場の先行きに対する不透明感の高まりを示している。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)