【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ユーグレナは下値切り上げて強基調を確認、中期的視点の評価で14年7月高値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 東京大学発ベンチャーのユーグレナ<2931>(東1)の株価は、12月の戻り高値から一旦反落したが下値切り上げの流れに変化はないようだ。1月5日には1576円まで上伸して強基調を確認した形であり、中期的視点の評価を高めて14年6月高値1750円を試す展開だろう。2000円台回復も視野に入る。

 05年に世界で初めて微細藻類ミドリムシ(学名ユーグレナ、虫ではなく藻の一種)の屋外大量培養技術を確立した東京大学発ベンチャーで、世界で唯一ミドリムシを数十トン規模で商業屋外大量培養している。ミドリムシは植物と動物の両方の性質を併せ持ち、59種類の豊富な栄養素をバランスよく含んでいることが特徴である。

 ミドリムシを配合した機能性食品・化粧品などを製造販売およびOEM供給するヘルスケア事業で安定的なキャッシュフローを獲得しながら、次世代型バイオ燃料(ジェット燃料、ディーゼル燃料)や水質浄化などの開発・事業化を進める「バイオマスの5F」を基本戦略としている。中期経営計画では18年9月期のヘルスケア事業売上高150億円を目標としている。

 ミドリムシ配合の機能性食品が人気化するとともに、食糧資源や次世代バイオ燃料への活用でも注目度を高めている。各分野で日本を代表する大手企業との資本・業務提携、共同開発、コラボレーションが相次いでいることも注目点だ。

 ヘルスケア事業では、イトーヨーカ堂との「ミドリムシカラダに委員会」やファミリーマート<8028>など、ミドリムシ配合の商品開発で大手流通チェーン・食品メーカーとのコラボレーションが活発化している。14年10月には武田薬品工業<4502>と包括的に提携し、武田薬品工業が健康補助食品「タケダのユーグレナ 緑の習慣」を発売した。医薬品分野でのミドリムシ特有成分「パラミロン」の注目度も高めた。

 次世代型バイオ燃料では、JX日鉱日石エネルギー(JXホールディングス<5020>)および日立製作所<6501>と次世代型バイオジェット燃料の共同開発を推進し、14年6月にはいすゞ自動車<7202>と次世代型バイオディーゼル燃料の実用化を目指す「DeuSEL(デューゼル)プロジェクト」をスタートさせた。いずれも18年の低コスト生産技術確立と20年の事業化を目指している。さらに水質浄化技術では清水建設<1803>、佐賀市、火力発電所のCO2固定化技術では住友共同火力との共同開発も進めている。

 また14年11月には、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で、プログラム名「セレンディピティの計画的創出による新価値製造」の研究開発機関として選定された。研究開発期間は14年10月から19年3月で、スーパーユーグレナを用いた超高効率・超低コストのバイオ燃料創出を目指す。

 海外では、ミドリムシの栄養素を活用して世界の貧困問題を解決することを目指し、14年4月からバングラデシュにおいて子供たちにミドリムシ入りクッキーを無償配布する「ユーグレナGENKIプログラム」を開始している。さらに中国では「新食品原料」登録、東南アジアイスラム圏では「ハラール認証」を取得して本格的な事業展開の準備を進めている。

 今期(15年9月期)の連結業績見通し(11月13日公表)は売上高が前期比55.0%増の47億22百万円、営業利益が同45.3%減の77百万円、経常利益が同34.0%増の2億56百万円、純利益が同48.8%増の1億75百万円としている。また13年12月実施の公募増資で調達した資金を充当して、今期中に藻類由来油脂開発・生産設備の実証プラントを着工する方針を示している。

 引き続き中期成長に向けた先行投資の時期として、広告宣伝費や研究開発費に積極投資するため営業減益見通しだが、売上面では収益性の高い自社ECサイト「ユーグレナ・ファーム」における食品直販が増加基調であり、粗利益率も上昇する。経常利益と純利益は助成金収入の増加が寄与して増益見通しだ。

 なお15年3月に本社を東京都港区に移転する。積極的な事業展開に伴う人員増加に対応してオフィス環境を整備するとともに、神奈川県横浜市に移転した中央研究所へのアクセスを改善することで、今後の研究開発および事業進捗を加速させるとしている。

 株価の動き(14年12月3日付で東証1部へ市場変更)を見ると、12月2日の戻り高値1748円から一旦反落したが、従来のモミ合いレンジである1300円~1400円近辺まで下押すことなく反発し、下値切り上げの動きを強めている。1月5日は1576円まで上伸する場面があり、終値は前日比55円(3.65%)高の1562円だった。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。強基調を確認した形であり、中期的視点の評価を高めて14年6月高値1750円を試す展開だろう。2000円台回復も視野に入る。

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