【どう見るこの相場】金利低下で金が史上最高値、為替も大揺れ、師走相場の新たなテーマは?

■米国金利の動向に振り回される師走相場、掉尾の一振はあるか?

 師走相場も残り3週間、「掉尾の一振」か「掉尾の三振」か悩ましい。師走相場のスタートとともに株価が下に上に、さらに下に下にと揺さぶられると、またまた「買いでやられ、売りで担がれ」と心配になり、強気でも弱気でも大曲りに曲がるのではないかと足が震えてしまう。諸悪の根源は、米国の長期金利である。長期金利が上げ下げするたびに、あろうことか太平洋を飛び越して日経平均株価を直撃し日々、上に下に500円幅でぐらつかせ、為替も円高、円安と右往左往させる。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が、週明けの12日、13日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)を通過すれば長期金利の方向感がみえてくるかといえばそうともいえないらしい。FRB高官の発言は、以前は政策金利引き上げの打ち止め期待を牽制するのが大半となっていたのに、ここにきては早期の政策金利引き下げ期待を牽制するウエートが高まっているからだ。金融政策は、インフレ鈍化を示す経済データ次第としているFRBが、年内最後のFOMCで市場の期待通りに利下げを示唆してくれるのか、まだまだ紆余曲折が残るとみるのが無難のようなのである。

 しかも市場コンセンサスは、FOMC通過後の悪抜け相場のブームを予想しているかといえば、そうでもないフシがある。熱すぎも冷たすぎもない「適温相場」、過熱でも閑散でもない「ゴルディロックス相場」の見方が一般的になっているのである。インフレ鈍化で景気や企業業績が減速していくなかで失速はせず、緩やかに経済成長に転じ長期金利の低位安定が続く経済環境下でのいわば凪相場である。

■ゲームチェンジの兆し?金利低下で金・高配当株が輝く年末・年始相場

 すでに米国の10年物国債利回りはこれを裏打ちし、今年10月19日に一時、16年ぶりに5%台に乗せたが、足元では4.1%まで低下している。前週末8日は、11月の雇用統計の発表を受けて4.22%と上昇したが、まだまだFOMCなどを控えて予断は許さない。この金利低下は、一部でゲームチェンジを誘引している。例えば金先物価格は、高金利下では金利がつかないことがマイナスとなって敬遠されてきたのが、金利低下とともに一時、1トロイオンス=2152.3ドルと史上最高値を更新した。

 また為替も、日米金利差の拡大で今年11月初めに1ドル=151円台まで円安・ドル高となったが、12月7日の米国市場では一時、1ドル=141円台と円買い・ドル売りが加速した。日本銀行の植田和男総裁が、国会で「チャレンジング」とイレギュラー発言をしたことが引き金となったもので、前週末は、1ドル=144円台と落ち着いたが、これもFOMCに続き12月18日、19日に開催予定の日銀の金融政策決定会合次第となりそうである。

 ゲームチェンジがこのまま継続したらどうなるのか?何だかこれが年末・年始相場のテーマになりそうである。となれば「掉尾の一振」狙いの大振りではなく、「掉尾の三振」を回避するためにも「掉尾の適温銘柄」の優先順位が高まることになるはずだ。「適温銘柄」の候補としてとしてチャレンジングを期待したいのは、まず金利低下で比較優位性が高まる高配当利回りランキングの上位株である。さらに金利低下で史上最高値を更新した金先物価格関連株も、ウクライナ・パレスチナの地政学リスク懸念も重なって外せない。仮に年内に「半導体祭り」の再燃などのハイテク株の「掉尾の一振」があってその輪に加われないとしても、「株券を枕に越年」で十分に報われることを祈りたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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