為替相場の「ノイズ」を聞き取って円高メリット株に早目のアプローチも一法=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

為替相場の乱高下は、「ノイズ」だそうである。黒田東彦日銀総裁が、前週末19日の金融政策決定会合後に開いた記者会見で海外の金融当局者の間にそうした見方があることを紹介した。同時に為替レートは、経済のファンメンタルズに基づき安定的に推移することが望ましいとの基本認識も示した。しかし株式マーケットの大方の市場参加者にとっては、その「ノイズ」が大問題なのである。「ノイズ」が円安と聞こえるのか、「円高」を示唆しているのかによって、株式は売りなのか買いなのか、買う銘柄、売る銘柄が自ずと決まってくるからで、「ノイズ」に振り回される悩ましい日々を余儀なくされているのである。

これを端的に表したのが、当の黒田総裁の6月10日の衆議院財務金融委員会での発言であった。質問に対して「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れていくことはありそうにない」と答えて、これが円安けん制発言との「ノイズ」を増幅し、1ドル=124円台央だった為替レートが、瞬間的に1ドル=122円台央まで急速な円高となった。株価の方も、2万円大々台を試す動きとなっていた日経平均株価が、6月18日には1カ月ぶりに2万円台大々台を割るショック安に見舞われ、高値でハシゴを外されたとの思いに捉われた市場参加者も少なくないはずと類推させた。

もともと今年の5月相場は、米国の相場格言「Sell in May, and go away(5月に売り逃げろ)」を警戒する神経質な立ち上がりとなったが、為替レートが、月初の1ドル=119円台から月末の124円台まで円安が進んだことも加わって、日経平均株価は、27年ぶりの12日連続の続伸となって無事に「Sell in May」を乗り切った。この為替レートは、6月も円安が加速し、6月5日には米国市場で一時、1ドル=125.86円と13年ぶりの円安となったが、前述の通り黒田発言に冷や水を浴びせられて急反転、日経平均株価は2万円大々台を割ってしまった。米国には「June Swoop(6月の失速)」との言い方もあるそうだが、「Sell in May」は大過なくやり過ごしたものの、今度は、為替相場の動向次第で「June Swoop」の心配もしなくてはならないのかもしれないのである。

円安となるのか円高となるのかは、日米金融政策のギャップ、黒田総裁とイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の綱引き、あるいは連携、さらに大詰めを迎えたギリシャの債務問題の行方などさまざまなファクターが影響することは間違いないが、今回の当コラムでは、為替相場が、円高ペースで推移するケースを想定した早手回しのアプローチを提案したい。すなわち円安メリット株から円高メリット株への乗り換えである。

円高メリット株の代表といえば、かつては電力株で決まりであった。たびたび見舞われた円高不況時には、そのたびごとに政府の要請に応えて設備投資の前倒しなどを率先して行うなど円高差益還元の優等生であった。ところが例の東京電力<9501>(東1)の福島大原子力発電所の事故である。電力会社の全原発が運転停止となるなか、梅雨明け後の猛暑到来などで電力供給ピンチなどの不測に事態も想定されるとすれば、スンナリ定石通りに買いとはならない可能性もある。となれば、同じ公益事業の東京ガス<9531>(東1)、大阪ガス<9532>(東1)、東邦ガス<9533>(東1)、静岡ガス<9543>(東1)、岩谷産業<8088>(東1)、日本瓦斯<8174>(東1)、電力会社で唯一、原発を持たない沖縄電力<9511>(東1)に注目となるが、ここではさらにアプローチの網を広げたい。海外委託工場で製造した製品を国内自社店舗で販売するSPA(製造小売業)株や食品、資材、ハイテク製品などの輸入専門商社をターゲットにすれば、バラエティに溢れたポートフォリオ構築の楽しみも出てくるというものである。(本紙編集長・浅妻昭治)

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