【鈴木雅光の投信Now】コア・サテライト戦略を考える

最近、銀行が投資信託を勧めるにあたって、「コア・サテライト戦略」を前面に打ち出しているところが増えている。

コア・サテライト戦略とは、比較的安定収益が見込めるものをポートフォリオのコア(核)にする一方、サテライト(衛星)は収益性を重視した資産クラスに投資することで、「守り」と「攻め」の両方に対応しようというものだ。一般的には、コアをバランス型ファンドなど価格変動リスクが低めの投資信託にする一方、サテライトは新興国株式やREITなど、相対的にリスク・リターンが高めの資産クラスに投資する。

この手法で運用する際のポイントは、コアとサテライトの配分比率をどうするかということだ。コアの配分比率を高めるほど、ポートフォリオ全体のリスク・リターンは低くなり、逆にコアの配分比率を低めるほど、ポートフォリオ全体のリスク・リターンは高くなる。ただ、コア・サテライト戦略は、「守り」と「攻め」の両立を目指したものである以上、極端な話、サテライトの比率を90%とし、コアを10%にするといった配分比率は考えられない。せいぜい、コア部分の配分比率は60%~90%の範囲で調整することを前提にするべきだろう。

では、サテライト部分は何を組み入れるべきか。新興国株式、国内REIT、グローバルREIT、金などのコモディティなど、いろいろ考えられるが、国内REITは国内株式と、グローバルREITは海外株式と、それぞれ近いリスク・リターンを持っている。相関性もかなり高い。そうなると、敢えてREITを組み合わせる必要は、あまり無さそうだ。

そうなると金はどうかだが、金は基本的に株式と逆相関にあり、資産デフレになると、価格が上昇する傾向が見られる。したがって、コア部分と金の組み合わせは、ポートフォリオ全体をより低リスクにするため、安全性と共に収益性を追求するコア・サテライト戦略の考え方からすると、いささか具合が悪い。

そうなると、コアとの組み合わせで適している資産クラスは、新興国株式ということになる。

コア・サテライト戦略は、簡単に言えば分散投資なので、一定期間ごとにリバランスをする必要がある。コア部分は国内株式、海外先進国株式、国内債券、海外先進国債券という4つの資産クラスに分散するのが基本だが、それぞれ異なる投資信託を組み合わせると、リバランスする際に、コアとサテライトの見直しだけでなく、コア部分の中でもリバランスする必要があるので、かなり煩雑さが増す。

したがって、コア部分は最初から4資産に分散投資するタイプのバランスファンドをのみで運用すると共に、サテライトは新興国株式で運用する投資信託のみを組み入れる。そうすれば、リバランスの煩雑さもかなり無くなる。

資産運用の基本は、シンプルが一番であるし、コア・サテライト戦略を勧める際、必要以上に多くの投資信託を組み合わせようとする銀行は、結局のところ手数料稼ぎにしか興味がないと考えるべきだろう。

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