神鋼商事は23年3月期大幅増収増益、24年3月期減益予想だが保守的

(決算速報)
神鋼商事<8075>(東証プライム)は5月11日の取引時間中に23年3月期連結業績を発表した。鉄鋼や鉄鋼原料を中心とする市況上昇効果が牽引して大幅増収増益だった。そして配当を増額した。24年3月期は鋼材取扱量減少や販管費増加などで減益・減配予想としている。ただし保守的な印象が強く、会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は24年3月期減益・減配予想を嫌気する動きとなったが、指標面の割安感も評価材料であり、下値限定的だろう。

■23年3月期大幅増収増益、24年3月期減益予想だが保守的

23年3月期の連結業績は売上高が22年3月期比18.3%増の5848億56百万円、営業利益が33.9%増の134億59百万円、経常利益が30.2%増の126億68百万円、親会社株主帰属当期純利益が28.9%増の91億96百万円だった。配当は5月11日付で期末15円上方修正して、22年3月期比70園増配の315円(第2四半期末150円、期末165円)とした。配当性向は30.3%となる。

鉄鋼や鉄鋼原料を中心とする市況上昇効果が牽引して大幅増収増益だった。そして2期連続で経常利益過去最高を更新した。営業外では為替差損益が悪化(22年3月期は差益2億33百万円、23年3月期は差損7億47百万円)し、売掛債権譲渡損が1億80百万円増加したが、一方で持分法投資利益が2億01百万円増加、受取配当金が2億27百万円増加し、デリバティブ評価損益が改善(22年3月期は評価損2億75百万円、23年3月期は評価益31百万円)した。また貸倒引当金繰入額が7億45百万円減少した。特別利益では22年3月期に計上した負ののれん発生益1億83百万円、および債務免除益7億29百万円が剥落したが、一方で投資有価証券売却益が4億08百万円増加し、固定資産売却益4億24百万円を計上した。

セグメント利益(経常利益)を見ると、鉄鋼は24.4%増の51億40百万円だった。半導体不足の影響を受けた自動車向けの取扱量が減少したが、鋼材価格上昇効果で大幅増益だった。鉄鋼原料は108.5%増の14億98百万円だった。神戸製鋼所向けの主原料や冷鉄源の取扱量が増加し、原料価格上昇効果も寄与して大幅増益だった。非鉄金属は11.8%減の26億75百万円だった。自動車・半導体向けアルミ板条や非鉄原料の取扱量増加で増収だが、自動車端子向け銅板条や空調向け銅管の取扱量減少で減益だった。機械・情報は37.1%増の21億70百万円だった。国内外での建設機械部品の好調などで大幅増益だった。溶材は148.0%増の8億04百万円だった。国内の造船・建築向けや海外の造船向けが堅調に推移し、溶接材料価格上昇も寄与して大幅増益だった。その他(不動産賃貸事業等)は3億78百万円(22年3月期は65百万円の損失)だった。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1409億39百万円で経常利益が40億09百万円、第2四半期は売上高が1376億79百万円で経常利益が23億78百万円、第3四半期は売上高が1562億16百万円で経常利益が32億89百万円、第4四半期は売上高が1500億22百万円で経常利益が29億92百万円だった。

24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比11.5%増の6520億円、営業利益が19.8%減の108億円、経常利益が21.1%減の100億円、親会社株主帰属当期純利益が22.8%減の71億円としている。配当予想は23年3月期比70円減配の245円(第2四半期末120円、期末125円)としている。予想配当性向は30.4%となる。

鋼材等の市況は23年3月期下期並みの水準が続くと想定するが、神戸製鋼所の厚板ミル改修に伴う鋼材取扱量減少や半導体市場の需要低迷を見込み、営業活動の活発化に伴う販管費増加などで減益・減配予想としている。

セグメント別経常利益計画は、鉄鋼が厚板ミル改修による取扱量減少で14.4%減の44億円、鉄鋼原料が0.1%増の15億円、非鉄金属が国内子会社の減益などで17.8%減の22億円、機械・情報が国内子会社の取扱量減少で40.1%減の13億円、熔材が溶接材料の取扱量減少で25.4%減の6億円、その他が4億円減少の0億円としている。

24年3月期は鋼材取扱量減少や販管費増加などで減益・減配予想としているが、保守的な印象が強く会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は下値限定的

株価は24年3月期減益・減配予想を嫌気する動きとなったが、指標面の割安感も評価材料であり、下値限定的だろう。5月11日の終値は5440円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS806円00銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の245円で算出)は約4.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS8235円14銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約482億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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