【量子コンピューター】米国が国家支援を本格化、富士通・NEC・日立など日本勢は商用化フェーズに

■トランプ政権、量子企業への出資検討、中国に対抗

 米トランプ政権は、量子コンピューター関連企業への国家支援を検討していると報じられた。IonQ(NYSE:IONQ)、Rigetti Computing(NASDAQ:RGTI)や、D-Wave Quantum(NYSE:QBTS)など複数の米企業に対し、1社あたり1,000万ドル超の出資を通じた株式取得を協議しているとみられる。背景には国家安全保障や中国との技術覇権競争があり、戦略技術としての量子分野強化を意図した政策と位置づけられる。報道を受け、米市場では関連銘柄が急騰したが、交渉の詳細や正式な合意はなお不透明である。技術主導回帰を掲げる米国の産業政策再構築の象徴的動きとして注目されている。

■経産省「量子未来産業戦略」で国内実装を加速

 日本でも高市早苗総理が「経済安全保障の中核技術」として量子分野を重視している。AI、半導体、サイバー分野と並び、産学官連携による社会実装を推進。経済産業省は「量子未来産業創出戦略」に基づき、50億円規模の資金支援枠を設けて国内企業の研究・開発を後押ししている。量子技術は金融、医薬、エネルギー、物流など幅広い分野に波及効果を持ち、国策テーマとしての重要度が一段と高まっている。

■Google、65量子ビットで1万3000倍の演算性能

 量子コンピューターは、量子力学の重ね合わせと量子もつれを活用して並列計算を行う新型計算機である。従来のビット計算では0か1の二値だが、量子ビット(キュービット)は複数状態を同時に保持できる。Googleが開発した65キュービット量子プロセッサは、世界最速級スーパーコンピューター「Frontier」が3.2年を要する物理シミュレーションを2時間で完了したとされ、理論上約1万3,000倍の演算性能を示した。今後はエラー率の低減や誤り訂正、量子複雑度の向上が商用化の鍵となる。

■富士通・NEC・日立が主導、国産量子基盤の確立へ

 国内では富士通<6702>(東証プライム)、NEC<6701>(東証プライム)、日立製作所<6501>(東証プライム)の3社が中核を担う。富士通は理化学研究所と共同で256量子ビット機を開発し、2026年には1,000量子ビット実機の稼働を計画。NECは量子通信や量子鍵配送(QKD)で強みを発揮し、日立は中性原子方式による高性能機の開発を進めている。NTT<9432>(東証プライム)は「IOWN構想」の一環として光量子ネットワーク実証を推進中であり、通信基盤分野での役割が大きい。

 また、QDレーザ<6613>(東証グロース)は量子ドット光源の研究を進め、フィックスターズ<3687>(東証プライム)はD-Waveとの提携を通じて量子アニーリング応用を拡大。KDDI<9433>(東証プライム)や住友商事<8053>(東証プライム)、浜松ホトニクス<6965>(東証プライム)なども量子通信・装置・社会実装の領域で参入を強化している。量子技術は2025年以降、国策・企業・市場が一体で成長を図る戦略産業として位置づけられ、日本の次世代技術競争力を左右する中核領域となりつつある。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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