国内景気:6カ月ぶり改善も先行き不透明感強まる――帝国データバンク2025年6月調査

■今後はトランプ関税に関する日米交渉の行方が国内景気に影響する可能性

 帝国データバンクは、2025年6月における景気動向調査の結果を7月3日に発表した。同調査によると、国内景気は小幅ながら6カ月ぶりに改善したが、先行きは不確実性が高まり弱含みで推移する見通しである。特に、トランプ関税に関する日米交渉の行方が今後の国内景気に影響を与える可能性を指摘した。

■季節需要が景気を押し上げ、製造業など5業界で改善も中小企業は横ばい

 2025年6月の景気DIは前月比0.1ポイント増の42.7となり、小幅ながらも6カ月ぶりに改善した。物価上昇による個人消費の低迷は続いたが、エアコンや医薬品、化粧品など季節需要の先取りが景気をわずかに押し上げた。

 業界別では、「製造」を含む5業界で景気が改善し、特に「電気機械製造」は半導体関連の堅調さから9カ月ぶりに改善した。「小売」ではエアコンなどの季節需要や食品・日用品の値上げによる売上増で3カ月ぶりに改善、「サービス」では飲食店や情報サービスが好調で6カ月ぶりに改善した。一方で、「運輸・倉庫」など4業界で悪化し、建設は横ばいとなった。急激な気温上昇による季節需要の先取りがプラスに作用したものの、コメ価格の高止まりや物価上昇、中東問題による原油価格の動向、トランプ関税の不透明感が重荷となった。規模別では、「大企業」と「小規模企業」が改善したが、「中小企業」は横ばいで、規模間格差が2カ月連続で拡大した。地域別では、東北や南関東を含む4地域で改善が見られたが、北陸を含む6地域で悪化し、景況感は地域間で二分された。設備稼働率の上昇や物流関連はプラス材料だったものの、天候要因が下押し圧力となった。

■不確実性高まる景気の今後、トランプ関税と中東情勢が焦点に

 今後の国内景気は、不確実性が高まるなかで、当面は弱含みで推移する見通しである。特に、トランプ関税に関する日米交渉の行方が景況感を大きく左右する可能性があり、中東問題の緊迫化など海外情勢も注視される。賃上げやボーナス支給による実質賃金のプラス転換のタイミングも今後の景気に重要な要素となる。インバウンド需要の継続、物価高対策、設備投資は景気を下支えするプラス材料として期待されるが、為替動向や家計の節約志向は懸念材料である。

■中東情勢への懸念広がる企業の声、原油価格とトランプ関税への警戒感強まる

 今月のトピックスとして、イスラエルとイランの紛争に対し、多くの企業から原油価格の動向と影響の不透明さへの懸念が寄せられた。中東13カ国に進出する日本企業は2024年8月時点で443社に上り、製造業が最も多い150社(33.9%)を占める。建設業からはトランプ関税や地政学的リスクの見通しへの不透明さが指摘され、金融業からは米国景気や住宅不動産市場への影響が懸念された。製造業では中東での地政学的リスクの高まりや原油価格の上昇、それに伴うプラスチック製品の取り扱いへの影響を懸念する声が聞かれた。運輸・倉庫業や専門サービス業からも中東情勢による原油輸入やエネルギー関連への影響を危惧する意見があった。これらの声は、国際情勢の不安定さが日本企業の事業活動に与える影響の大きさを浮き彫りにしている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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