【どう見るこの相場】一味も二味も違う「重厚長大」リターンではシンプルにメーン・サブの「01銘柄」へチャレンジ

 日本製鉄<5401>(東証プライム)が、大商いのなか上場来高値追いとなっている。この賑わい振りをみていると、どうしたってロートル投資家は、あの40年もの前の1980年代の「軽薄短小」産業株と「重厚長大」産業株とのせめぎ合いを思い浮かべてしまう。このせめぎ合い、ライバル関係は、日本の戦後の高度経済成長がカベにぶつかって、それまでの「トン」単位の素材産業、重化学工業中心の産業構造から経済のソフト化、サービス化が進み、付加価値の高い「グラム」単位のエレクトロニクスやソフトウエア産業などへの転換が叫ばれ、急がれていたことが時代背景となっていた。

 もちろん日本製鉄は、重厚長大産業の代表である。ところがである。その後の日米貿易摩擦や円高不況を経てバブル経済が兆すと、この産業構造の転換はあらぬ方向にカーブしたことは、記憶に新しいところである。「グラム」への転換の究極行き着いたところはマネー、「財テク」ブームであった。ある大手商社では、財テク部署を設置し、部員3人、机3卓、電話1本でスタートしようとしたところ、初日の朝から電話は鳴りっ放なしで、証券会社や銀行から投資資金も投資物件も先方で用意してくれると至れり尽くせりとなる売り込みが引きもきらなかったなどのウワサが、漏れ伝わってきたのもこの頃である。

 この「財テク」ブームで、大きく買われたのが何を隠そう、重厚長大産業株だったのである。軽薄短小化のはずが逆コースとなった。世界のマーケットを席捲したジャパン・マネーが、バブルマネーとなって重厚長大産業株の遊休地はもちろん工場敷地、保有株式などに目をつけ、保有資産の簿価を時価換算する含み益投資を敢行したのである。軽薄短小化の行き着くところは不動産バブルであったことになり、この後遺症が「失われた20年」の元凶となった。その後も、この二者択一は、リアルかデジタルか、オールドエコノミーかニューエコノミーかなどと繰り返されてきた。

 足元の株式市場での日本製鉄の上場来高値追いは、この重厚長大産業のリターンマッチを思わせるところがある。日米両市場とも、グロース株(成長株)とバリュー株(割安株)のせめぎ合いが続いており、米国の長期金利が上昇すればバリュー株、低下すればグロース株が買われ日替わりメニューとなってきた。前週末の東京市場では、グロース株、バリュー株ともに人気となる呉越同舟となったが、今後は、日本製鉄の人気の消長は、このトレンドがどちらに定まるのか、示唆しているのかもしれないのである。

 このバリュー株の代表が、もちろん日本製鉄であり、同様にコード番号の下2桁が「01」となる日本郵船<9101>(東証プライム)である。この「01」は、かつて経団連銘柄といわれ、自他ともに各業界の代表と認められた企業にのみ許されたコード番号であった。株価意識も半端でなく、業界2位銘柄以下のライバルとの比較確認が、幹事証券の日々のルーチンワークとなっていたほどだ。やや家賃が高過ぎるケースもみられ、まして「財テク」ブーム時代の高株価は、含み資産を時価換算する以外に辻褄を合わせることが難しかった。

 ところが足元の「01銘柄」は、大違いである。PERでもPBRでも配当利回りでも、どの投資尺度からも割安でなお高値が期待できる絶好のポジションにある。バブルマネーに頼ることもなしに、正真正銘の投資価値を示しているのである。仮に「重厚長大」株がリターンマッチを演じるとして、一味も二味も違ってくることになる。これは「失われた20年」を経て劇的な業界再編やライバルのはずだった企業との経営統合、老朽設備の休廃止、さらに売買単位統一に向けた株式併合効果などが重なったことなどが要因となったはずで、この辺の事情は、株価の高値追いとともに徐々に明らかになるのを待ちたい。

 そこで今週の当コラムでは、当たり前過ぎて申訳ないがシンプルに「01銘柄」にスポットライトを当てることにした。「01銘柄」は、コード番号を追っていけば自明なように49銘柄ある。そのなかには、日経平均株価の構成銘柄に組み入れられている本来のメーンの「01銘柄」がある一方、上場市場が東証スタンダード市場や東証グロース市場となるサブ的な「01銘柄」も含まれる。40年ぶりの「重厚長大」リターンマッチを期待して「01銘柄」にチャレンジしたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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