【編集長の視点】「スーパー・バズーカ砲」の射程圏外で足元重視の「冬仕度銘柄」への2本足打法も一考余地=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

日銀の追加金融緩和策が「バズーカ砲」なら、消費税再増税先送り、解散・総選挙は「スーパー・バズーカ砲」かもしれない。バズーカ砲は、日経平均株価を約7年ぶりの高値に押し上げたが、スーパー・バズーカ砲は、さらに1万7400円台乗せと7年4カ月ぶりの高値にまで上昇加速させたからだ。マグニチュードの大きさは、今後ともこの対戦車ロケット弾発射器と同様に口径の大小と装甲貫通力の強弱で比較されることになる。

しかも、ス-パーバズーカ砲が、これまでの観測報道から実際に11月18日に安倍首相によって実弾発射されることになったとしたら、バズーカ砲は、背中からスーパー・バズーカ砲を仕掛けられ面目丸つぶれとなるかもしれない。現に日銀の黒田東彦総裁は、国会の委員会で追加緩和策は、消費税の再増税を前提にして決定されたと述べたことに関して、菅官房長官が、再増税は政府が判断することとピシャリと退けられたからだ。追加緩和策を決定した10月31日の日銀の金融政策決定会合後の記者会見で、記者から追加緩和策決定を先行して消費税再増税が先送りされる「食い逃げ」の心配はないかと問い正されても余裕を持って答えていた同総裁が、まさにその「食い逃げ」に足を取られることになる。

面目丸つぶれとなるのは、株式市場も変わらない。消費税再増税見送りなど、この秋相場シナリオのどこにも想定されていなかった。再増税見送りは、財政再建の足かせとなるとして外国人投資家が、これまでと同様に日本株を売ってくる売り材料と決めつけていたからだ。ところが、「解散・総選挙風」が強まるとともに、案に相違して外国人投資家が、主力株を中心に猛烈な買い越しに転じてきた。それと同時に、それまで市場人気の圏外にいた選挙関連の定番銘柄のオールド・エコノミーが動意付き、プラップジャパン<2449>(JQS)パイプドビッツ<3831>(東1)イムラ封筒<3955>(東2)もしもしホットライン<4708>(東1)ムサシ<7521>(JQS)などが、本格相場の兆しも強めてきたのに呆気を取られるばかりであった。これでは「株価は半年先を予見する」などと自負してきた証券マン各自の面目など吹き飛んでしまい、慌てて市場を後追いすることになった。

もちろん変わり身の速いのも、証券マンのDNAで、今度は、スーパー・バズーカ砲の先取りに走り出した。解散から総選挙までは株価は高いなどとするアノマリーを引き合いに出して、師走選挙後の「アベノミクス」の経済対策や、地方活性化策やカジノ解禁などの成長戦略などを早読みして外国人投資家に遅れてはならじと関連株買いの先陣争いを競うことになった。

しかしである。この早読みのメーン・シナリオの大前提は、師走選挙で自民・公明両党が過半数を制して「一強多弱」の与党体制を維持することにある。出遅れて総選挙の争点探しや候補者調整・選挙協力でも道半ばの野党を尻目に、与党有利は動かないとシロウトながら予想はするが、それでも「選挙は水物」、「政界の一寸先は闇」などという政治アノマリーは心配になる。現に自民党の消費税再増税派の幹部から、「シッペ返しを受ける」などのコメントが伝えられており、前日16日投票の沖縄県知事選挙の投票結果の影響も気になるところである。

こうした「早読みの早倒れ」の心配を共有する当コラムの読者の方々には、メーン・シナリオの主力株一辺倒の一本足打法だけでなく、「スーパー・バズーカ砲」の射程圏外にある銘柄もセレクトする二本足打法を一考することをお薦めしたい。二本足打法の候補株としても、足元の寒気に強まりに重視した「冬仕度」関連銘柄をターゲットにすれば、シーズン・ストック人気もサポートして、早読みリスクを軽減しつつそれなりのリターンも期待できそうだ。

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