見切り千両、損切り万両=犬丸正寛の相場格言

■見切り千両、損切り万両

 見切ることには千両の価値があり、損切りすることには、その10倍の万両の価値があるという意味の格言です。株式投資においては、買いよりも売りのほうが難しいと言われますが、特に難しいのが「損切り」なのです。買う前に「損切りラインを決めておき、それを確実に実行する」と自分に言い聞かせていても、実際に買った後に値下がりすると、「きっと戻るはずだ」という根拠のない願望が、人間の心を支配するようになりがちです。

 「悪手が悪手を呼ぶ」という格言もあります。なんとか損失を取り戻そうと焦り、結果的に悪手を連発して、深みにはまってしまうこともあります。こうした悪循環に陥ると、なかなか抜け出すことはできません。

 そして損失が大きくなればなるほど、心理的にも追い込まれて、損切りすることがもっと難しくなるのです。もちろん、待っていれば願望どおりに戻ることもありますが、待っている間は資金効率が悪くなります。重要なのは資金を温存することです。したがって、致命的な損失を受けて手遅れになる前に、損切りを実行することが必要になってくるのです。

 「しまったは仕舞え」という格言もあります。誰にでも失敗はあるものですが、人間というのは、なかなか自分の失敗を認めることができません。しかし失敗に気がついたら、とにかくいったん潔く損切りして、その犠牲を無駄にしないで、次回の最善手を考えるべきでしょう。

 企業経営においては、成長を加速させるために、積極的な投資で事業を拡大させることや、新規事業に進出することは当然の戦略です。ときには、社運を賭けて大型のM&Aを実行することもあります。

 しかし見込み違いは必ずあります。どんなに周到な準備をしていても、思惑どおりに進まないこともあります。時期が悪かったということもあります。こうした場合に重要なのは、その事業を強気に継続するのか、あるいは勇気ある撤退を決断するのかということです。

 見込みが外れた事業を継続する場合、勝算があって信念を貫くのと、負けを認めるのが嫌で意地を張っているのとでは、大きく異なります。株式投資でも商売でも見切りは大切です。損切りをしたときは悔しくても、残った資金があれば、次の売買でその損失を取り返すことも可能です。損失を拡大させることは、なんとしても避けなければなりません。企業の存続そのものが危うくなることは、過去の数々の例が示しています。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■全従業員にAI活用徹底、業務改革を本格化  LINEヤフー<4689>(東証プライム)は7月14…
  2. ■50年以上親しまれたかぜ薬が国内市場から姿を消す?  大正製薬は7月14日、塗るかぜ薬「ヴイック…
  3. ■鈴鹿8耐で新型CBコンセプト登場  ホンダ<7267>(東証プライム)は7月11日、大型ロードス…
2025年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■01銘柄:往年の主力株が再評価、低PER・PBRで買い候補に  今週の当コラムでは、買い遅れカバ…
  2. ■日米同時最高値への買い遅れは「TOPIXコア30」と「01銘柄」の出遅れ株でカバー  日米同時最…
  3. ■東京株、NYダウ反落と首相辞任で先行き不透明  東京株式市場は米国雇用統計の弱含みでNYダウが反…
  4. ■株式分割銘柄:62社に拡大、投資単位引き下げで流動性向上  選り取り見取りで目移りがしそうだ。今…
  5. ■金先物相場を背景に産金株が収益拡大の余地を示す  東京市場では金価格の上昇を背景に産金株が年初来…
  6. ■大統領の交渉術が金融市場を左右し投資家心理に波及  米国のトランプ大統領は、ギリシャ神話に登場す…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る