【どう見るこの相場】8月相場の基本は好業績銘柄の個別物色だが、さらに出番が続く期待銘柄とは?

どう見るこの相場

■予定通り終了するかどうか見通せない緊急事態宣言

 血液中の酸素量(酸素飽和度)を検出するパルスオキシメーターで測れるものなら、どうしても測りたいものがある。菅内閣の新型コロナウイルス感染症の医療体制変更である。前週2日に突然、新型コロナウイルス感染者の入院対象を重症患者に限定し、それ以外は自宅療養を基本方針にすることを発表したからだ。パルスオシメーターは、肺や血液に取り込まれた酸素量を測定し、96%~99%を標準値として、90%以下は呼吸不全を起こしていると診断し容態急変を示す目安として使用されている。同オキシメーターで菅内閣の医療体制が機能不全に陥っているのかいないのか測ってみたいと興味が湧くのである。

 東京都は、この基本方針に呼応して入院患者の退院基準をこれまで入院から10日後としていたのを症状が軽くなった段階でと変更しており、やはりパルスオキシメーターでテストしたくなる。だいたい昨年以来、自宅療養中に孤独死するケースや容態が急変し緊急搬送された患者を受け入れる病院がなくタライ回しされたケースなどを数多く見聞きし、新規感染者の感染経路の6割超が家庭内感染との分析結果もあるだけに、自宅療養を基本として本当に感染者の「生命と健康を守る」ことができるか、多方面から疑問符が突き付けられた。余りの反発に直後には一部を修正、中等症感染者も入院治療としたが、医師の判断によるとした。

 さらにこの医療体制の変更は、肝心の新型コロナウイルス感染症の感染爆発の抑制には役立たずで、医療体制崩壊を回避するための緊急避難策でしかない。前週8月5日に東京都の新規感染者は5042人、全国では1万5263人と過去最高となり、第5波の感染爆発への懸念を強めた。しかも、金メダルラッシュでお祭りムードに沸いた東京オリンピックは、8日に閉幕したもののこの置き土産があるのかないのかも含め、この8月はなお感染拡大リスクを高めるイベントが目白押しである。前週末からまたも3連休で、台風で1日順延された夏の甲子園高校野球選手権は、きょう10日に始まり、民族大移動のお盆休み、8月24日の東京パラリンピックの開会式と続く。東京都などに発出されている緊急事態宣言が、期限の8月31日に予定通り終了するかどうかはなかなか見通せない。

■星医療酸器は第2の川本産業か?

 こうした状況は、昨年1月15日に日本で初の新規感染者が確認された感染拡大の第一波とよく似ている。当時は、正体の見えない新型コロナウイルスへの恐怖感からマスクや手指消毒薬へのパニック買いが起こり、ドラッグストアやスーパーの商品棚からはマスクや消毒薬が蒸発、経済活動も大きく制約を受けた。株式市場では、川本産業<3604>(東2)などのマスク・消毒薬の防疫関連株が、軒並み連続ストップ高し、川本産業は、実に年初来安値からわずか1カ月で9倍超の大化けを演じた。

 今回も、この時と同様に急動意となった銘柄がある。星医療酸器<7634>(JQS)だ。在宅の酸素療法事業を展開する同社株は、菅内閣の感染者を自宅療養とする基本方針変更決定とともに、8月3日、4日、5日と3日連続のストップ高を演じ、3連休前は高値波乱となったが、週間で1055円高の棒上げとなった。またこの星医療酸器の急騰は、パルスオキシメーターの関連株の急騰にも波及しており、まさに昨年1月の川本産業が代表する防疫関連株相場の初動相場を彷彿とさせる。

 菅偉義首相の政治信条は、「自助、共助、公助」と承っている。今まさにこのうち「共助、公助」の道筋が不透明化するなか、昨年1月と同様にパニック様相を濃くする可能性も否定できず、当時のマスクと消毒薬の入手に何軒ものドラックストアやスーパーを駆けずり回ったのと同じ「自助」を強めるしかない。8月相場の基本は、折からの決算発表で際立つ好業績銘柄の個別物色とするのが一般的だが、捻ってさらに出番が続くと期待して自宅療養関連株の自助投資にトライしてみるのも一法になるかもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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