京写は上値試す展開、大幅増益と連続増配予想、国内価格適正化とインドネシア新ラインが牽引
- 2025/7/4 07:40
- アナリスト銘柄分析

京写<6837>(東証スタンダード)はプリント配線板の大手メーカーである。成長に向けて6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用したグローバルニッチトップメーカーを目指している。26年3月期は大幅増益・連続増配予想としている。国内において販売価格適正化や生産性向上を推進するほか、インドネシア拠点に新規生産ラインを導入して収益拡大を図る。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。低PERや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお7月31日に26年3月期第1四半期決算発表を予定している。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。販売先は自動車関連、家電関連、事務機関連など、幅広い顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。
プリント配線板は独自のスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして高温工程で繰り返し使用可能なノンシリコーンタイプ粘着キャリア、電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。
プリント配線板の生産は国内、および中国、インドネシア、ベトナムに展開し、片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。メキシコ子会社では実装搬送治具を製造している。24年12月にはインド駐在員事務所を開設(25年5月予定)すると発表した。将来インド市場でのプリント配線板の事業拡大を目指す。
ベトナム子会社は両面配線板のグローバル生産拠点として21年1月に販売開始、23年8月に第2生産ラインが稼働開始して生産能力が2倍に拡大した。自動車関連向けを主力としている。なおベトナム子会社には自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が出資している。24年3月には同社を割当先とする増資を行い、増資後の出資比率は同社94.12%、エヌビーシー5.88%となった。
21年5月にはメイコー<6787>と資本業務提携した。ともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なるため棲み分けができている。中国やベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。
25年4月には、タイのFirst Quality(中国の四会富仕電子科技股分有限公司のタイにおける製造子会社、多層プリント配線板製造)と戦略的業務提携した。それぞれが得意とするプリント配線板分野で生産・販売の相互協力を行う。
■自動車関連が主力
25年3月期のセグメント別業績(セグメント間取引消去前)は、日本の売上高が101億55百万円で営業利益が▲2億18百万円、中国の売上高が143億59百万円で営業利益が11億79百万円、インドネシアの売上高が28億30百万円で営業利益が6百万円、メキシコの売上高が1億58百万円で営業利益が▲7百万円、ベトナムの売上高が42億97百万円で営業利益が2億79百万円、売上高の消去が▲55億71百万円、営業利益の消去が37百万円だった。
製品別売上高は両面基板(多層板、銀スルーホール基板含む)が108億70百万円、片面基板が104億43百万円、金属基板が14億80百万円、実装関連が26億44百万円、その他が7億90百万円だった。
用途別の売上高は、自動車関連(ライト、電装品、カーオーディオ等)が114億81百万円、家電製品(LED照明、エアコン、炊飯器、冷蔵庫等)が48億76百万円、事務機(複写機、プリンター等)が35億99百万円、電子部品関連(電源、モーター、センサー等)が16億57百万円、電気機器(スマートメーター、計測機器、電動工具等)が8億19百万円、その他(映像機器、音響機器、アミューズメント等)が11億53百万円、実装関連(実装、治具等)が26億44百万円だった。自動車関連が主力である。実装関連の用途別構成比は産業機器が52.3%%、航空機が13.6%、自動車が9.5%、通信機器が5.0%、電子部品が3.1%、その他が16.5%だった。
■独自の印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカー目指す
中期経営計画の目標値には26年3月期売上高270億円、営業利益16億円、営業利益率5.9%、ROE8%を掲げている。6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。
グローバル生産・販売戦略では最適な供給網の再構築、車載・再生エネルギー分野向け両面・金属基板事業の拡大、片面シェア拡大による業界最大の利益確保、基板・実装・治具の販売シナジー最大化など、企業間連携戦略では顧客・仕入先との連携、同業他社との相互補完関係構築など、効率化戦略では自働化・IT化による生産効率向上、DX活用による業務効率化、トヨタ生産方式の水平展開など、技術戦略では市場ニーズに基づく開発資源の集中、超厚銅基板の技術確立、付加価値のある印刷技術の追求、生産技術を活用した新用途・新工法の開発など、財務戦略では持続的成長に向けた集中と選択による投資、自己資本の強化、持続的・積極的な株主還元など、人財戦略では社員満足度の向上、多様な人材能力の発揮、マネジメント人材の育成、信頼と安全の体制づくりなどを推進している。
■26年3月期は大幅増益・連続増配予想
26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比2.9%増の270億円、営業利益が25.3%増の16億円、経常利益が20.9%増の12億円、親会社株主帰属当期純利益が30.2%増の8億円としている。配当予想については前期比3円増配の14円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は25.4%となる。
国内において販売価格適正化や生産性向上を推進するほか、中国リスクを背景にASEANからの基板調達を求める需要の増加に対応するため、インドネシア拠点に新規生産ライン(自動化設備)を導入して収益拡大を図る。なお米国関税政策の影響については、現時点では合理的に見積もることが困難なため織り込んでいない。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は順調に水準を切り上げて戻り高値圏だ。低PERや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。7月3日の終値は395円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS55円16銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS676円53銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約58億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)