量子科学技術研究開発機構:レーザーで量子メス加速技術が前進、がん治療装置の小型化に道

■位相回転空胴とリアルタイム計測でレーザー加速技術を高密度化

 量子科学技術研究開発機構(QST)は9月27日、「量子メス」プロジェクトにおいて、レーザー加速で生成されるイオンの速度を整え、治療に必要な個数を10倍に増加させる技術を実証したと発表した。重粒子線がん治療装置の小型化を目指す同プロジェクトでは、既存の大型加速器に代わり、レーザーによるイオン加速を導入することで、装置の大幅な省スペース化を図っている。今回、位相回転空胴を用いた新技術によって、目標速度に揃った水素イオンの密度を大幅に高め、治療に必要なイオン個数(10⁹個)に到達する見通しを得た。

 共同研究はQST、九州大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、住友重機械工業<6302>(東証プライム)、山形大学などが連携して実施。レーザー照射によって発生した速度の異なるイオン集団を、位相回転空胴により特定の速度へと整え、さらに壁電流モニタによって非破壊・リアルタイム計測を実現。結果として1ナノ秒の間に1平方センチメートルあたり1000万個のイオンを高密度に集束させることに成功した。この技術は、がん治療装置への応用だけでなく、原子力材料の耐久性試験や材料科学、生命科学などへの展開も期待されている。

 重粒子線がん治療は身体への負担が少なく、高いQOLを実現する治療法として注目されているが、現行の装置は大型かつ高コストで普及が限られていた。QSTが開発を進める「量子メス」は、既存の建屋内に設置可能なサイズを目指しており、今回の成果はその実現へ大きく前進した。今後は水素イオンに加えて、治療に実際に用いられる炭素イオンでも同様の技術を確立し、2年以内に最終設計を決定する予定である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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