【小倉正男の経済羅針盤】政局より「GDP600兆円」「1億総活躍」具体化こそ緊急課題

小倉正男の経済羅針盤

■世界経済は「平穏」を取り戻したが・・・

このところ世界は「平穏」のようだ。そんなことを言うと、「内実は変わってない」とお叱りを受けるに違いない。確かに、内実は何も変わっていない。

だが、一瞬の「平穏」かもしれないが、それはそれで悪いものではない。

アメリカの利上げはやや遠のいた感がある。世界経済がデフレ状況に突入しているのにアメリカ経済だけがよいというわけにはいかない。雇用も予想を下回る動きとなり、インフレも見られない。とりあえず利上げどころではない。

中国の株式市場も大きく下げてきたが、ようやく低位で安定してきた。どんどん毎日下げる状況ではなくなってきている。

中国経済は、「バブル崩壊」により先行きはまだまだ大変だが、これは因果応報というしかない。

■「GDP600兆円」「1億総活躍社会」をめぐり政局か

日本のほうは、安倍晋三総理から「GDP600兆円」「1億総活躍社会」といったフレーズが飛び出した。だが、中身というかコンセプトはこれから練り上げるとしている。

安倍総理にしては、悠長すぎるというか、コンセプトが追いついてきていない。風船を上げたが、空気漏れで落ちるようでは困る。天まで上がれと気合を付けて中身を盛る必要があるのではないか。

「地方創生」のように、それでいま何をやっているのかといったものにならないようにしたい――。「GDP600兆円」「1億総活躍社会」では、なるほどというコンセプトを打ち出してほしいものである。

ところが、その石破茂・地方創生相から「GDP600兆円」「1億総活躍社会」は「突如飛び出したもの」「国民に戸惑いがないとは思わない」という発言が出されている。「地方創生」もそうだが、政策の目玉を華々しく出せばよいというわけではない、というのである。

石破氏としても何も考えないで発言するわけではない。これまでにない発言であり、いよいよ政局が始まるのかという感もある。国内のほうは波乱の目が出てきた。

■政策を具体化すれば「政局」は押し潰せる

石破氏としては、勘案して、ここが勝負どころとして仕掛けたのだろうが、安倍総理はどう反撃するのか。

勝負は政策の中身次第になる――。「GDP600兆円」「1億総活躍社会」の政策コンセプトを具体化して国民の戸惑いをなくせば、政局を押し潰せることになる。

経済政策の実績や信頼度からいえば、安倍総理はかなり圧倒的なものがある。マーケットを含めて、石破氏は論理的だが、経済政策では未知数の部分があるとみられている。国民はいま政局を望んでいるわけでもない。

安倍総理の健康問題があるにしても、政局を仕掛けるのは少し早すぎる。サッカーの本田圭祐が所属するACミランを批判して話題となっているが、それと似ているのではないか。
批判の内容・中身はもっともだが、時期、やり方を誤るとこれは勝負にはならない・・・。

(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■離職率低下と顧客満足向上を実証、省人化潮流に逆行する人材重視戦略  「丸亀製麺」主力のトリドール…
  2. ■ビーム整形と出力平準化技術を融合し大気揺らぎを克服  NTT<9432>(東証プライム)と三菱重…
  3. ■航続距離650キロを実現、日野が新型FCV大型トラック投入  日野自動車<7205>(東証プライ…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  2. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…
  3. ■全市場のわずか1.4%、希少な高配当利回り銘柄が浮上  株式市場では、高配当利回りを持つ10月決…
  4. ■「高市祭り」への期待と警戒交錯、資金は安定配当株へシフト  10月終盤相場は、「高市祭り」か「高…
  5. ■自民党総裁選と連立問題が相場を左右、短期急伸と急落を交錯  高市トレードは、まるで「超高速エレベ…
  6. ■東京市場、リスクオンとリスクオフが交錯、安全資産関連株に注目  週明けの東京市場は、米国株反発に…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る