【小倉正男の経済コラム】奈良県宇陀市 都内有名シェフ店でオーガニックフェア

■「宇陀市、どこや?」

 奈良県宇陀市、「平成の大合併」で生まれた市である。大宇陀、菟田野、榛原の3町、室生村が元々の地名だ。

 宇陀市といっても、首都圏などでは馴染みは薄い。首都圏などの人たちにしたら、「女人高野」、「五重塔」で知られる室生寺のあるところだ、といえば少しは身近になるかもしれない。

 金剛一智市長は、宇陀市についてこう話している。
 「どこや?奈良市の南、大阪に60分、京都に90分の地。人口は2万7436人、面積は247平方キロメートルで山の上にある。大和高原の地で夏は涼しい。日本書紀に菟田野に薬猟す、という記述があり、資料で確認できる薬草狩りの発祥の地です」

 推古天皇即位の年(611年)、「薬狩り」を菟田野で行ったと記録されている。飛鳥時代、菖蒲、ヨモギなど薬草を採りに行くという行事・習慣があった。宇陀市のある大和高原は薬草を採るには格好の地だったということになる。

■「オーガニックビレッジ宣言」、日本初にこだわった

 宇陀市は、22年11月27日に日本初の「オーガニックビレッジ宣言」を行った。この時、世間から「宇陀市?どこの市だ」と初めてささやかだが脚光を浴びた。

 金剛市長の狙いは半ば当ったようなものである。
 「オーガニックビレッジ宣言は、日本最初というものにこだわった。オーガニック野菜、農薬などを使わない有機農業は、安全安心でおいしい野菜をつくるが儲からない。担い手も少ないといわれている。それでも宇陀市が日本で最初にオーガニック野菜の都市にしたいと宣言した。そのインパクトは想像以上だった」

 宇陀市が全国に先駆けて「オーガニックビレッジ宣言」をしたのは、古くから有機農業が盛んだったことがある。しかし、それでもやるなら、日本最初にやるというのは確かに“見識”といえるかもしれない。迷っていたら、いつになっても踏み切れないものだ。

 ところで奈良県は、「大和牛」というブランド牛が知られている。だが、そのうち宇陀市が産地の「大和榛原牛」が最高ランクといわれている。「大和榛原牛」は生産量が稀少であり、極上牛といわれている。当然、金剛市長が推奨・提案するのは、「大和榛原牛」と有機野菜の付け合わせということになる。

■都内有名シェフ店で「榛原牛」と有機野菜の料理フェア

 宇陀市は、「オーガニックビレッジ宣言」1周年を記念して、この11月から「食の未来プロジェクト」を始動させている。

 「食の未来プロジェクト」のなかで最も注目を集めているのが、「宇陀市オーガニックフェア」である。東京都内の有名オーナーシェフのレストラン6店舗で宇陀市の食材を使った料理を提供するというフェアだ。フェアは24年1月15日から3月31日まで行われる。

 6店舗は、「リストランテ アクアパッツア」(港区・日高良実)、「新宿割烹 中嶋」(新宿区・中嶋貞治)、「割烹 みやなが」(品川区・宮永賢一)、「メゾン・ド・スリジェ」(渋谷区・浅水屋厳)、「ル・ジャポン」(目黒区・中田耕一郎)、「ビストロ Q」(港区・山下九)である。これらの6店舗は有名シェフが腕を振るい宇陀市の「大和榛原牛」とオーガニック野菜を提供するというプロジェクトになっている。

 地方自治体も差別化された特徴がないと生き残れない。「オーガニックビレッジ宣言」「オーガニックフェア」と、宇陀市は一貫した戦略を推し進めている。これは他の自治体ではなかなか見られない取り組みといえそうだ。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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