【どう見るこの株】ダイトロンは上値試す、23年12月期小幅減益予想だが上振れ余地

どう見るこの株

 ダイトロン<7609>(東証プライム)は、商社機能とメーカー機能を融合したエレクトロニクス技術商社として、電子機器および部品、製造装置、その他のエレクトロニクス製品の販売および製造を展開している。23年12月期は製造装置の売上端境期や先行投資の影響などで小幅減益予想としているが、オリジナル製品比率上昇なども寄与して会社予想に上振れ余地がありそうだ。受注残高が高水準の製造装置の売上高は24年12月期には回復基調となる見込みとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は18年以来の高値圏だ。地合い悪化の影響で利益確定売りが優勢の形となったが、指標面の割安感も評価して上値を試す展開を期待したい。なお5月10日に23年12月期第1四半期決算発表を予定している。

■商社機能とメーカー機能を融合したエレクトロニクス技術商社

 商社機能とメーカー機能を融合したエレクトロニクス技術商社として、電子機器および部品、製造装置、その他のエレクトロニクス製品の販売および製造を展開している。22年12月期末時点でグループは同社、および連結子会社10社(うち海外9社)で構成されている。23年3月にはシンガポール現地法人が事業を開始、23年4月にはオランダ現地法人が事業を開始した。

 22年12月期のセグメント別構成比は、売上高(外部顧客への売上高)が国内販売事業70.3%、国内製造事業4.5%、海外事業25.2%、営業利益が国内販売事業52.6%、国内製造事業18.6%、海外事業30.0%、全社費用等調整額▲1.2%だった。22年12月期は各事業とも大幅に伸長した。

 商品別の売上高構成比は、電子機器および部品が72.2%(電子部品&アセンブリ商品が26.7%、半導体が7.2%、エンベデッド(組込用ボード)システムが6.2%、電源機器が2.6%、画像関連機器・部品が21.4%、情報システムが2.8%、新規事業のグリーン・ファシリティーが3.8%、その他が1.5%)で、製造装置が27.8%(半導体・FPD製造装置が14.8%、電子部品製造装置が9.8%、その他が3.2%)だった。海外売上比率は25.5%(北米2.5%、欧州0.5%、アジア22.5%)だった。全体のオリジナル製品比率は16.0%だった。なお売上総利益率は20.1%(電子部品&アセンブリ商品20.7%、画像関連機器・部品15.1%、半導体・FPD製造装置19.9%、電子部品製造装置26.4%など)だった。

■第10次中期経営計画と成長戦略

 長期目標に「連結売上高1000億円企業を目指す」を掲げ、第10次中期経営計画(21年~23年)では、目標経営指標に23年12月期の自己資本比率50%以上、ROA6%以上、ROE12%以上を掲げている。

 基本的な考え方として、成長性を重視した経営により売上高・営業利益の持続的な拡大を目指す、事業構造改革を推進して売上総利益率20%の確保を図る、持続的な成長の基礎となる投資(人材、技術開発など)を推進するため年3~5%程度の販管費増加を掲げ、基本戦略としては、事業構造変革、統合効果最大化、注力領域・市場明確化による成長加速、持続的成長に向けた「チカラを高める」各種施策を推進している。

 事業構造変革では、23年12月期の事業別構成比の目標値として電子機器・部品65%、製造・検査装置30%、新規事業5%、およびオリジナル製品比率25%、海外比率30%を掲げている。

 統合効果最大化では、販売・マーケティングのM&Sカンパニー、製造・開発のD&Pカンパニー、および海外グループの3つの部門が情報・戦略を共有・連携することで、グローバルな舞台で新たな市場・顧客の開拓を推進する。なお、シナジー最大化に向けた投資戦略としては、中部基幹工場を中心とした設備への投資が第9次中期経営計画で一段落したため、第10次中期経営計画では人財への投資にシフトしている。

 注力領域・市場明確化では、オートモーティブ、ロボットや自動化機器を含む産業機器、通信、センサー関係を含むIoT、5G&6G、メディカル、電池市場を含むエネルギー、航空、海洋、鉄道車両、データセンター、コンピューティング関連、半導体を主な注力領域・市場と位置付けて成長を加速する。

 さらに持続的成長に向けた施策として、マーケティング、モノづくり、新規事業創出、コーポレート部門の各分野において「チカラ」を高めるとしている。

 具体的戦略としては、国内ビジネスでは安定成長に向けて、重点得意先とのさらなる関係強化・深耕、地域密着営業の一層の強化、有望地域への新規展開などを推進する。

 海外ビジネスでは成長加速に向けて、東南アジアにおける画像ビジネス関連、中国における電子商材関連、韓国におけるOLED関連、欧米における電子ビジネス関連などを重点顧客・市場と位置付けるとともに、海外ネットワークの拡充(23年3月シンガポール現地法人が事業開始、23年4月オランダ現地法人が事業開始)を推進する。また次期中計に向けて東南アジアでの製造拠点新設(候補:ベトナム)を検討する。

 生産体制の強化では、中部工場を中核とした体制強化、多面的なコスト低減施策、OEMビジネス等の拡大による収益構造強化を巣審する。オリジナル製品ビジネスの強化では、技術部門を中核とした体制強化、セグメント別の課題達成に向けた開発推進(電子部品事業の耐水圧コンポーネント製品、画像関連の「きらりNINJA」の後継機、電源関連の次期電源開発など)、他社とのコラボによるオリジナル製品の拡充を推進する。

 新規ビジネスの育成では、第9次中期経営計画においてグリーン・ファシリティーを育成し、電源設備関連マーケットにフォーカスした新規開拓活動を展開した結果、売上規模が大幅に拡大した。さらに新たな収益基盤となる新規ビジネスの育成・基礎づくりを推進するため、23年1月にグループ事業推進部を発足した。

 事業サポート機能の改革では、人財力の強化に向けて人事評価システムの見直し、多様な人材の採用と育成の強化、働き方改革、コーポレート部門の強化に向けて次期基幹システム構築のロードマップ策定、総資産圧縮と経営コスト削減、Daitronブランドの認知度向上、コーポレートガバナンスのさらなる強化を推進している。

 なおサステナビリティ経営に関しては、22年5月にサステナビリティ委員会を設置し、主な取組・重点テーマを明確化している。次のステップとして代表的なKPIを策定し、マテリアリティに対する取組進捗状況の客観的把握とさらなる前進を図る方針としている。

■23年12月期小幅減益予想だが上振れ余地

 23年12月期連結業績予想は、売上高が22年12月期比0.4%増の880億円、営業利益が5.3%減の57億30百万円、経常利益が7.7%減の57億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が8.0%減の39億円としている。配当予想は22年12月期と同額の115円(第2四半期末50円、期末65円)としている。予想配当性向は32.7%となる。

 売上面は、グリーン・ファシリティー関連の拡大も寄与して電子機器および部品が堅調だが、製造装置が売上計上の端境期となるため全体として微増にとどまり、利益面はエンジニアを中心とする人材採用・確保に伴う人件費の増加、海外事業の強化や展示会等のプロモーション強化に伴う販管費の増加などを勘案して小幅減益予想としている。

 商品別売上高は、電子機器および部品が4.9%増の663億76百万円(電子部品&アセンブリ商品が2.5%減の228億63百万円、半導体が3.0%減の60億79百万円、エンベデッドシステムが5.2%増の57億28百万円、電源機器が14.1%増の26億21百万円、画像関連機器・部品が8.1%増の202億58百万円、情報システムが7.3%増の26億円、新規事業のグリーン・ファシリティーが51.6%増の50億21百万円、その他が9.5%減の12億06百万円)、製造装置が11.3%減の216億24百万円(半導体・FPD製造装置が23.8%減の98億85百万円、電子部品製造装置が22.5%減の66億32百万円、その他が79.6%増の51億07百万円)の計画としている。

 23年12月期は製造装置の売上端境期や先行投資の影響などで小幅減益予想としているが、オリジナル製品比率上昇なども寄与して会社予想に上振れ余地がありそうだ。なお製造装置については、22年12月期末時点の受注残高392億63百万円のうち、24年12月期以降の納期分が191億64百万円となっている。このため製造装置の売上高は24年12月期には回復基調となる見込みとしている。成長シナリオに変化はなく、積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は18年以来の高値圏だ。地合い悪化の影響で利益確定売りが優勢の形となったが、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形となっている。低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。

 4月7日の終値は2546円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS351円33銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の115円で算出)は約4.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2342円79銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約284億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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