【どう見るこの相場】パウエル発言でNYダウ急反発、東京市場全面高、次の焦点は日銀政策決定会合

■9月1日に値上げラッシュの食品株は日銀バトルで小緩んでも株高持続性

 まさに「パウエル・プット」である。前週末22日のジャクソンホール会議の講演で、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、市場の期待に寄り添うように政策金利引き下げを容認するハト派発言をしたことを歓迎して、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、846ドル高と急反発し、一気に8カ月半ぶりに史上最多値を更新した。株価は、9月16日、17日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)での6会合ぶりの利下げを早々に織り込んだことになる。

 きょう週明けの東京市場が、パウエル発言を受け全面高でスタートし、FRBの金融政策が一件落着となると、次の焦点は、日本銀行に移る。日銀も、同じく9月18日、19日に金融政策決定会合を開催予定であり、「物価の番人」として物価高問題にどう金融政策の舵取りをするか、5会合ぶりの政策金利引き上げに踏み切るのかが注目されている。足元の物価高は、なかなか収まってくれない。総務省が、前週末22日に発表した全国消費者物価指数でも、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比3.1%上昇と47カ月連続で前年同月比プラスとなっており、家計は直撃されっ放しである。この要因は食料品価格の上昇で、米類は90.7%上昇とほぼ倍化し、チョコレートも51%、コーヒー豆44%、おにぎり18%、鶏卵15%、鶏肉9%と軒並み高となっている。

■食品株に注目、値上げラッシュが収益を下支え

 この物価高問題は、自民・公明の政権与党が、衆議院議員選挙に続いて参議院選挙でも過半数を割り、少数与党に転落するなど大きく政治問題化した。植田和男総裁の「次の一手」は、物価高対策として家計の現金給付か消費税減税かの与野党攻防も大きく左右すること必至である。金融マーケットは、すでに国内の長期金利が上昇して利上げ先取りに動き、銀行株などが利ザヤ拡大期待で軒並み高となっており、株価の先見性発揮かフライングかほどなく正解が明らかになるはずである。

 仮に利上げとなったケースでは、日銀とのバトルが避けられないのが、9月1日に値上げ実施を予定している食品株である。値上げそのものが、物価沈静化を進める日銀を逆撫でするからだ。帝国データバンクの「食品主要195社価格改定調査」では、8月に1010品目が価格改定されたあと、9月1日も1235品目で値上げが予定され、10月はこれがさらに2793品目に増加し、ことによると10月は、3000品目を超え今年4月(4225品目)以来の値上げラッシュとなる可能性もあるとしているのである。日銀が利上げしても、その利上げ効果に水を浴びせる結果になることは明らかである。

■木徳神糧と亀田製菓、コメ価格高騰下で市場評価高まる

 政策当局者と関連企業のバトルは、今回が初めてではない。例えばコメ価格問題の木徳神糧<2700>(東証スタンダード)である。今年5月に就任したばかりの小泉進次郎農水大臣が、名指しこそしたかったものの、コメ卸数社が、市場価格を釣り上げ買い占め、出し惜しみによって流通を阻害しているのがコメ価格高騰の要因と非難したのである。これに対して木徳神糧は、直ちに反論し、取引価格の不当な操作は行っていない、高騰する仕入価格を価格転嫁をする真っ当な経営判断によるものだと社長コメントを発表した。このバトルは、その後、木徳神糧の株価が、連続ストップ高するなど今のところ木徳神糧に軍配が上がっている。

 9月の値上げラッシュが、日銀とのバトルになるとして、マーケットでは「第2の木徳神糧」とも目される関連株の動意が急である。米菓大手の亀田製菓<2220>(東証プライム)である。同社は、今年5月に今3月期決算を発表し、原料米の上昇などから今期業績の減収減益転換を予想し、この時期にコメ価格が、前年比2倍以上に急騰したことも重なり年初来安値3600円まで大幅調整した。それが今年6月に特別利益計上で今期業績を上方修正し、純利益が、前期比4.4倍と大幅続伸することを受けて年初来高値4605円へ1000円幅のリバウンドをした。米食に対する一般消費者の意識がパラダイムシフト(規範変遷)しつつあるとの見方もあるなか、自ら名乗っている「ライスイノベーションカンパニー」の真価も問われることになる。同社は、今年7月に続いて9月も主力商品の値上げをする予定であり、PER3.7倍の割安株価への注目度が高まることが予想される。

 そこで今週の当コラムでは、9月に価格改定を予定している食品株を取り上げることとした。亀田製菓をリード株に日銀バトルによって仮に小緩む場面があったとしても株高持続性が期待されるからだ。また値上げラッシュで消費者の節約志向が強まるなか、家計の味方のディスカウンター株への注目も怠れず、備蓄米放出の随意契約に名乗りを上げた関連株の見直し余地も大きそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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