【株式市場特集】株価上昇のカギを握る自己株式取得、新たなバロメーターとして期待

■投資家注目の適正株価発見ツール

 日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新たなバロメーターとして期待されている。上場会社が市場から株式を買い戻すことで、財務指標が改善され、株主への利益還元や需給改善につながる。また、株価が割安であることをアピールし、株価上昇を促進する効果もある。日経平均株価の4万円台乗せに伴い、設定件数や設定金額が増加しており、高値波乱相場の中で昨年来高値まで買い進まれる銘柄も存在する。自己株式取得のデータから適正株価を読み解くことができ、割安水準にある銘柄が投資のチャンスとなり得る。

■有言実行の三菱商事の買いコストは当初予定を上回り業績上方修正・消却・特別配当組も

 自己株式取得の取得総額の大きい銘柄は、まず設定枠が5000億円と断トツの三菱商事<8058>(東証プライム)を筆頭に、1000億円~500億円の銘柄が該当する。設定枠が1000億円のキヤノン<7751>(東証プライム)、野村ホールディングス<8604>(東証プライム)以下、500億円のホンダ<7267>(東証プライム)、ENEOSホールディングス<5020>(東証プライム)、大日本印刷<7912>(東証プライム)、400億円の関西ペイント<4613>(東証プライム)、330億円の京成電鉄<9009>(東証プライム)と続く。このうち三菱商事は、取得期間が約7カ月と短期決戦型の通りにまさに有言実行で、今年2月7日から2月29日までの取得期間に約525億円を買い付け、この買いコストは3029円と当初予定の買いコストを上回った。このほか途中経過を発表した銘柄も当初の買いコストを上回っている。また野村HDが中間配当を増配し、ホンダは業績の再上方修正と自己株式消却の同時発表で、京成電鉄は、オリエンタルランド<4661>(東証プライム)の保有株の一部売却で今期純利益を上方修正、特別配当を実施予定である。

 次が取得総額が200億円から100億円の銘柄で、200億円のヤマハ発動機<7272>(東証プライム)以下、ニッパツ<5991>(東証プライム)、双日<2768>(東証プライム)と続き、住友重機械工業<6302>(東証プライム)、NIPPON EXPRESSホールディングス<9147>(東証プライム)が100億円となる。

■別格のクルーズを始め高取得比率の低PER・PBR株や地銀株も関連

 発行済み株式総数に対する取得比率で別格の高比率となったのが、クルーズ<2138>(東証スタンダード)である。取得株式数は、364万株(発行済み株式総数の32.7%)、取得総額は20億円となっている。この自己株式取得と同時に未定としていた今3月期通期予想業績も発表し、純利益は、関係会社株式売却益の寄与もあって10億9700万円(前期比4.0倍)と高変化し、配当は無配継続ながらPERはわずか8.2倍の評価にしかならない。このほか取得株式比率が3%~4%と高い銘柄は、発表順にマルゼン<5982>(東証スタンダード)、モバイルファクトリー<3912>(東証スタンダード)、オークマ<6103>(東証プライム)、丸山製作所<6316>(東証スタンダード)、東京都競馬<9672>(東証プライム)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>(東証プライム)、ブリッジインターナショナル<7039>(東証グロース)と続く。

 きょう18日から開催の日銀の金融政策決定会合関連の地銀株でも、自己株式取得行が目立った。すでに3行が、取得期間の今月3月末を前に取得終了を発表しているが、発表の時系列的に上げると滋賀銀行<8366>(東証プライム)、第四北越フィナンシャルグループ<7327>(東証プライム)、しずおかフィナンシャルグループ<5831>(東証プライム)、阿波銀行<8388>(東証プライム)と続き、取得終了の3行は、いずれも自己株式取得が上場来高値・昨年来高値更新の起爆剤となった。それでも低PER・PBR、高配当利回り水準にあり、金融政策正常化により金利復活期待が高まれば業績上方修正、増配なども発表しているだけに見直される手掛かり材料となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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