鹿島、建設現場で残コン・戻りコンをゼロに!CO2固定率20%アップの新システム

■システムの機能向上で処理土のCO2固定率が20%アップ

 鹿島<1812>(東証プライム)は23日、2022年に、建設現場で発生する残コンクリート(現場で荷卸しされた後、アジテータ車に残ったコンクリート:残コン)および戻りコンクリート(アジテータ車から荷卸しされずに出荷元の生コンクリート工場に戻されるコンクリート:戻りコン)を、CO2(液化炭酸ガス)を利用してゼロにするシステムを開発したと発表。

 同システムの機能を向上させ、残コン・戻りコンから抽出した処理土にCO2を固定する効率を20%高めることに成功した。既に、同社が熊本県で施工中のJASM新築工事にて実運用し、取り出した骨材は現場内の通路に再利用した。

 建設現場で発生する残コン、戻りコンについては近年、戻りコンの有償化や残コン・戻りコンの100%リサイクル技術が開発されるなど各種の取組みが行われているが、大幅な削減には至っていないのが現状である。

 こうした中、同社は昨年、残コン・戻りコンの削減およびCO2削減という二つの課題を建設現場内で同時に解決する技術を、東京大学大学院工学系研究科・野口教授の指導のもと開発した。

 同システムのさらなる機能向上を実現し、建設現場へ適用した。

■システムの特長

 同システムは、建設現場内に設置する濁水処理装置に簡易な装備を追加し、CO2(液化炭酸ガス)を利用して、建設現場で発生する残コン・戻りコンをゼロにするものである。残コン・戻りコンを骨材と、CO2を吸収・固定し中和した処理土に再生し、なおかつ排水のpHと濁度を下げて放流可能な水に処理する。

 今回、導入したシステムでは、スパイラル分級機と、特殊混合装置を新たに組み込み機能向上を行った。これにより、スパイラル分級機で生コン内の骨材をすべて取り除くことで、既存の濁水処理装置の配管閉塞の回避や装置負荷の低減効果が得られ、特殊混合装置においてはセメント成分を含むスラリー(液体中に鉱物や汚泥などが混ざっている混合物)とCO2(液化炭酸ガス)を効率よく混合・反応・固定させ、処理土のCO2固定率を飛躍的に高めることに成功した。

 同システムでは、1か月で最大22.5m3の残コン・戻りコンを処理し、約40tの骨材を資材として再生させ、さらに処理土の中に約150kgのCO2を固定した。CO2固定化率は、従来システム比で20%増を実現した。

■スパイラル分級機

 残コンと戻りコンから骨材の分離・洗浄を行うスパイラル分級機は、①沈降タンク、②スクリューコンベア及び③後付けした洗浄装置で構成されている。アジテータ車から沈降タンクに投入された残コン・戻りコンを、スクリューコンベアで上方排出口に送り出す間に、洗浄装置で洗浄した骨材を連続して排出していく。洗浄に使用した水は沈降タンクでセメントと混合されセメントスラリーとなり前処理槽へ送られる。

■特殊混合装置

 スラリーとCO2(液化炭酸ガス)の混合・固定に使用する本同装置は、ウルトラファインバブルを発生させることで気液混合を高効率かつ高速で行うことが可能である。手順としては、一次処理として、セメントスラリーに大量のCO2を吸収・固定させ、pHを11以下にする。その後、セメントスラリーを既存の濁水処理装置に送り、中和された処理土(炭酸カルシウムとセメントの混合物)とpHが放流基準値以下となった処理水に分離する。

■骨材の再利用

 JASM新築工事では、2022年12月から性能確認などの各種実証試験を経て、同システムを2023年2月から4月まで現場で運用した。今回、取り出された骨材は、現場内の通路に再利用している。

■今後の展開

 今後は、汎用性を高めるため本システムをコンパクト化し、建設現場への適用を増やしていく。将来的には、同システムで使用するCO2(液化炭酸ガス)に建設現場で排出される重機などの排ガスを用いるなど、施工起因のCO2の削減を推進することで、脱炭素社会への移行に貢献していくとしている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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