
■知的生産を加速する「道具」、万能ではない力をどう活かすか?
米オープンAIの最新対話型AI「GPT-5」は、専門家レベルの思考力を備え、ビジネスや研究の強力なパートナーとなりうる可能性を秘めている。一方で「使いづらくなった」「性能が落ちた」との声もある。進化した頭脳を真の味方とするには、利用者自身が特性を理解し、賢く使いこなすための「作法」を身につける必要がある。
■その答えを「疑う」勇気を持つ
GPT-5の最大の進化は、誤情報を生み出す「幻覚率」の大幅な低下にある。ただし、誤情報が消えたわけではない。説得力ある文章で誤った内容が提示される危険性は残っている。特に健康や金融、法律といった人生を左右する分野では、回答を鵜呑みにしてはならない。生成された情報はあくまで「下書き」や「たたき台」と捉え、公的機関の発表や専門家の見解で裏付けを取る「ファクトチェック」が不可欠だ。
■AIの「個性」を使い分ける
GPT-5にはCynic(皮肉屋)、Robot(ロボット)、Listener(聞き役)、Nerd(オタク)の4つの個性がプリセットされ、思考を深める「Thinkingモード」も備わる。これを活用できるかどうかが、得られる価値を大きく左右する。例えば企画のアイデア出しでは、意外な視点をもたらす「オタク」モードが有効だ。専門的レポートの要約には、事実を整理する「ロボット」モードが適している。目的に応じて役割を指示し、その「個性」を引き出すことで、検索ツールを超えて思考を補助する対話相手に変えられる。
■「コスト意識」を忘れない
利便性の向上と引き換えに、GPT-5には新たな利用制限が導入された。特に「Thinkingモード」は有料プランでも週200メッセージが上限だ。これは思考力が無限ではないことを示す。本当に高度な能力が必要な場面のために利用回数を管理する視点が求められる。利用頻度と目的を把握し、最適なプランを選択するコスト意識がなければ、重要な場面で「思考のパートナー」を失う恐れがある。
■プライバシーという「最後の砦」
Gmailやカレンダーなど外部サービスとの連携により、GPT-5の利便性は飛躍的に高まった。しかし同時に、個人情報や機密データがAIと接続されるリスクも伴う。業務上の機密や詳細な個人情報を安易に入力しないことは鉄則だ。連携サービスのプライバシーポリシーを確認し、利用されるデータの範囲を理解した上で許可する必要がある。効率化の恩恵を享受するためには、情報セキュリティという「最後の砦」を自ら守る意識が不可欠である。
GPT-5は知的生産を加速させる強力な「道具」である。しかし万能の魔法の杖ではない。その特性と限界を理解し、主体的に関わる姿勢こそが、AI新時代を乗りこなすための必須スキルとなる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)