【小倉正男の経済コラム】「クリスピースパイス ペパー」新感覚の食べるスパイス

■ブラックペパーの辛みを抑えて何度も試作

 新型コロナ感染症が中国・武漢で発症したのは2019年後半である。19年11月末にある菓子製品の包装関連企業大阪本社に取材していたら「上海工場が稼働できていない」という話を聞いた。当時は何のことやらわからない。どうして上海工場を動かせないのか。「新型肺炎が上海で流行して経済活動が止まっている」、という説明だった。

 20年に入るとこの新感染症は全世界に一気に広がり、新型コロナ禍はとどまるところがなかった。日本でもイベントなどもことごとく中止に追い込まれた。完全に収束したとはいえないが、22年後半には経済活動がようやく再開された。いまは止まっていたセールスプロモーションなどイベントも開催されるようになっている。

 調味料に実績があるユウキ食品が厨(KURIYA)東京・神保町本店とコラボレーションで「クリスピースパイス ペパー」の新発売キャンペーンを開催するというので参加した。フライドオニオン、アーモンドなどのザクザクとした素材にブラックペパー、フライドガーリック、バジルなど香辛料をブレンドした新感覚のスパイスである。

 「ブラックペパーのシャープな辛みをむしろ抑えて、ほかの調味料とのバランスを見つけるまで何度も試作を重ねた。これまでのマーケットにない、心地良い新食感を目指した」。「ステーキなど肉料理のみならず、パスタ、サラダ、ピクルスなどにもザクザクと乗せてカリカリと食べられるスパイス」(ともに西島進経営企画室次長)。

■ペパー(胡椒)は大航海時代のトップ商品

 ペパー(胡椒)といえば、古代から高額で取引される貴重品という長い歴史を持っている。ペパーは、とりわけ大航海時代の欧州ではトップ商品である。むしろ大航海時代にいたったのは、ペパーを求めてといったほうがわかりやすい。ペパーを手に入れるためにアフリカ最南端の喜望峰を廻ってペパー原産地のインドに向かう新航路が発見されていったわけである。

 ペパーは、辛み成分に抗菌・防腐作用を持っている。そうしたことから欧州では肉類の長期保存、さらには料理そのものの風味(辛み、香りなど)付けに用いられてきている。嵩や重量はないが、欧州では不可欠であり、しかも高額で取引される商品だった。ペパーは欧州では栽培・採取できないから、インドなどから中東を経ての中継貿易で手に入れるしかなかった。

 アラブ商人経由の「レバント貿易」(東方貿易)でヴェネツィアなど北イタリヤ諸都市が繁栄したのもこのペパーという商品の恩恵によるものである。しかし、大航海時代を開いたインド航路開拓は、ペパーを中東経由ではなくインドなどから直接に欧州に運ぶという大革新をもたらしている。

 「大航海」という時代は、ペパーの貿易チャネル、いわばサプライチェーンのゲームチェンジャーを果たしたことになる。大航海時代を経て産業革命期になって、ペパーはトップ商品の座を綿織物などに譲っていった経過をたどっている。

■味をみていただいてバズって火が付けば・・・

 食品というものは、「タンジブル」の世界であり、食べてみないとわからない。「クリスピースパイス ペパー」をザクザクと肉料理などに乗せてカリカリと食べて、といっても食レポではほとんど伝わらない。食べてみれば、なるほどザクザク、カリカリという感覚が味わえる。表現として間違いではない、と確認できる。

 「クリスパ(「クリスピースパイス ペパー」の略)は、目で見ていただいただけでは十分ではない。スーパーの店頭などで味をみていただくことが先決。イベントとか店頭で啓蒙活動を行って味わっていただいて、バズって火が付くようなことになれば、と」(西島次長)。

 コロナ禍の20年~22年は「見る」「聞く」「味わう」というリアルは後退するばかりだった。Webミーテイングなどバーチャルばかりで過ごしてきたわけである。「クリスパ」は久々にリアルをピリッと、いやいやリアルをザクザクカリカリと体感できる新感覚派のペパースパイスだったというのは間違いない。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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