セメントプラントから年間100万トンのCO2を回収するプロジェクト、三菱重工と世界大手セメントメーカーが実証試験に着手

■小型CO2回収装置「CO2MPACT」を活用し、ハイデルベルク・マテリアルズ社と協働

 三菱重工業<7011>(東証プライム)は17日、世界大手セメントメーカーであるハイデルベルク・マテリアルズ社(Heidelberg Materials)がカナダ・アルバータ州エドモントンに有する既設セメントプラント向けに小型CO2回収装置「CO2MPACT(コンパクト)」を納入し、両社によるCO2MPACTを活用したCO2回収実証試験が本格始動したと発表。同実証試験の開始に当たり、アルバータ州政府のレベッカ・シュルツ環境保護大臣立ち合いの下、同プラントで8月15日に記念セレモニーが開かれた。

 この実証試験では、同社が関西電力<9503>(東証プライム)と共同開発した独自のCO2回収技術である「Advanced KM CDR Process」と吸収液「KS-21」を用いて、異なる排ガス性状や多岐にわたるプラント運転モードに対する各種検証を行う。また、同社独自の遠隔監視システムを活用した遠隔支援サービスも提供する。ハイデルベルク・マテリアルズ社とカナダ政府、アルバータ州のパートナーシップにより、将来的には、セメント産業分野にとって世界初となるフルスケールのCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)ソリューションにつなげる狙いである。具体的には、エドモントンのセメントプラント設備から年間100万トン以上のCO2を回収、地下貯留するプロジェクトが計画されている。

 ハイデルベルク・マテリアルズ社は、今回の実証試験を通じて、セメント産業分野の脱炭素化をリードするという同社のビジョンをより強固なものとする。同社は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑えるという2015年パリ協定の世界的な目標達成に向け積極的な取り組みを進めており、2019年にはセメント産業分野の企業としては初めて、SBTi(Science Based Targets Initiative※注)によるCO2排出削減目標の認定を受けている。

 三菱重工グループは2040年のカーボンニュートラル達成に向け、エネルギー供給側の脱炭素化に戦略的に取り組んでおり、多種多様なCO2排出源と貯留・利活用をつなげるCO2エコシステム構築はその柱の1つである。同社グループは独自のCO2回収技術を活用し、CCUS事業を強力に推進するとともに、ソリューションプロバイダーとして温室効果ガス排出削減に地球規模で貢献し、環境保護に寄与するソリューションの開発をさらに進めていく。

 SBTiは、2015年に世界自然保護基金(WWF)、気候変動関連NGOのCDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトにより設立された共同イニシアティブである。気候変動の防止とネットゼロ経済における企業の競争力強化を目的とした温室効果ガスの削減目標を立てるためのガイダンスに基づき、科学的知見と整合した目標(SBT:Science Based Targets)に適合していると認められる企業に対してSBT認定を与えている。SBTiは企業がSBTを設定することが当然となり、経済と環境が調和する社会を創り上げることを目標としている。

(※注)SBTiは、2015年に世界自然保護基金(WWF)、気候変動関連NGOのCDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトにより設立された共同イニシアティブ。気候変動の防止とネットゼロ経済における企業の競争力強化を目的とした温室効果ガスの削減目標を立てるためのガイダンスに基づき、科学的知見と整合した目標(SBT:Science Based Targets)に適合していると認められる企業に対してSBT認定を与えている。SBTiは企業がSBTを設定することが当然となり、経済と環境が調和する社会を創り上げることを目標としている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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