【小倉正男の経済コラム】DXとは?社長の危機意識がDXの成功、失敗の分岐点

■DXのゴールとは?

 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がAI、ICTなどデジタル技術を使ってビジネスモデルを変革する、あるいは業務改善などを進捗させることを意味している。DX導入を機に染みついた企業体質をリセットし、市場競争でサバイバル(生き残り)を果たすのが最終ゴールとなる。

 どちらかといえば旧い体質とみられるある企業が、「SDGs」ということなのか、またはDXを進めるということか、社内に突然「ペーパーレス」を宣言した。以前から親しくさせていただいている役員からその話を聞いたときには驚いたものだ。「(時代は)そこまで来ているのか」と思ったわけである。

 その後、その企業の中堅社員に「ペーパーレス」の状況を聞いたら、社内の回覧は復活して残っているが、図面などのDXは行われているということだった。社内回覧にほとんど読まないでサインしたり、判子を押したりと、これも業務のうちというか、そんな以前を思い出した次第だ。しかし、社内回覧をDXできない現象は、企業も「生活習慣」はなかなか変えられないという事実を示している。

■中堅・中小企業向け「CIOサービス」開始

 米国では、CIO(チーフインフォメーションオフィサー)、あるいはIO(インフォメ-ションオフィサー)といった職務が20~30年前から確立している。CIOとは、ICT(情報通信技術)を用いた経営戦略の推進、経営課題の克服などの担当役員、いわばDXの責任者のことである。

 日本でCIOは一部大企業には浸透しているが、大半の企業ではまだほとんど意識されていない。特に中堅・中小企業にそうした職務を担う人材がいないといわれている。

 「CIOは企業経営とICTをつなぐ役割。経営をしっかり理解して、しかもDXも深く理解している必要がある。だが、中堅・中小企業では、せいぜいCIOは他の業務と兼業している形態が一般的だ。いわば片手間に行われてきている。システムの導入も行き当たりばったりで、導入すること自体が目的化したりしているケースもみられる」

 ジャパンマネジメントシステムズ(JMS)の前一樹社長は、そう指摘している。2015年からICTアドバイザーの業務に参入し、中堅・中小企業向けに「CIOサービス」を行っている。

 気になったので「アドバイザーとコンサルタントとはどう違うのか」と質問してみた。前一樹社長は、「ICTコンサルタントを名乗らなかったのは、コンサルタントの世間一般の評判が悪かったことがひとつ。顧客企業の役員や社員になるわけではないが、その企業の一員になったつもりでCIOサービスを行うため」としている。

■社長に危機意識がないとDXのゴールが曖昧になる

 「CIOサービス」はどのようにビジネスを拡大しているのか。前一樹社長は、「ツテで業務を依頼されることが多い」、と。確かに「ツテ」も使えるなら重要な企業資産であり、有力な経営ツールにほかならない。

 閑話休題。このところDXが経営課題として論じられることが多いが、その成功、失敗を分けるものは一体何なのか。いまは「DXブーム」といえるわけだが、その教訓といえるものがあるとすれば何か。

 前一樹社長は、「企業の経営者がICTシステムのセキュリティといった問題、あるいは売り上げ・利益の企業成長などの問題、自社の現状について強い危機意識を持っていることがDX導入の成功、失敗を分けている」と答えている。各社のDX導入動向を見てきた現場経験に裏打ちされたものであり、シンプルだが無視できない指摘である。

 経営者が自社に対して強い危機意識がないと、「CIOサービス」=ICTアドバイザーの業務が成立しない。自社の現状に危機意識が希薄だとすれば、DXを導入するにしても、何をしたいのか、どうしたいのか、DXのゴールにぶれが生じる。DX投資を行う、それ自体が目的化する可能性が膨らむことになる。「DX投資を行った、やれやれ経営課題が完了した」ということで、企業体質のほうは以前と何も変わらないという事態も起こるわけである。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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