クリナップ、26年3月期も増収増益予想、原価低減と販売価格改定で大幅な利益改善を実現
- 2025/5/28 07:27
- アナリスト銘柄分析

クリナップ<7955>(東証プライム)はシステムキッチンの大手でシステムバスルームや洗面化粧台も展開している。重点施策として既存事業の需要開拓と低収益からの転換、新規事業による新たな顧客の創造、ESG/SDGs視点での経営基盤強化を掲げている。25年3月期は大幅増益で着地した。原価低減効果に加え、販売価格改定効果も寄与した。26年3月期は増収増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は反発力の鈍い形だが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。25年3月期の部門別売上高は厨房部門が1052億93百万円、浴槽・洗面部門が148億33百万円だった。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。
中高級品に強みを持ち、厨房部門は最高級ステンレスキッチンCENTRO(セントロ)、中高級価格帯のステンレスキャビネットキッチンSTEDIA(ステディア)、普及価格帯システムキッチンrakuera(ラクエラ)、コンパクトキッチンcolty(コルティ)、浴槽・洗面部門はバスルームAQULIA-BATH(アクリアバス)、yuasis(ユアシス)、洗面化粧台TIARIS(ティアリス)などを主力製品としている。
24年9月には普及価格帯システムキッチンrakueraをモデルチェンジして受注開始した。24年10月にはシステムバスルームSELEVIAにラインアップしたアイテム3品「ぐるもみジェット」「シルクベールシャワー」「乾動!優レールハンガー」が、公益財団法人日本デザイン振興会の2024年度グッドデザイン賞を受賞した。
競争力強化に向けてショールーム戦略も強化している。20年6月にKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。24年7月には熊本ショールームを約30年ぶりに移転オープン、24年11月にはつくばショールームをリニューアルオープンした。
販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店を主力としている。物流面では首都圏の物流強化の一環として、24年4月には相模原プラットフォームをリニューアルして本格稼働した。
■サステナブルビジョンは「人と暮らしの未来を拓く」
長期ビジョンの「クリナップサステナブルビジョン2030」(CSV30)では、2030年度の目標として財務目標(連結)では売上高1500億円、営業利益95億円、ROE8.5%、非財務目標では2013年度比温室効果ガス50%削減、女性管理職比率15%、男性育児休暇取得率100%、有給休暇取得率60%を掲げている。
既存事業に関しては、水回り3品(キッチン、浴室、洗面)事業での安定した収益確保を目的として中高級品の販売力強化、システムバス販売の底上げ、リフォーム需要獲得、水回り3品で培ったノウハウを活かしたサービス・物流分野での外販ビジネスの拡大、生産変革による原価低減、間接業務の効率化などで利益改善を推進する。
なお福島県いわき市に生産拠点を構えている。東日本大震災の翌年の12年12月に公益財団法人クリナップ財団を設立し、福島県の復興支援を目的として活動している。そして24年7月には、クリナップ財団の24年度の奨学生50名を決定した。13年度に開始した奨学支援事業は震災復興支援に有用な人材育成を目指し、12年間で累計奨学生は510名となった。
23年2月にはCSV30の実現に向けて未来キッチンプロジェクトを始動した。武蔵野美術大学との産学共同で社会課題へ取り組む未来キッチンラボの創設、過去に販売したキッチンキャビリサイクルプログラムの開始、未来を担う子供達からアイデアを公募する未来キッチン・イラストコンテストの開始、という3つのアクションを通じて、2030年までにシステムキッチンの枠を超えた新しいキッチンの事業化、より心豊かな食文化の創造を目指す方針としている。また未来キッチンプロジェクトの一環として、会員制リフォームネットワーク「水回り工房」にて、23年4月よりキッチンキャビリサイクルプログラムを開始した。
23年9月には同社ホームページ上にサステナビリティレポート2023を公開した。CSV30実現に向けた取り組みの進捗をはじめ、CSR方針を見直して新たに策定したサステナビリティ方針や、23年に策定したクリナップグループ環境ビジョン2050およびクリナップグループ人権方針も掲載した。23年12月には、グループの2030年度温室効果ガス削減目標においてSBT(Science Based Targets)イニシアチブからの認定を取得した。
24年3月には、23年2月に始動した未来キッチンプロジェクトを通じて研究している次世代キッチンの1つとしてモビリティキッチンのプロトタイプを発表した。24年12月にはMUJI HOUSEのインフラゼロハウスの実証実験にモビリティキッチンのプロトタイプを提供した。25年1月には練馬区豊玉地区の防災イベントにおいてモビリティキッチンのプロトタイプと、ろ過循環装置の実証実験を実施した。
■25年3月期は計画を上回り大幅増益着地、26年3月期増収増益予想
25年3月期の連結業績は売上高が前期比1.6%増の1299億87百万円、営業利益が61.5%増の20億70百万円、経常利益が44.8%増の26億21百万円、親会社株主帰属当期純利益が17.1%増の17億19百万円だった。配当については前期と同額の31円(第2四半期末13円、期末18円)とした。配当性向は65.0%となる。
前回予想(24年10月31日付で下方修正、売上高1300億円、営業利益10億円、経常利益15億円、親会社株主帰属当期純利益9億50百万円)を大幅に上回り、従来の減益予想から一転して大幅増益で着地した。新設住宅着工の伸び悩みや原材料価格の高騰など厳しい事業環境だったが、原価低減効果に加え、販売価格改定効果も寄与した。部門別の売上高は厨房部門が0.1%増の1052億93百万円、浴槽・洗面部門が0.1%増の148億33百万円だった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が316億43百万円で営業利益が2億72百万円、第2四半期は売上高が318億88百万円で営業利益が1億07百万円、第3四半期は売上高が351億78百万円で営業利益が17億43百万円、第4四半期は売上高が312億78百万円で営業利益が52百万円の損失だった。
26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比6.2%増の1380億円、営業利益が20.7%増の25億円、経常利益が14.5%増の30億円、そして親会社株主帰属当期純利益が7.6%増の18億50百万円としている。配当予想は25年3月期と同額の31円(第2四半期末13円、期末18円)としている。予想配当性向は60.4%となる。
新設住宅着工の伸び悩みなど厳しい事業環境が続くが、中期経営計画で掲げた「ファン化促進」や「専業力強化」などの重点施策を推進する。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。
■株価は調整一巡
株価は反発力の鈍い形だが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。5月27日の終値は657円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円30銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の31円で算出)は約4.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1583円18銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約246億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)