【小倉正男の経済コラム】米中貿易戦争は大人の解決を待つしかない

小倉正男の経済コラム

■8月下旬に米中通商協議

 16日のNY株価は396ドル高の高騰となった。米中貿易戦争に収束の兆しがみえたというのがNY株価の高騰の要因ということである。

 米中通商協議は中断状態が続いているが、再開の機運が生まれているというのである。8月下旬に中国商務省次官が率いる代表団が訪米して、通商協議を行うことが決まった。これはアメリカの招待によるものである。

 米中とも引き続き強硬で、“恫喝”めいた発言を繰り返している。貿易戦争の建前は崩していない。次官クラスの協議では、解決にはまだ遠いのではないかという見方が出ている。

 だが、一方ではアメリカ、中国とも大人であり、貿易戦争の落しどころを探っているという推測も強い。

 話し合いすら拒否しブラフを掛け合っていた米中が歩み寄って協議をするのだから、手ぶらでは終わらない。米中貿易戦争は収束に進んでいるという見方で、これがNY株価の高騰につながっている。

■急転直下の解決はあるか

 高い関税を報復的に掛け合うという貿易戦争は、お互いにとってよいことは何もない。
経済は縮小し、企業活動、例えば生産活動が停滞し、雇用にもマイナスを生み出すことになる。消費者にとっても、モノの値段が無意味に高くなるのだから、消費購買にもよいことはない。

 米中の2大経済大国が貿易戦争に走れば、日本にとっても大きなマイナスが出る。

 とりわけ、日本は中国に電子部品やその製造装置など生産財を売っている。実体面で日本経済を引っ張っている絶好調のセクターが打撃を受けることになる、という懸念が生じる。
 仮に中国経済がおかしくなれば日本経済も無傷ではいられないわけである。

 トランプ大統領というこれまでにないキャラクターの登場で世界経済が大きく揺らいでいる。トランプ氏が、“イグノーベル賞”もののキャラクターであることは間違いない。

 米中貿易戦争が解決すれば、トランプ大統領の支持や人気にも好影響が及ぶだろうから、急転直下で解決するということもありうる。
 しかし、トランプ大統領の支持や人気はどうあれなのだが、世界経済にとっては大人の解決がいちばん望ましいことになる。

■望まれる大人の解決

 日本経済でいえば、いまでは地方の電鉄会社などで「定期客」が増加するところも出ている。

 首都圏経済は繁栄しているが、地方経済は低迷している。これが日本経済の問題点である。首都圏にばかり人口が集中して、地方は衰亡の危機に直面している――。

 しかし、地方経済もようやく持ち上がり始めているところが出ている。
例えば、山陽電鉄の「定期客」がプラスに転じている。近隣の工業団地の雇用が増加して「定期客」が増えているということだ。

 これはいままでにないトレンドである。地方経済にも景気の波及がみえ始めている。
 かつて地方経済を支えた造船、鉄鋼など重工業が衰退しているが、電子部品などのハイテク型産業が着実に成長をみせている。地方経済の再構築=再生の芽が生まれてきている。

 しかし、せっかくいま地方に及んできている日本の景気にも、米中貿易戦争が長引けば悪い作用を及ぼすことになりかねない。

 トランプ大統領によって世界経済は波乱続きである。16日のNY株価の高騰はささやかな救いではあるが、現状はまだ先が見えない状況なのも事実。ともあれ、いまは米中貿易戦争の大人の解決を待つしかないといったところである。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事(1971年~2005年)を経て現職。2012年から「経済コラム」連載。)

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