【小倉正男の経済コラム】Stepjob 外国人採用支援サービスは成長期 若い人が振り向かない地方企業には命綱(ライフライン)

■日本企業への外国人採用支援サービスは成長期入り

 生産年齢人口(15歳~64歳)の減少が止まらない。生産年齢人口のピークは1995年8716万人。しかし、現状は7170万人(95年比17.8%減)になっている。

 2050年には5000万人(同42.7%減)台を維持できているかどうか。最悪では生産年齢人口が5000万人を割り込むと予測されている。

 「いま日本企業への外国人採用支援サービスは倍々ゲーム、成長期を迎えている」
 そう語るのはポールトゥウィンホールディングス(PTW=東証プライム・3657)の行平澄子Stepjob事業部部長である。

 PTWはゲームなどデバッグ(不具合検出・調整)が主力事業で24年度売り上げ522億円という企業。2011年から外国人採用支援サービスを開始、企業へのマッチング、ビザ手続き、入職、職場への定着などをワンストップでサポートするシステムを構築・運営している。

■海外から直接引っ張ってきて採用するケースも

 このところ、“外国人問題“は何かと騒がしいのだが、労働マーケットでは「成長産業となっている」(行平事業部部長)。

 以前は景気が良いと新卒採用で売り手市場になるのが通例だった。しかし、いまは景気が良くなくても採用面では売り手市場であり、新卒などは企業間の奪い合いになっている。そうした雇用状況からとりわけ採用で困っているのが首都圏、関西圏など大都市の周囲に位置する地方企業・産業である。

 「地方では若い人が採用できない。地元出身で大都市の大学に入った人たちは帰ってこない。地方の大学を卒業しても地元には残らない。そこで外国人採用ということになるが、外国人も東京、大阪に奪われる。地方では日本在住の留学生どころか、海外から直接引っ張ってきて採用するというケースも出ている」(行平事業部部長)。

 新卒は“金の卵”状態だが、地方企業・産業では外国人雇用が引っ張りだこの奪い合い、いやむしろ命綱(ライフライン)になっている。業種的には医療・介護、居酒屋などを含む外食、建設関係、食品加工、自動車など製造業の需要が強い。AIがいくら発達しても、ヒトがいないと企業・産業は廻らないということになる。

■外国人採用も売り手市場に変化

 外国人採用・雇用というと低賃金というイメージが残っているが、そうした状態は一変している。「いまは外国人が会社や職種を選べる状況。調べて納得したうえでシビアに選択する。給料が300万円以上ないと嫌だという事例などもみられる」(行平事業部部長)。

 給料・ボーナスなどは日本人と変わらない。売り手市場となっている。円安はネックだが、「日本は安全」というメリットがある。中国、韓国のように深刻な就職難という近隣諸国もある。中東などからは「日本は平等、中東では平等に働くことができない」(女性)という評価もある。

 「外国人の働き方だが、手順を覚えたいなど一般に熱心。働き方改革の流れとは違って残業したい、稼ぎたいというニーズが旺盛」(行平事業部部長)。いわばハングリーである。

 最後に外国人採用支援サービスのStepjob事業のビジネス収益構造を聴いた。
 「収入は雇用する企業・産業サイドから入ってくる。マッチング、ビザ手続き、入職、職場定着などの支援サービスでは外国人に請求することはない。これも雇用を求める外国人には安心できる面になる」(行平事業部部長)。

 そうしたシステムがインフラとして機能しているとしたら、日本で働きたい外国人には相当に心強いゲートウェイであるに違いない。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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