【宮田修 アナウンサー神主のため息】年神さまを迎えて

 新しい年がやってきました。皆さん明けましておめでとうございます。今年が皆さんにとって素晴らしい年でありますようお祈り申し上げます。

 皆さんは、正月をどのように過ごしておられるでしょうか。正月なんて関係ない。仕事で休みが取れないという人もおられることでしょう。かつて私もそうでした。はっきりした記憶はありませんが、正月に休みが取れるようになったのはかなりベテランになってからです。マスコミは、年中休みがありません。紅白歌合戦を放送する大晦日にニュースセンターで働いていたことが何度もあります。元日の早朝に出勤ということもありました。仕事ですから仕方ありません。現役時代の私のような正月を迎えている人は多いと思います。

 しかしかつて日本人は正月を特別なものとして考え、大事にしてきました。私も定年を迎え、今は神主ですからなるべく私たちの先人たちの正月の迎え方を取り戻そうと考えています。伝統的な日本人の正月の過ごし方をしようとしているのです。すると実に面白いと思えることがたくさんありますのでそのいくつかを書いてみましょう。そんな古臭いことと言わずにお聞きください。

 日本人は、すべてのものに神さまが宿っていると考えてきました。何と正月にも神さまがいらっしゃいます。「年神さま」と申し上げます。私のご奉仕する神社では年末に氏子さんの一軒一軒に年神さまが宿る「幣束」(へいそく)と言いますが畳んで切った紙を、細長い竹の串に挟んで垂らしたものをお配りします。氏子さんの家ではこの幣束を特別に設えた棚にお祀りして正月を迎え、正月の間は年神さまと一緒に過ごすのです。正月が終わると神社の境内に幣束を差して神さまにお帰りいただくのです。今もなお続いています。

 私は神主になるまでこのようなことをしていることを知りませんでした。でも素晴らしいことだと思いました。新しい年を神さまとともに迎え、自分や家族にとって良い年になるよう祈っているのです。是非大切にしたい伝統だと考えています。区切りをつけて気持ちを新たにするというのはぜひ必要だと思います。

 この正月の神さま「年神さま」は、実はご先祖さまでもあるのです。正月にはご先祖さまが戻ってきて私たちと一緒に過ごしてくださるのです。ご先祖さまが来て下さるといえば皆さんはお盆を思い起こすでしょう。お盆以外にも春と秋のお彼岸そして正月の年4回、子孫の繁栄を見守ってくださるために戻ってくださると日本人は考え、正月は年神さまとしてお祀りしたのです。正月を迎えるためにどこの家でも入念に準備をしたものでした。それはご先祖さまを迎えるためだったのです。

 日本人はもともとは米作りを中心とした農耕民族です。ご先祖さまをと共に前年の豊作を感謝し、新しい年の豊穣を祈ったのです。以前にも書きましたが、米が豊作か不作かは日本人にとって大問題でした。秋に収穫した米を1年間食べるのです。不作だと食べるものがなくなってしまします。すると餓死してしまうかも知れないのです。ご先祖さまのご加護が是非必要だったのです。

 今ではデパートの入り口ぐらいしか見られなくなりましたが、「門松」を飾ります。あの門松は年神さまがお戻りになる時の目印です。私たちは子どもの頃、「松竹立てて門ごとに、祝う今日こそ楽しけれ♪」と歌いました。そう言えば最近はまったく聞かれなくなりましたね。

 正月は、日本人全員がお休みでした。ゆっくり休むものでした。これも変わりました。仕方がないのでしょうが、神主になってからの私は残念に思います。伝統的な日本人の正月の過ごし方をもう一度思い出してみても宜しいのではないでしょうか。(宮田修=元NHKアナウンサー、現在は千葉県長南町の宮司)

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