【マーケットセンサー】ニクソン・ショックから54年、歴史が示す教訓

■海運業の再編成功に学ぶ:関税戦争を乗り切るヒント

 米国政府は6月29日、対日自動車に最大25%追加関税を課す方針を書簡で通告する意向を示したと発表した。交渉期限7月9日を目前に、赤沢経済再生相の延長滞在も実を結ばず、30日に帰国の運びとなった。石破首相は報告を受け、日米双方に利益をもたらす妥協点を探る構えだ。保護主義の揺らぎは、来月15日で発生から54年を迎える「ニクソン・ショック」の影を想起させる。

 1971年8月15日、ニクソン大統領はドルと金の兌換停止、輸入課徴金、物価凍結を断行し、世界市場を混乱させた。固定相場制は瓦解し円は急騰、日本は市場開放と内需拡大を迫られた。重厚長大産業は構造不況となり、『トンからグラム』『ハードよりソフト』の合言葉の下、再編と設備人員削減が吹き荒れた。労使対立の深刻さは紙面に載らぬ惨事を生んだとの証言も残る。

 逆風を追い風に転じたのが海運業である。燃料コスト減を活かすだけでなく、便宜置籍船や外国船員の混乗体制を採用し、国際競争力を高めた。清潔な船体を誇った往時の姿は変容したが、業界横断の再編により収益構造を刷新した点は示唆的だ。半世紀にわたる円高圧力と米国の関税カードは、依然として日本経済に重くのしかかる。ニクソン発の教訓は、トランプ流通告の向こう側を読む羅針盤となる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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