富士フイルムと国立がん研究センター、アンチセンス核酸×環状ペプチドで新がん治療技術の共同研究

ビジネス 万年筆 メモ

■薬剤耐性克服へ、ペプチド核酸コンジュゲート化合物の効果と送達性能を評価

 富士フイルムホールディングス<4901>(東証プライム)傘下の富士フイルムは11月7日、国立がん研究センターと新たながん治療技術の開発を目的とした共同研究契約を締結したと発表した。富士フイルムが独自に創製した非天然アミノ酸を含む特殊環状ペプチドと、国立がん研究センター研究所が設計したがん細胞を選択的に自滅させるアンチセンス核酸を組み合わせ、その薬効および標的組織への送達技術の実証を目指す。従来の治療薬では薬剤耐性の発生が課題となっており、RNAを標的とするアンチセンス核酸と、送達能力に優れるペプチド技術の融合は、新たな治療法の開発に向けた重要な一手と位置づけられる。

 同共同研究では、両者の技術を組み合わせた「ペプチド核酸コンジュゲート化合物」を作製し、がん細胞を選択的に死滅させる効果や標的組織への集積性能を評価する。富士フイルムはmRNAディスプレイ技術や分子構造最適化技術を活用し、高い結合性と安定性を持つ環状ペプチドを創出してきた。2025年7月には、同ペプチドと核酸を結合させた化合物において、特定のがん細胞で高い集積性と遺伝子ノックダウン効果を確認しており、今回の研究はその成果を臨床応用へ近づける取り組みとなる。国立がん研究センターは長年のがん特性解析と薬剤耐性克服を目標とする研究実績を持ち、両者の連携により新たな治療モダリティの創出が期待される。

 富士フイルムは医薬品開発の知見と画像・材料技術などを活かし、創薬支援CRO事業も展開している。グループ内の富士フイルム富山化学やFUJIFILM Cellular Dynamicsなどと連携し、iPS細胞評価、リポソーム製剤、ペプチド探索など多岐にわたるソリューションを提供しており、今回の共同研究は同社の創薬支援体制の強化にもつながる。国立がん研究センターは国内外の研究機関と協働し、がん治療の新たな選択肢を創出する役割を担っており、両者の技術融合によって、高精度な標的化と副作用低減を両立する次世代のがん治療技術の実用化が期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■7日間摂取試験でBCAAやタウリン増加、血液健全性を維持  吉野家ホールディングス<9861>(…
  2. ■日本味と匂学会で優秀発表賞を受賞、応用研究に期待  花王<4452>(東証プライム)は9月24日…
  3. ■GHG削減価値をデジタル証書化、荷主に割り当て  商船三井<9104>(東証プライム)は9月19…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  2. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…
  3. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  4. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…
  5. ■全市場のわずか1.4%、希少な高配当利回り銘柄が浮上  株式市場では、高配当利回りを持つ10月決…
  6. ■「高市祭り」への期待と警戒交錯、資金は安定配当株へシフト  10月終盤相場は、「高市祭り」か「高…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る