エスプール、25年11月期は増収・2桁営業増益予想、中間期は計画上回る順調な着地

 エスプール<2471>(東証プライム)は、障がい者雇用支援などのビジネスソリューション事業、およびコールセンター向け派遣などの人材ソリューション事業を展開し、広域行政BPOサービスや環境経営支援サービスなど新規事業の拡大も推進している。25年11月期は増収・2桁営業増益予想としている。ビジネスソリューション事業の成長が牽引する見込みだ。第2四半期累計(中間期)は計画を上回り営業増益と順調だった。なお障がい者雇用支援サービスと環境経営支援サービスの売上が第4四半期偏重となるため、全体の営業利益も第4四半期に集中する見込みとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業を展開

 ビジネスソリューション事業(障がい者雇用支援サービス、広域行政BPOサービス、環境経営支援サービス、ロジスティクスアウトソーシングサービス、セールスサポートサービス、採用支援サービスなど)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、販売・営業スタッフ派遣、施工管理技士派遣など)を展開し、新規事業の拡大も推進している。

 24年11月期のセグメント別業績(セグメント間取引および全社費用等調整前)は、ビジネスソリューション事業の売上収益が150億16百万円(障がい者雇用支援サービスが80億35百万円、広域行政BPOサービスが15億06百万円、環境経営支援サービスが15億93百万円、ロジスティクスアウトソーシングサービスが13億31百万円、セールスサポートサービスが11億66百万円、採用支援サービスが7億87百万円)で営業利益が36億99百万円、人材ソリューション事業の売上収益が106億20百万円(コールセンター業務が85億83百万円、販売支援が12億20百万円)で営業利益が8億67百万円だった。

 24年10月には東洋経済オンライン「障がい者雇用率が高い会社」ランキングTOP100に選出された。25年2月には環境情報開示システムを提供する国際的な非営利団体であるCDPによる評価で最上位のリーダーシップレベルに位置する「A―」の評価を獲得(2年連続)した。25年3月には経済産業省および日本健康会議が認定する健康経営優良法人に6年連続で認定された。また福利厚生の充実・活用に注力する法人を認証・表彰する制度「ハタラクエール2025」において「福利厚生推進法人」として認証された。

■ビジネスソリューションは障がい者雇用支援が主力

 ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービスを主力として、広域行政BPOサービス、環境経営支援サービス、ロジスティクスアウトソーシングサービス、対面型会員獲得・販売促進のセールスサポートサービス、アルバイト・パート求人応募受付代行の採用支援サービスOMUSUBIなども展開している。

 障がい者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」は、障がい者雇用を希望する企業に対して農園を貸し出し、企業が主に知的障がい者を直接雇用する。障がい者の職業的自立および社会参加の支援を通じて、ノーマライゼーション社会の実現に貢献する事業である。24年11月期末時点の顧客数は664社、管理区画数は8809区画、就労者数は4405名(定着率92%)となった。売上高の内訳は運営管理費、設備販売、人材紹介料などである。

 ロジスティクスアウトソーシングは品川センターと流山センターの2拠点において展開している。収益力向上に向けて物流センター運営代行サービスを終了し、EC通販発送代行サービスに集中している。セールスサポートサービスでは、24年3月にエスプールセールスサポートがベルシステム24と共同で「リアルプロモーションCRM」サービスの提供を開始した。採用支援サービスOMUSUBIは飲食・小売業を中心に求人応募受付業務を行っている。23年4月には面接代行サービスの実施件数が10万件を突破した。顧問派遣サービスについては23年1月に、企業のプロ人材の活用を支援するサービスの名称を、従来の「プロフェッショナル人材バンク」から新ブランド「TAKUWIL(タクウィル)」に変更した。

■広域行政BPOサービス

 広域行政BPOサービスは、人口10万人以下の地方都市を中心に、隣接する複数の自治体業務を受託する地方自治体向けシェアード型BPOサービスを全国展開している。

 24年5月には徳島県鳴門市と包括連携協定を締結した。地域の交通課題の解決に向けた取り組みや自治体BPOを推進する。25年3月には長崎県および長崎県対馬市へ立地申し入れを行い、同市および県内の複数自治体および民間企業の業務を受託するシェアード型のBPOセンターを開設すると発表した。全国22拠点目となる。25年6月には山口県宇部市よりリモート窓口およびDXコールセンター業務を受託した。本事業は総務省が主導する「フロントヤード改革モデルプロジェクト」の一環として、広域的な行政改革を推進する先駆的事例に採択されている。25年8月には山口県宇部市BPOセンターを開設した。

■環境経営支援サービス

 環境経営支援サービスは、市場拡大が期待できる環境ビジネス分野での新たな収益柱の構築を目指し、20年6月にエコノス<3136>からカーボンオフセット事業を展開するブルードットグリーンの株式を取得して子会社化(22年4月に株式追加取得して完全子会社化、現エスプールブルードットグリーン)した。CO2排出量算定支援から、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)関連の排出量削減コンサルティング、クレジット仲介支援まで、ワンストップサービスの展開を推進する。

 ゼロカーボンシティ実現に向けた包括的連携協定・未来共創パートナーシップ協定は、24年2月に群馬県富岡市、24年3月に鹿児島県和泊町、24年6月に栃木県さくら市、24年7月に北海道陸別町、24年9月に宮崎県都農町、岐阜県輪之内町、25年2月に奈良県宇陀市、25年3月に北海道上川町、埼玉県児玉郡上里町、大阪府門真市、25年4月に兵庫県朝来市、福岡県宇美町、山梨県上野原市、25年5月に埼玉県宮代町、25年6月に福島県南会津町、25年7月に三重県大紀町と締結して全国29件となった。また25年3月にはゼロカーボンタウンの実現を目指し、沖縄県嘉手納町および地域事業者と共同で設立した嘉手納町脱炭素推進コンソーシアムに参画した。

■人材ソリューション事業はコールセンター派遣が主力

 人材ソリューション事業はコールセンター業務の派遣を主力として、販売・営業スタッフ派遣や施工管理技士派遣なども展開している。

■その他分野

 その他分野では、24年6月に地域中小企業の課題解決に向けて事業承継支援サービスを展開する子会社エスプールブリッジを設立した。24年9月にはエスプールブリッジが地方創生支援の取組として、地域特産品を販売するオフィスコンビニ「ふるさとすたんど」サービスを開始した。24年10月にはサステナビリティ研修ツール「PivottAサステナ」を活用し、ニフコと共同でニフコのサプライチェーンマネジメントにおける実証実験を開始すると発表した。

■中期経営計画(25年11月期~29年11月期)

 25年1月に策定した中期経営計画では最終年度29年11月期の目標値に売上収益360億円、営業利益45億円、営業利益率13.3%、連結配当性向30%以上、高水準のROE維持を掲げている。24年11月期実績を基準とするGAGR(年平均成長率)は売上収益が7.1%、営業利益が10.1%となる。重点戦略として主力事業を軸としたオーガニック成長の継続、グループシナジーによる事業推進、AI/DX活用による収益性および経営効率の向上、次世代を担う多様な人材の育成を掲げている。

 注力事業の戦略として、障がい者雇用支援サービス(売上収益29年11月期目標130億円、GAGR10.6%)では、農園サービスの全国展開(24年11月期53農園、29年11月期目標90農園)を推進し、26年11月期より既存モデルの7大都市圏への拡大、27年11月期より小規模な新型モデルの地方都市への展開を推進する。

 広域行政BPOサービス(同29年11月期目標29億円、GAGR14.0%)では広域行政モデルの確立に向けて、BPOセンターの拡充(24年11月期21拠点、29年11月期目標30拠点)や、広域行政業務比率の引き上げ(24年11月期30%、29年11月期目標70%)を推進する。

 環境経営支援サービス(同29年11月期目標24億円、GAGR8.5%)ではサステナビリティ経営コンサルティングのリーディングカンパニーを目指し、顧客基盤拡大、サービスメニュー拡充による顧客深耕、コミュニティプラットフォーム立ち上げなどを推進する。

 また、人材アウトソーシングサービス(同29年11月期目標110億円、GAGR0.7%)では、フィールドコンサルタントの専門性向上による現場改善機能強化や、派遣スタッフの定着率アップによる顧客満足度向上などにより、高付加価値化を推進する。

 25年2月には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」をリリースした。25年1月に公表した新中期経営計画の着実な実行を通じて、資本収益性を一層向上することを前提に、効果的なIR活動を推進し、市場評価の向上と資本コストの改善に取り組む。なお25年2月には東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT―3)において自己株式90万株を取得した。

■25年11月期2桁営業増益予想で中間期順調

 25年11月期連結業績(IFRS)予想は売上収益が前期比5.0%増の268億28百万円、営業利益が10.4%増の30億74百万円、親会社所有者帰属当期利益が9.2%減の19億07百万円としている。配当予想は、前期と同額の10円(期末一括)としている。予想配当性向は41.4%となる。

 第2四半期累計(中間期)は売上収益が3.4%増の124億99百万円、営業利益が8.7%増の8億06百万円、親会社所有者帰属中間利益が40.1%減の4億10百万円だった。

 計画(25年1月14日付の期初計画値、売上収益123億13百万円、営業利益5億02百万円、親会社所有者帰属中間利益2億50百万円)に対して、売上収益は1億86百万円、営業利益は3億04百万円、親会社所有者帰属中間利益は1億60百万円それぞれ上回った。営業利益は減益予想から一転して営業増益で着地と順調だった。障がい者雇用支援サービスの販売が好調に推移し、費用の一部が下期へズレ込んだことも寄与した。親会社所有者帰属中間利益は前期の繰延税金資産計上の反動で減益だが、計画に対して減益幅が縮小した。

 セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上収益が15.8%増の76億18百万円、営業利益が20.1%増の14億20百万円だった。

 障がい者雇用支援サービスの売上収益は15.1%増の44億76百万円だった。管理収入の積み上げ設備販売の伸長により順調だった。設備販売は692区画、期末時点の顧客数は697社、農園数は55農園、管理区画は9375区画、就労者数は4688名(定着率92%)となった。

 広域行政BPOサービスの売上収益は2.4%増の4億83百万円だった。売上収益は国策案件の谷間のため前期並みだが、原価見直しにより利益開改善が進んだ。環境経営支援サービスの売上収益は26.9%増の5億93百万円だった。カーボンクレジットの大口販売が売上を押し上げた。第4四半期に売上が集中するコンサルティング案件の受注も好調だった。通販発送代行サービスの売上収益は2.2%増の6億53百万円だった。主要顧客の拡大などにより2期ぶりに増収に転換した。販売促進支援サービスの売上収益は47.8%増の6億79百万円だった。ナショナルクライアントとの取引が拡大し、全国規模の大型案件が増加した。採用支援サービス(OMUSUBI)の売上収益は12.0%増の4億20百万円だった。新サービス(健康診断事務代行)が寄与した。

 人材ソリューション事業は売上収益が11.6%減の49億12百万円、営業利益が13.0%減の3億69百万円だった。コールセンター派遣の売上収益は9.5%減の19億72百万円だった。ただし四半期別に見ると、第2四半期はスタッフの新規採用や退職者抑制などにより13四半期ぶりに増収に転じた。販売支援の売上収益は41.7%減の2億04百万円だった。なお建設技術者派遣は第1四半期に黒字化し、第2四半期も順調だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上収益が61億31百万円で営業利益が2億61百万円、第2四半期は売上収益が63億68百万円で営業利益が5億45百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いて、セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)の計画はビジネスソリューション事業の売上収益が12.6%増の169億08百万円で営業利益が14.3%増の42億29百万円、人材ソリューション事業の売上高が4.9%減の101億円で営業利益が8.3%減の7億95百万円としている。

 売上収益の内訳は、ビジネスソリューション事業では障がい者雇用支援サービスが12.0%増の90億円、広域行政BPOサービスが16.2%増の17億50百万円、環境経営支援サービスが15.5%増の18億40百万円、通販発送代行サービスが3.8%減の12億80百万円、販売促進支援サービスが22.6%増の14億30百万円、採用支援サービス(OMUSUBI)が11.1%増の8億75百万円で、人材ソリューション事業ではコールセンター派遣が2.1%減の84億円、販売支援が26.2%減の9億円、その他が2.1%減の8億円としている。

 ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスの農園開設は6農園、設備販売は1300区画の計画である。26年より農園の全国展開を目指す。広域行政BPOサービスは国策案件の開始により下期偏重の計画(第3四半期600百万円、第4四半期667百万円)である。環境経営支援サービスは売上が第4四半期に集中(第3四半期1億21百万円、第4四半期11億25百万円)する見込みで、通期の顧客別内訳は企業向けが17.5%増の15億40百万円、自治体向けが5.7%増の3億円としている。通販発送代行サービスは物流センターの生産性向上と料金適正化に取り組む。販売促進支援サービスは主要顧客との取引拡大を推進する。採用支援サービス(OMUSUBI)ではAIを活用した採用支援サービスの本格展開を目指す。人材ソリューション事業のコールセンター派遣は長期・高単価案件の拡大に注力する。販売支援は再拡大を目指して専用拠点を整備する。建設技術者派遣は首都圏エリアの体制強化により拡大を目指す。

 25年11月期は2桁営業増益予想としている。第2四半期累計計画を上回る営業増益と順調だった。なお障がい者雇用支援サービスと環境経営支援サービスの売上が第4四半期偏重となるため、全体の営業利益も第4四半期に集中する見込み(第3四半期約400百万円、第4四半期約18億68百万円)としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。8月13日の終値は327円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS24円35銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS124円51銭で算出)は約2.6倍、そして時価総額は約258億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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