ケンコーマヨネーズ、原材料高騰の逆風下でも投資強化、成長基盤の再構築進む

 ケンコーマヨネーズ<2915>(東証プライム)はサラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類を主力として、総菜関連事業なども展開している。25年3月期から36年3月期までの12年間を対象とする中長期計画ではビジョンに「サラダ料理で世界一になる」を掲げている。26年3月期はコスト上昇に対する販売価格への反映遅れなどの影響で減益予想(25年11月14日付で下方修正)としたが、積極的な事業展開で27年3月期の収益回復を期待したい。株価は上値の重い形だったが、徐々に水準を切り上げてモミ合いから上放れの動きを強めている。出直りを期待したい。

■サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類などを展開

 サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類の調味料・加工食品事業を主力として、日配サラダや総菜等のフレッシュ総菜およびグループ内生産受託の総菜関連事業等、その他(サラダ専門店Salad Cafeなど)も展開している。ロングライフサラダは国内市場シェア1位である。Salad Cafeは対面の量り売りサラダや弁当の販売を展開している。26年2月(予定)に東京本社を東京都千代田区麹町に移転する。

 なお同社は8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。ドレッシングは野菜にかけて使用することが多いため、831(やさい)にかける→8×3×1=24で24日を、またカレンダーで見ると野菜の日(8月31日)の真上にあるのが8月24日であることから、野菜にドレッシングをかける様子をイメージして8月24日を「ドレッシングの日」と制定した。

 25年3月期のセグメント別売上高(外部顧客に対する売上高)は、調味料・加工食品事業(単体)が718億87百万円、総菜関連事業等(連結子会社)が189億54百万円、その他(サラダカフェ等)が8億61百万円だった。調味料・加工食品事業の内訳は、サラダ・総菜類が209億48百万円、マヨネーズ・ドレッシング類が273億55百万円、タマゴ加工品が217億95百万円、その他が17億88百万円だった。営業利益(調整前)は調味料・加工食品事業が38億94百万円、総菜関連事業等が8億62百万円、その他が3百万円、調整額が84百万円だった。販路別売上高構成比は外食が28.9%、量販店が27.8%、CVSが21.2%、パン(製パンメーカー等)が12.4%、給食(学校、老健施設等)が4.5%、その他が5.3%だった。

■ビジョンは「サラダ料理で世界一になる」

 25年3月期から36年3月期までの12年間を対象とする中長期経営計画「KENKO Vision 2035」では、ビジョンに「サラダ料理で世界一になる」を掲げ、Phase1の25年3月期~28年3月期を事業構造改革の期間、Phase2の29年3月期~32年3月期を再成長の期間、Phase3の33年3月期~36年3月期を進化・発展の期間と位置付けている。

 経営目標値は、Phase1最終年度28年3月期売上高1020億円以上、営業利益33億円以上、DOE1.5%以上、Phase3最終年度36年3月期売上高1250億円以上、営業利益75億円以上、営業利益率6%以上、ROE8%以上、海外売上高比率10%以上、DOE2.5%以上としている。

 Phase1~Phase3合計(25年3月期~36年3月期)の資本配分(投資額)の計画としては、成長戦略に239億円(M&A含む海外進出62億円、新規事業投資25億円、システム投資31億円、事業拠点強化120億円)、スマート化に182億円(事業拠点再編70億円、DX推進等112億円)、人材投資に122億円(教育・人材育成施策62億円、エンゲージメント向上施策60億円)、サステナビリティと社会的責任に205億円(株主還元104億円、自己株式取得45億円、ESGへの投資54億円)、合計749億円としている。

 事業環境の変化に対応した抜本的改革と企業価値の更なる向上を目指し、基本戦略としては、成長戦略(既存事業の収益基盤強化、ブランド構築の実行、事業ポートフォリオの再構築、事業環境変化への対応など)、スマート化(DXを通じた企業改革と生産性向上、成長・合理化・効率化に向けた事業拠点再編など)、人材投資(グローバル企業化、働き方改革としてのダイバーシティ推進、人材育成の強化、キャリアプランが形成できる施策の検討など)、サステナビリティと社会的責任を推進する。

 成長戦略ではマーケットインの発想による商品開発、基盤商品のブランディングとNB商品比率の上昇、海外比率の上昇、SNSを活用したEC事業の拡大、持続可能な原料調達、新規事業へのチャレンジなどを推進する。スマート化ではRPAやAIを活用したDXの推進、グループシステムの最適化、生産分野における新技術構築や合理化・集約化・環境効率化などを推進する。なお7月1日には、関東ダイエットエッグの会津若松工場を閉鎖し、26年3月下旬までに同社の静岡富士山工場に生産を移管すると発表した。

 人材投資では人材育成の充実化、育成システムの構築、働き方改革の実行、ダイバーシティへの対応などを推進する。サステナビリティと社会的責任ではサステナビリティ方針に沿ったロードマップと投資の実行、人を大切にする健康経営、地域社会への貢献と共創、リスクマネジメントの徹底、コーポレート・ガバナンスの強化を推進する。

 また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応については、事業基盤の強化と事業ポートフォリオの再構築による成長戦略を推進し、資本戦略も強化しながら企業価値の向上を図るとしている。資本・財務戦略では株主還元強化(安定的な配当)、政策保有株式の縮減、自己株式取得、株主・投資家との対話強化などを推進する。

■サステナビリティを意識した新製品

 23年9月には、新たなプラントベースフードとして、植物性原料を使用した「タマゴ風加工品」を発表した。プラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、植物性たまごの研究開発・販売を行うUMAMI UNITED JAPANと協業し、主力の「タマゴ加工品」の新たなカテゴリーとなる「植物性タマゴ加工品」として商品を開発・展開する。23年10月にはフードサービス業界向けプラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、たまご不使用のプラントベースのたまご風サラダ「まるでたまごのサラダ」を発売開始した。

 25年3月には、子会社ダイエットクックサプライ(広島県福山市)が地元・広島で規格外食材を活用する商品ブランド「福山工場長」が、一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会主催「ソーシャルプロダクツ・アワード2025」ソーシャルプロダクツ賞を受賞した。25年8月には製造日+90日の賞味期限を実現したロングライフサラダ「FDF Plus」シリーズが、日本食糧新聞社主催「第29回業務用加工用食品ヒット賞」を受賞した。食品ロス削減に貢献したことが評価された。また25年10月には「FDF Plus」シリーズによる配送効率化と食品ロス削減が評価され、食品産業新聞社主催「第55回食品産業技術功労賞(サステナビリティ部門)」を受賞した。

■26年3月期減益予想だが27年3月期収益回復期待

 26年3月期連結業績予想(25年11月14日付で売上高、利益とも下方修正)は売上高が前期比1.2%増の928億円、営業利益が21.6%減の38億円、経常利益が21.0%減の39億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が29.5%減の24億70百万円としている。配当は前回予想を据え置いて、前期比4円増配の47円(第2四半期末23円、期末24円)としている。予想配当性向は28.4%となる。

 中間期の連結業績は、売上高が前年同期比1.1%減の459億41百万円、営業利益が39.1%減の19億44百万円、経常利益が38.7%減の20億04百万円、親会社株主帰属中間純利益が44.6%減の12億45百万円だった。

 売上面は昨年度採用されていたタマゴ加工品、サラダ・総菜類の減少や商品統廃合による販売機会減少などの影響で減収となり、利益面は鶏卵相場の想定以上の高止まりなど原材料(鶏卵・野菜)価格の高騰のほか、物流費や人件費の増加、コスト上昇に対する販売価格への反映遅れなども影響して減益だった。販路別の売上高構成比は外食が29.0%、量販店が27.2%、CVSが21.0%、パンが12.4%、給食が4.6%、その他が5.7%だった。

 営業利益の増減分析は、価格改定で8億30百万円増加、生産効率悪化で2億46百万円減少、販売数量減少で3億14百万円減少、物流費の増加で1億67百万円減少、原材料影響で9億38百万円減少、固定経費等の増加で4億15百万円減少としている。

 調味料・加工食品事業(同社単体ベースの事業)は、売上高(外部顧客に対する売上高)が0.2%減の366億35百万円、営業利益(セグメント間取引等調整前)が47.4%減の14億03百万円だった。減収減益だった。売上高の内訳は、サラダ・総菜類がパスタサラダなどの減少により1.5%減の105億01百万円、マヨネーズ・ドレッシング類が外食向けの増加により1.0%増の139億59百万円、タマゴ加工品がメニュー変更に伴う外食向けのスクランブルエッグの減少などにより0.6%減の112億91百万円だった。

 総菜関連事業等(連結子会社の事業)は売上高が4.0%減の89億27百万円、営業利益が14.9%増の5億15百万円だった。売上面は販売先における一部内製化の影響により減収だったが、利益面は価格改定効果により増益だった。その他(サラダカフェ)は売上高が12.7%減の3億78百万円、営業利益が20百万円の損失(前年同期は1百万円)だった。2店舗退店した。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が226億75百万円で営業利益が7億62百万円、第2四半期は売上高が232億66百万円で営業利益が11億82百万円だった。

 通期の連結業績予想については、前回予想(25年5月12日付の期初公表値、売上高955億円、営業利益48億円、経常利益49億70百万円、親会社株主帰属当期純利益32億17百万円)に対して、売上高を27億円、営業利益を10億円、経常利益を10億20百万円、親会社株主帰属当期純利益を7億47百万円それぞれ下方修正した。商品統廃合による販売機会の減少、コスト上昇に対する販売価格への反映遅れなどが影響する見込みだ。

 セグメント別売上高計画は、調味料・加工食品事業(単体)が前期比2.5%増の736億91百万円(サラダ・総菜類が3.2%増の216億15百万円、マヨネーズ・ドレッシング類が2.7%増の280億96百万円、タマゴ加工品が1.9%増の222億06百万円、その他が0.8%減の17億74百万円)で、総菜関連事業等(連結子会社)が3.2%減の183億49百万円、その他(サラダカフェ等)が12.1%減の7億57百万円としている。

 営業利益(前期比10億45百万円減益)の要因別増減見通しは、価格改定効果で26億16百万円増加、生産効率化で60百万円増加、販売数量減少で3億24百万円減少、物流費の増加で3億34百万円減少、原材料影響で18億76百万円減少、固定経費等の増加で11億89百万円減少としている。

 26年3月期はコスト上昇に対する販売価格への反映遅れなどの影響で減益予想としたが、積極的な事業展開で27年3月期の収益回復を期待したい。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月末日現在の株主を対象として、保有株式数に応じて当社商品を贈呈している。

■株価はモミ合い上放れ

 株価は上値の重い形だったが、徐々に水準を切り上げてモミ合いから上放れの動きを強めている。出直りを期待したい。11月27日の終値は1976円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS165円32銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の47円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2678円13銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約326億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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