ベステラ、独自の特許技術で市場を牽引、増収増益確保で中期的な成長基調へ
- 2025/9/24 07:21
- アナリスト銘柄分析

ベステラ<1433>(東証プライム)は、製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとして脱炭素解体ソリューションを推進している。26年1月期は営業積算体制整備遅れによる大型工事受注機会減少や、客先都合による工事一時中断の影響などで業績予想を下方修正(9月9日付)したが、前期比では増収増益を確保する見込みだ。老朽化プラント解体工事の増加で中期的に市場環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は下方修正を嫌気して年初来高値圏から急反落の形となったが、売り一巡感を強めている。高配当利回りも評価材料であり、出直りを期待したい。
■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業
製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。主要顧客はJFEグループ、日本製鉄グループ、東京エネシス、IHIグループなどとなっている。
M&A関連では21年12月に、アスベスト対策やダイオキシン対策など環境汚染対策工事に関して特殊な工事技術を保有する矢澤を子会社化した。23年8月には、水島コンビナートを抱える岡山県倉敷市を拠点に石油精製装置や化学装置など各種プラントの建設・メンテナンス・躯体工事を行うオダコーポレーション、およびオダコーポレーションの100%子会社でマンションや商業ビルの大規模修繕を行うTOKENを子会社化した。
一方で25年8月21日には、連結子会社のヒロ・エンジニアリング並びに3Dビジュアルの株式を、水道機工<6403>に譲渡(株式譲渡予定日25年11月28日)すると発表した。主力市場であるプラント解体事業にリソースを集中する。
なお25年4月に同社の筆頭株主であるTERRA・ESHINO社(以下、テラエシノ、同社創業家の資産管理会社)を子会社化、25年6月に吸収合併した。これに伴い25年7月15日付で自己株式144万株を消却した。
25年1月期のセグメント別業績(全社費用等調整前)は、プラント解体事業(同社単体)の売上高が90億38百万円で営業利益が5億77百万円、その他事業(グループ会社)の売上高が19億32百万円で営業利益が1億40百万円の損失(24年1月期は53百万円)だった。
完成工事高の業界別構成比は電力が28%、製鉄が23%、石油・石化が35%、ガスが2%、3Dが1%、環境が4%、その他が7%で、完成工事高に占める元請案件は39億14百万円、元請比率は37%だった。受注高は107億05百万円、期末受注残高は71億97百万円だった。受注残高の業界別構成比は電力が17%、製鉄が51%、石油・石化が26%、ガスが1%、環境が2%、その他が3%である。
■優良な顧客基盤や特許工法・知的財産の保有が強み
大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。技術関連では、球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」や火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得し、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」も開発している。さらに風力発電設備解体需要に応えるため、他社に先駆けて「マトリョーシカ式工法」「タワークレーン工法」「転倒工法」の特許工法を開発している。
24年7月には海外プラントの解体ビジネス展開に向けて、DENZAIと戦略的パートナーシップ提携契約締結について合意した。25年3月にはJ&T環境(株主はJFEエンジニアリング64%、JERA36%)と、廃棄物適正処理および再資源化推進に関する業務提携契約を締結した。25年7月には業務提携先である三谷産業<8285」と共同で、球体ガスホルダーに用いる表面処理装置および表面処理方法に関する特許を出願した。
■「中期経営計画2030」
市場環境は良好である。脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想され、同社ではプラント解体市場規模(電力、製鉄、石油・石油化学、風力など)を年間7000億円~1兆円と想定している。
25年9月公表の新中期経営計画「Leading the Future 中期経営計画2030」では、量的拡大と質的充実を同時に追求し、解体業界のリーディングカンパニーの基盤を確立することを基本方針として、目標数値・KPIには31年1月期の売上高300億円、営業利益33億円、営業利益率11.0%、1株当たり純利益(EPS)238円、ROE(自己資本利益率)20.0%、工事監督員数205人(26年1月期見込み92人)としている。
重点施策として、質の追求では脱炭素解体?の工法開発とAI活用による競争力の強化や業界をリードする技術ブランドの確立、量の追求ではプラント集積地域への拠点拡大や営業戦略・体制整備など持続的成長基盤構築によって成長加速を推進する。また将来への布石として海外市場探索(シンガポール、韓国など)と将来展開への基盤整備を推進する。
なお株主還元については累進配当を継続的に実施することを基本方針(25年1月期より適用)としている。配当性向40%および株主資本を基準とするDOE(株主資本配当率)3.5%以上を目安に累進的に配当する。
サステナビリティ経営に関しては21年12月にサステナビリティ基本方針を制定し、サステナビリティ委員会を設置した。23年8月には、探求型学習を通して社会参加の機会を提供しているUnpacked(東京都港区)と、Unpackedの主軸事業である「みらい事業部」(法人×U18で新しい価値を創出することを目的としたU18の企画開発チーム)でパートナーシップ提携した。24年4月には定年後再雇用制度を見直して整備した。定年後の役職・職務・等級が定年前と変わらない場合、定年前の給与を100%維持することとした。24年7月にはCO2削減に貢献する取り組み一つとして、東京本社を含む全事業所で使用する電力の全量について、トラッキング付き非化石証書が付帯された実質再生エネルギー由来の電力に順次切り替えを開始した。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。中期経営計画で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組むとともに、プラント解体業界のリーディングカンパニーとしての社会的サステナビリティへの貢献と利益成長の両立、リスク管理体制の強化やコンプライアンスの徹底などコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、さらなる企業価値の向上(時価総額の向上)を図る。流通株式数については第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により流通株式数の増加を見込んでいる。これらの取り組みによって26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。
■26年1月期連結業績予想を下方修正だが前期比では増収増益予想
26年1月期の連結業績予想については25年9月9日付で下方修正して、売上高が前期比10.1%増の120億円、営業利益が87.3%増の7億円、経常利益が18.2%増の7億円、親会社株主帰属当期純利益が34.2%増の5億50百万円としている。配当予想は前回予想(25年6月9日付で期末10円上方修正)を据え置いて、上場10周年記念配当10円を含めて前期比20円増配の40円(第2四半期末15円、期末25円=普通配当15円+記念配当10円)としている。予想配当性向は65.5%となる。
足元の受注動向や利益率改善の立ち遅れを勘案し、前回予想(第1四半期の政策保有株式売却益計上により25年6月9日付で親会社株主帰属当期純利益を50百万円上方修正して、売上高130億円、営業利益12億円、経常利益12億80百万円、親会社株主帰属当期純利益9億50百万円)に対して、売上高を10億円、営業利益を5億円、経常利益を5億80百万円、親会社株主帰属当期純利益を4億円それぞれ下方修正した。ただし前期比では増収増益を確保する見込みだ。
第2四半期累計(中間期)の連結業績は売上高が前年同期比11.6%減の51億円、営業利益が6.8%増の2億26百万円、経常利益が16.8%減の2億15百万円、親会社株主帰属中間純利益が73.4%増の2億20百万円だった。なお特別利益に投資有価証券売却益1億20百万円を計上した。
前年同期比では売上総利益率改善や不採算事業における販管費抑制などにより営業増益だったが、売上高、各利益とも期初計画(25年3月12日付の期初公表値、売上高52億42百万円、営業利益3億53百万円、経常利益3億93百万円、親会社株主帰属中間純利益3億50百万円)を下回った。利益率の高い工事を選択受注するという方針で営業活動を行ったが、体制整備が十分でなかったことなどにより大型工事の受注機会を逸したことに加え、当期より着工した進行中の工事で客先都合による一時中断が発生したため、工事進捗遅れに伴って進行基準売上計上遅れが発生したこと、工事進捗遅れに伴ってスクラップ搬出時期が遅れたこと、客先との追加受注の交渉が遅れたことも影響した。
セグメント別に見ると、解体・メンテナンス事業は売上高が12.2%減の49億36百万円で営業利益(全社費用等調整前)が4.6%減の8億82百万円、その他事業の売上高が13.4%増の1億64百万円で営業利益が21.8%増の43百万円だった。全社費用等調整額は前期が▲7億49百万円で、当期が▲6億99百万円だった。
完成工事高は前年同期比12.2%減の49億36百万円で、業界別の構成比は電力が15%、製鉄が40%、石油・石化が26%、ガスが1%、3Dが1%、環境が3%、その他が14%だった。完成工事高に占める元請案件は13億25百万円で、元請比率は26.8%だった。受注高は11.1%減の41億86百万円、期末受注残高は4.4%増の64億47百万円、受注残高の業界別構成比は電力が10%、製鉄が50%、石油・石化が30%、ガスが1%、環境が6%、その他が3%だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高25億31百万円で営業利益1億33百万円、第2四半期は売上高25億69百万円で営業利益93百万円だった。
26年1月期は営業積算体制整備遅れによる大型工事受注機会減少や、客先都合による工事一時中断の影響などで業績予想を下方修正したが、前期比では増収増益を確保する見込みだ。また下期には大型工事におけるスクラップ出荷量の増加や追加交渉の進展を見込んでいる。老朽化プラント解体工事の増加で中期的に市場環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年1月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年1月31日時点で5単元(500株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じてベステラ・プレミアム優待倶楽部で商品に交換可能な優待ポイントを贈呈する。
■株価は売り一巡
株価は下方修正を嫌気して年初来高値圏から急反落の形となったが、売り一巡感を強めている。高配当利回りも評価材料であり、出直りを期待したい。9月22日の終値は1073円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円06銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS546円88銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約99億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)