【迫る人手不足倒産の危機】2024年度は過去最多の350件、建設・物流業で深刻化

■2年連続で最多を更新、建設業が初の100件超えで全体の3割占める

 帝国データバンクが発表した「人手不足倒産の動向調査(2024年度)」によると、2024年度の人手不足倒産は350件に達し、2年連続で過去最多を更新した。従業員の退職や採用難、人件費高騰などが要因であり、負債額1000万円以上の法的整理による倒産を集計した結果である。業種別に見ると、建設業が111件と最も多く、初めて100件を超え、全体の約3割を占めた。次いで物流業が42件と依然として高水準にある。背景には、2024年4月に時間外労働の上限規制が適用された「2024年問題」の影響に加え、足元で加速する賃上げ機運がある。大企業を中心に初任給が引き上げられ、政府も最低賃金の引き上げを表明する中、より良い待遇を求める転職者が増加し、中小企業における人材の確保・定着は一層厳しさを増している。

■価格転嫁率は依然低水準、賃上げ目的では理解得られず厳しい状況続く

 こうした状況下で、人材確保に不可欠な賃上げの原資を捻出するためには価格転嫁が重要となる。しかし、受注競争が激しい業界では価格転嫁は容易ではない。実際、全業種平均の価格転嫁率が40.6%であるのに対し、建設業は39.6%、物流業は32.6%と低迷している。帝国データバンクの調査によれば、コストアップ分の価格転嫁は比較的理解が得られやすいものの、賃上げを目的とした価格転嫁は取引先に受け入れられにくいという声も聞かれる。この「価格転嫁→賃上げ」の流れが円滑に進むかどうかが、今後の人手不足倒産の動向を左右する重要な要素となる。

 今後、賃上げ余力のない小規模事業者を中心に、「賃上げ難型」の人手不足倒産が高水準で推移する可能性が指摘されている。適正な価格転嫁が進まない限り、人手不足は深刻化の一途を辿り、企業経営を圧迫するだろう。帝国データバンクの調査結果は、人手不足が依然として多くの企業にとって深刻な経営課題であり、その解決には価格転嫁の実現が不可欠であることを示唆している。政府や関係機関による支援策とともに、企業間の取引慣行の見直しや、消費者への理解促進なども求められる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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