【どう見るこの相場】「取得倍増計画」の歴史は繰り返すのか?自分流の新「三種の神器」探しで検証実験投資も一興

どう見るこの相場

■「歴史は繰り返す」のか「歴史は繰り返さない」のか?

 「歴史は繰り返す」のか「歴史は繰り返さない」のか、はなはだ興味深い。今年10月4日に誕生した岸田文雄新内閣と1960年に発足した池田勇人内閣との関係性についてである。今回の安倍・菅内閣から岸田内閣への首相交代は、あの「安保反対」のデモが幾重にも国会議事堂を取り巻いた安保騒動直後に退陣した岸伸介内閣に変わって池田勇人内閣が発足した首相交代といくつかの類似点があるからだ。岸田新内閣の今後が、池田内閣のその後と軌を一つにするのか、まるで歴史の実証実験に立ち会わされているような感覚さえする。

 まずこの2つの首相交代の類似点は、属人的なものである。岸伸介氏は、安倍晋三元首相の祖父に当たる。対して岸田首相が領袖となっている岸田派は、池田勇人氏が率いていた保守本流といわれる宏池会を源流としている。政治姿勢も類似点がある。岸首相は、安保反対のデモを鎮圧するために自衛隊の治安出動も検討したといわれるが、池田首相は、「寛容と忍耐」をスローガンとした。同様に安倍元首相は、官邸主導の強権政治、忖度政治を推し進めたが、岸田首相は、「人の話を聞く、説明する」政治を目指しており、実現できるかどうかは未知数ながらも対照的である。

 また政策自体も類似点が多い。岸首相は、日米安保条約の改定の安全保障政策に重きを置いたが、池田首相は「所得倍増計画」をスローガンに「経済の池田」をアピールした。同じく安倍元首相は、3本の矢の「アベノミクス」による成長戦略を推し進め格差が拡大するK字型の景気回復の結果となったが、岸田首相は、「成長と分配の好循環」により中間層を厚くする「新しい資本主義」を目指している。

 このなかでも、岸田首相の「成長と分配の好循環」の「新しい資本主義」が、池田内閣の「所得倍増計画」の再現となるかは、株式市場にとっても最注目の類似点になるはずだ。所得倍増計画は、経済を年率9%で成長させ10年後に国民取得の倍増を目指したが、実際は10年も掛からず1967年に目標を達成した。折からの設備投資ブーム、湾岸コンビナート建設による重工業化、1964年開催の前回の東京オリンピック、高速道路の建設、東海道新幹線の開業などが大きく寄与した。

 消費ブームも起こっており、「三種の神器」といわれたカラーテレビ、クーラー、自動車の「3C」に60年代後半には電子レンジ(cooker)、別荘(cottage)、セントラルヒーティング(central heating)の「新3C」も加わった。

 この歴史を繰り返すにはもちろん、岸田自民党が、10月31日投開票の衆議院選挙で過半数を確保して本格政権の足掛かりとすることやコロナ禍の第6波を抑え込むことが大前提となる。そのうえで岸田首相が、「私はウソは申しません」と言い切り流行語とした池田元首相ほどのインパクトやカリスマ性を発揮できるか、池田内閣の「取得倍増計画」並みに「成長と分配の好循環」政策に期待感と説得力を持たせることが可能かなどがカギになるだろう。

 所得分配率が高まると確信すれば、個人消費は大きく動く。それでなくても、コロナ禍で自粛した個人の消費待機資金は、20兆円とも21兆円とも推計されている。その待機資金を刺激する喚起策が、「GoToキャンペーン」の再開なのか定額給付金の再交付なのかはまだ不明だが、リベンジ消費が強まれば手っ取り早く消費ブームが再来しないとも限らず、新しい「三種の神器」の誕生につながる可能性もある。

 それが「コト消費」か、それとも衣食住全般にわたる高機能商品の「モノ消費」なのかもまだ不確かで、すでに動意付いたアフター・コロナ株の旅行関連株や電鉄株などが、これをどの程度まで織り込んだかも定量不可だろう。自分流に新「三種の神器」の商品、サービス、セクターをリサーチして先取り、歴史再現の検証実験投資に参加することも一興となりそうだ。当特集でも、破天荒で申訳ないがセレクトしいる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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