【どう見るこの相場】値上げ効果で業績上方修正ラッシュ、トヨタが牽引する日本経済のインフレマインド醸成

■値上げ効果で史上最高益!トヨタを筆頭に業績上方修正銘柄が続出

 「赤信号、みんなで渡ればこわくない」とは、あのビートたけし氏の名言である。これを株式市場でいま佳境に差し掛かった決算発表に敷衍すると「物価高、みんなで値上げをすればこわくない」となるかもしれない。今回の決算発表は、日本経済新聞の2月5日現在の集計では5社に1社が今期業績を上方修正したと分析されたが、そのあとの決算発表ではこのウエートがさらにアップしている印象である。企業各社は、新卒採用難や人手不足による人件費増や資源価格上昇、円高・ドル安に伴う部材価格上昇などが業績圧迫要因となっているが、相次ぐ業績上方修正の要因の一つにこのコスト増を価格転嫁する値上げがあげられているからである。例えば今3月期営業利益を4兆9000億円(前期比80%増)に上方修正し時価総額が日本企業初の50兆円超となったトヨタ自動車<7203>(東証プライム)でも、この修正要因の値上げ効果は1兆円に迫った。

 日本経済は、デフレ脱却へパラダイムシフトする正念場にある。2%の物価上昇率を達成するためにもコスト増の価格転嫁は、このキーポイントとなり、大企業が下請け企業の納入価格引き上げをスムーズに受け入れているかあの怖い怖い公正取引委員会が監視の目を光らせている。値上げ、業績拡大、春闘での物価上昇率を上回る賃上げ実現となれば、消費者のフトコロ具合も温まり消費拡大の好循環につながる。しかもラッシュとなっている業績上方修正会社は、その多くが同時に配当も増配している。なかには業績下方修正でも、増配に踏み切った企業も目立っている。株価上昇の値幅効果とインカムゲインの相乗で、投資家への資産効果は高まりインフレマインドはさらに醸成される。この好循環があればこそ、「ゼロ解除後も緩和的な金融環境は維持する」と講演した日本銀行の内田真一副総裁も、国会で同様の答弁を繰り返した植田和男総裁も、後顧の憂いなく3月、4月の金融政策決定会合に臨めるというものである。

■3点セット銘柄が狙い目!業績上方修正・増配・資本政策で資産効果を高める

 この上方修正銘柄のなかでも、より資産効果を高めてくれると期待されるのが3点セット銘柄である。決算発表シーズンには、必ずといっていいほどこうした3点セット銘柄が突出するもので、当コラムでもしばしば取り上げたことがある。3点セット銘柄とは、業績上方修正の1点銘柄に増配が加わる2点銘柄、この2点にさらに自己株式取得・消却、株式分割などの資本政策が上乗せとなる銘柄のことである。

 3点セット銘柄の資産効果が、どれほど高いかはデクセリアルズ<4980>(東証プライム)をみれば明らかである。同社は、今年2月5日に今3月期業績の上方修正と年間100円への増配、自己株式取得を同時発表した。株価は、ストップ高で2023年11月の上場来高値4649円を突き抜け、上場来高値5450円まで買い進まれ1000円高した。足元では高値もみ合いを続け、業績上方修正でPERは15.9倍と市場平均をやや上回るものの、下値には自己株式取得も期待できることになり、ハイテク・バリュー株の一角で存在感を主張しよう。

 3点セット銘柄は、3連休前の前週末9日大引け後に決算発表した3社を含めて手集計では22銘柄を数えるが、その3点セットは、デクセリアルズのような業績上方修正・増配・自己株式取得組と業績上方修正・増配・株式分割組、さらに業績上方修正・増配・自己株式消却の3グループに分かれる。ただ共通しているのは、一部を除き株価がほとんど高値反応してものの、なお割安水準にある銘柄が多数派となっていることである。

 また業績下方修正組の3点セット銘柄も、少数ながら続いた。かつては業績を下方修正し赤字転落した限界企業では役員報酬の減額やピンチ挽回の中期経営計画の策定などの3点セットなどが目立ったが、今回は、業績下方修正には自己株式取得で対応し配当は増配するケースが目についた。

■3点セット銘柄は「みんなで買えばこわくない」でトップランナーのエヌビディアと腕比べ

 日経平均株価が、いまにもあの1989年12月の史上最高値3万8915円を奪回する勢いを強めているなかでは、日米両市場でマーケットをリードするのは米国の画像処理半導体トップのエヌビディアに率いられる半導体関連などのハイテク株で、まずこれをフォローするのがファースト・チョイスの投資スタンスだろう。ただそうした強調相場でも値上がり銘柄数の値下がり銘柄数のウエートが高いために尻込みし高値で振るい落とされるのではないかと懸念している投資家は、少ないない。やや慎重派の投資家向けには、トップランナーの「エヌビディア祭り」追随のセカンド・チョイスとしてこの3点セット銘柄にも目配りする投資スタンスも浮上しそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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