
■短期はGPT−5が話題も、中期はGPT−ossが主役に
OpenAIは2025年8月5日、オープンソースの大規模言語モデル「GPT−oss」を発表した。従来のGPT−4やGPT−5などがクローズド型でAPIやクラウド経由に依存していたのに対し、同モデルは重み(学習済み知識を数値化した「パラメータ集合」)を含めて全面公開され、Apache2.0ライセンス下で誰でも自由に利用・改変・商用展開できる点が最大の特徴である。発表と同時に1200億規模の「gpt−oss−120b」と200億規模の「同20b」が公開され、Mixture of Expertsアーキテクチャを採用し、128Kトークンの長文処理や高効率・高性能推論を実現する。クラウド不要でローカル運用が可能となり、企業や自治体はセキュリティ・プライバシー要件を満たした自前運用に活用できる。
同発表は「AIのOS化」とも評され、Linuxのような標準基盤として定着する可能性を秘める。企業は独自改造やタスク特化型の再学習を容易に行え、金融・医療・行政など厳格なデータ管理が求められる分野での導入が進むと見込まれる。さらに、製造・物流業界では工場エッジでの作業指示や制御支援、ソフトウエア産業では内製コード基盤への最適化、メディア・広告ではブランドトーンを組み込んだ生成物の開発など、多様な応用が加速するとの観測が強い。
一方で、この公開はAPI課金依存モデルに依存する既存ビジネス構造に大きな影響を与える。自社展開やローカル推論が常態化すれば、GoogleやMetaを含む競合ベンダーは価格や公開範囲を見直さざるを得なくなる。OpenAI自身も「民主化」を掲げながら基盤シェア拡大を狙い、クローズド型上位モデルへのアップグレード経路を残す二面性を持つと分析されている。実際、GPT−5は高度な思考力やコーディング性能を強調して8月に発表され、MS製品群への統合も進むが、配備自由度やコスト削減においては「oss」が産業変革の主導役になる可能性が高い。
ただし、ガバナンス不備や評価体制の欠如はリスクを伴い、幻覚や情報漏洩が利用者責任に帰結する懸念も残る。また、マルチモーダル連携や総合性能では依然クローズド上位モデルに分があるため、実務ではハイブリッド構成が現実的とされる。今後は追加サイズの公開、推論最適化手法の登場、LlamaやDeepSeek系モデルとの性能競争、主要クラウドの「持ち込み重み」サービスの成熟、さらには各国規制当局による運用ガイドラインの整備が注視点となる。短期的な注目はGPT−5に集まるが、中期的な産業インパクトではGPT−ossが主導するとの見方が強い。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)