グローリーと兵庫県立大はAIを利用してCT画像から自動で骨折を検出する支援システムを開発

■骨盤CT画像から骨折を自動検出するAIモデルを開発

 グローリー<6457>(東1)と兵庫県立大学が2019年8月に兵庫県立大学先端医工学研究センター内に共同で開設した兵庫県立大学グローリー医工学共同研究講座のグループが、人工知能(AI)を利用してCT画像から自動で骨折を検出する支援システムを、開発した。

■研究背景

 超高齢化社会の進行に伴い、骨粗しょう症も一因となり脆弱性骨盤骨折患者数が増加している。骨盤骨折は、撮影されるCT画像枚数が数百枚と膨大であるため、骨盤骨折専門の医師でなければ、骨折を精度よく見つけるのは困難。しかし、骨盤骨折専門の医師は少なく、特に高齢者人口が多い地方ではその傾向は顕著。

 AIの応用として、医療への応用は非常に期待されている。特に、脳MRA画像からの脳動脈瘤検出、内視鏡画像からのポリープ検出など、画像からの病変の自動検出は、医師の診断性能を向上し、患者に対する医療の質を向上するとともに、医師の働き方改革を推進する負担軽減、見逃しによる医療事故を削減する。

 AIを用いた骨折自動検出として、2次元レントゲン画像(単純X線画像)からの手首骨折検出などが提案されていた。しかし、CT画像は数百枚の断層画像からなる3次元画像であり、骨折も様々な形状を有しており、従来の方法が適用できなかった。

■研究手法・成果

 兵庫県立大学とグローリーは、兵庫県立大学のAI医療画像解析技術、グローリー株式会社の貨幣・生体などの画像認識技術を融合し、医工学への応用を目的として、医療機器の実用化を目指すグローリー医工学共同研究講座(小橋教授が代表)を2019年に開設した。同年、製鉄記念広畑病院と、同共同研究を開始した。

 製鉄記念広畑病院の村津副院長・整形外科部長らは、93名の骨盤骨折患者のCT画像に対して、骨折の位置、形状を手動でマーク(アノテーション)し、AIを学習するための学習データを作成した。グローリー医工学共同研究講座は、同学習データを用いてAI骨折検出法を提案した。

 骨折は3次元的に様々な向きで形状を有する。提案法では、撮影された3次元画像から、前後左右斜めを含む9方向の断面画像を生成することで、骨折を確認しやすい断面で骨折検出が行われる。これを統合することで、3次元的に骨折検出が可能になる。

 骨折患者93名に含まれる骨折389箇所に対して、AIモデルの学習、評価を行った結果、骨折検出性能は感度(骨折を正しく検出できる割合)が80.5%、適合率(検出したものが正しく骨折である割合)が90.7%だった。

 さらに、骨折を有する患者93名、骨折がない112名の被験者に対して提案法を適用した結果、すべての骨折患者において100%で1つ以上の骨折を検出(感度100%)、骨折がない被験者においては96.4%で正しく骨折がない(特異度96.4%)と判定し、日常診察で非常に有用なAI診断支援となる。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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