【どう見るこの相場】「過度の警戒感」と「軽度の安心感」との間で消費税減税関連株に4月の逆行高相場再現の兆し

■トランプ大統領「米国株は絶好の買い時」英国との関税合意後に発言

 米国のトランプ大統領が、またまた米国株は「今が絶好の買い時」だとアドバイスしたらしい。英国との関税交渉で合意し「トランプ・ディール(取引)」の成果第1号となったあとの記者会見での発言と伝えられている。「この国はまっすぐ上昇するロケットにようになる」との大胆予測付きのようである。同大統領は、兼ねてから米国株安、債券安、ドル安のトリプル安に陥ったマーケットをこわがり過ぎと不満タラタラで、相互関税発動の90日間の一時停止や今回の英国との合意形成でトリプル高方向にトレンド転換しつつあるのをみれば投資アドバイスに力が入るのも当然である。呼び掛けられたマーケットの方も、まだ中国との関税交渉など不透明部分は残るものの、トランプ関税によるインフレ再燃、景気後退への「過度の警戒感」が、「軽度の安心感」に変わったようではある。

■株式市場と政治の共鳴は今も昔も

 一国のリーダーが、証券セールのように株買いを進めるのは今回のトランプ大統領が初めてではない。思い出すのはいまは亡き安倍晋三元首相が、2013年9月の訪米中にニューヨーク証券取引所で行ったスピーチである。「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは買い)」とトップ・セールスし、海外投資家の呼び込みを成功させその後の「アベノミクス相場」の起爆剤とした。前年2012年12月の衆議院選挙で政権与党の民主党が大敗し、12月26日に3年3カ月ぶりに自民・公明連立の第2次安倍政権が、成立したあとである。それ以前の衆議院と参議院の多数派が異なる「ねじれ国会」時代には、内閣支持率が10%上下に変化すると日経平均株価も1000円上下するとされていたが、政権の命運が、人心や投資家心理と共振して株価の高安にリンクすることは、昔も今も変わらないのかもしれない。

■選挙シーズン到来、経済・物価対策が争点に浮上

 足元の株価も、「過度の警戒感」の「軽度の安心感」へのトレンド転換がいつまで続くかが問題となる。この最大のポイントは、もちろん「トランプ関税」の動向である。トランプ政権と中国、日本、EU(欧州連合)などとの関税交渉の落としどころはまだ予断を許さない。これに加えて国内政局も、6月22日の会期末を約1カ月後に控え何やらあわただしくなってきそうだ。6月22日には東京都議会議員選挙の投開票日、7月22日には参議院議員選挙の投開票日がそれぞれ予定され、この間の7月9日には一時発動を停止された米国の相互関税の期限を迎える。トランプ関税に対応する経済対策、最高値更新が止まらないコメ価格を含む物価対策などが、選挙の争点に浮上してくることになる。

■消費税減税関連株に脚光

 ということで今週の当コラムでは、与野党が揃って政策対応を急ぐ食料品の消費税減税の関連株に注目することにした。前週末にこの前兆のシンボル株ともいうべき年初来高値更新銘柄が、2銘柄も出たからである。木徳神糧<2700>(東証スタンダード)と三菱食品<7451>(東証スタンダード・監理)である。木徳神糧は、コメ価格の上昇で今12月期業績を上方修正したのに続き株式分割(基準日6月30日、1株を5株に分割)を発表し、ストップ高した。一方、三菱食品は、親会社の三菱商事<8058>(東証プライム)が、完全子会社化するため株式公開買い付け(TOB)を発表し、TOB価格6340円にサヤ寄せする動きを強めた。折からNTT<9432>(東証プライム)も、NTTデータグループ<9613>(東証プライム・監理)をTOBしており、親子上場解消問題への問題提議もしていたのである。

 実はこの食料品の消費税減税関連株は、トランプ大統領の相互関税発動でマーケットがクラッシュした今年4月に円高メリット株や日銀の金利先送り観測を手掛かりにした不動産株とともに逆行高した銘柄である。それがトランプ関税への「過度の警戒感」が、「軽度の安心感」に変わった5月相場では、高値調整を続けていたのである。終盤国会の消費税減税論議の方向性を見極め再度のアタックも一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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