【どう見るこの相場】現在の相場を高校野球に例えるとスモールボールか?ビッグボールか?

どう見るこの相場

 今回の当コラムは、門外漢を重々自認しているが、敢えて前週22日に履正社高校が優勝して幕を閉じた高校野球の甲子園大会について触れてから始めたい。かつて高校野球といえば、1点を争うスモールボール(スモールベースボール)の息詰まる熱戦が、熱烈なファンを引き付けてきた。長打力などの攻撃力が限定的で大量得点が期待薄のため、バント、進塁打、盗塁、犠牲フライなどの小技を駆使、鍛え抜かれた守備力を交えて攻防が目まぐるしいシーソーゲームを演じてきたからだ。

 ところが昨今は、今回の甲子園大会も含めて何本もの満塁ホームランが飛び交い大量得点を挙げるビッグボール(ビッグベースボール)に変わってきた。反発係数の高い金属バットが導入され、選手自体も、体位向上のうえに筋トレでパワーアップしてバットのスイングスピードが格段に飛躍したことが要因で、少々の当たり損ねでもホームランになってしまうからだという。

 では続いて本論のマーケットの話に戻そう。現在の相場は、この高校野球に例えるとスモールボールとビッグボールのどちらなのだろうか?米中貿易戦争が抜き差しならず、米国の対華為技術(ファーウエイ)の禁輸措置の方向性が不透明で、長期金利と短期金利が逆転する「逆イールド」が発生する悪環境下では、ボラティリティの大きな「ビッグボール」相場は望むべくもなく、ディフェンシブ的にコツコツとポイントを積み重ねる「スモールボール」相場が、ベースとなるはずである。

 足元の相場は、このセオリー通りに「スモールボール」相場かといえば、どうもそう単純にはいかない傾向がある。長打力のモノをいわせて大幅に値幅効果を発揮する「ビッグボール」銘柄が、飛び出すのである。反発係数の高い半導体関連株などのハイテク株である。米国の対中経済制裁による中国景気減速懸念などでハイテク需要が鈍化、関連市況も悪化して高成長にストップがかかるはずだったのが、トランプ大統領の鼻息一つで経済制裁が一時猶予されるなどのケースでは、そのたびごとに売り方の買い戻しを巻き込んで大きくリバウンドするからである。

 前週末23日は、米国の対中制裁関税第4弾に対する中国の報復関税公表、トランプ大統領の制裁関税の税率強化表明の応酬で、米国のニューヨーク工業株30種平均は623ドル安と急反落し、週明けの東京市場も波乱の幕開けとなりそうだが、これで相場の方向性が確定するかといえばまだまだ予断を許してくれそうもない。前週23日のジャクソンホール会合でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演は、金利引き下げを示唆したとも評価され、9月17日~18日開催予定のFRBのFOMC(公開市場委員会)などの動向次第では、相場の方向性が一転、ハイテク株や指数寄与度の高い値がさ株などの「ビッグボール」銘柄が、高反発係数が面目躍如となる展開も想定され、腕に覚えの投資家には「リターン・リバーサル」のチャンスとなる可能性もないとはいえないから始末に困る。

■福証単独上場銘柄に反発係数の発揮相場を期待

 しかし、にもかかわらず当コラムでは、なお「スモールボール」相場にこだわりたい。そしてその「スモールボール」銘柄の一つとして福岡証券取引所の単独上場銘柄に注目したい。というのも、福証単独上場銘柄の「スモールボール」銘柄のなかから「ビッグボール」銘柄に大変身した銘柄が突出したからだ。Lib Work<1431>(東マ・福Q)である。同社株は、足元では信用規制強化の影響で高値波乱となっているが、今年6月18日に東証マザーズ市場に新規株式公開(IPO)され、福証Q-board市場との重複上場となって以降、東マIPO後の安値1071円からわずか10営業日間で3025円まで買い進まれて2.8倍の大化けを演じ、上場来高値を更新した。戸建販売の不動産会社としてインターネット集客を行う独自のビジネスモデル、連続して過去最高を更新する好業績、四半期配当制度を続け、上場記念増配を予定する株主還元政策などの「スモールボール」実態が、東証マザーズIPOでようやく全国区銘柄としての認知度を高め、8月16日に発表した自己株式取得・上場記念株主優待の実施が、これに拍車を掛けた結果である。「第2のLib Work」探しへ福証単独上場会社へアプローチするのも有効となりそうだ。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■9割超が対策を実施も、「WBGT」の認知は依然として低調  帝国データバンクの調査により、「熱中…
  2. ■「変身と成長」掲げ1300億円の積極投資、収益構造の転換図る  吉野家ホールディングス<9861…
  3. ■人手不足を補いながら顧客満足度の向上に貢献  シャープ<6753>(東証プライム)は5月20日、…
2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

ピックアップ記事

  1. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  2. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…
  3. ■イスラエル・イラン衝突でリスク回避売りが優勢に  イスラエルのイラン攻撃を受け、13日の日経平均…
  4. ■ホルムズ海峡封鎖なら「油の一滴は血の一滴」、日本経済は瀬戸際へ  コメ価格が高騰する「食料安全保…
  5. ■トランプリスク回避へ、大谷・藤井・大の里株が浮上  『おーいお茶』を展開する伊藤園<2593>は…
  6. ■昭和の象徴、長嶋茂雄さん死去  またまた「昭和は遠くなりにけり」である。プロ野球のスパースター選…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る