【どう見るこの相場】逆相関の数少ないクリスマス・プレゼントを手掛かりに関連2セクター株への逆張りも一考余地

どう見るこの相場

 押し詰まるどころか押し潰されそうな年末相場である。東京市場の「掉尾の一振」期待は、大空振りの「掉尾の三振」に終わりそうだし、米国市場のサンタ・ラリー期待も、サンタクロースの乗る橇を引くトナカイの首にかけたカーベルの音が待てど暮らせど聞こえてこない。日米両市場は、いずれも年初来安値を更新しなおダインサイド・リスクを強めている。果たしてクリスマス明けには、ベッド脇に置いた靴下のなかにはどんなクリスマス・プレンゼントが入っているのか?

 円高・ドル安の一段の進行、日米の「物品貿易協定(TAG)」交渉での米国政府のゴリ押し、米連邦政府機関の一部閉鎖の長期化、海上自衛隊の哨戒機に対するレーダー照射による日韓関係の緊張などとしたら、株価にはますますの逆風となるのは必定である。今年10月末の急落時のようにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの年金基金の「鯨」ファンドが買い向かってくれない限り、この先、新春相場に向けおちおち初夢を描くこともままならなくなる。

 そのなかで靴下の底深く探ってみれば、あるいはわずか一つか二つくらいは買い手掛かりとなるプレゼントが出てくる可能性がある。リスクオフ・トレンドに逆相関する材料である。一つは金価格の上昇で、もう一つはこの裏返しの原油価格の下落である。金価格は、もともと景気や株価と逆相関する。好景気でリスクオンなら株価は上昇し、リスクオフに変わり株価急落に転じた途端に「質への逃避」が強まり、安全資産の米国の国債が買い進まれ、「有事の金」として実物資産の裏付けのある金先物買いが高まる。現に東京市場が休場のクリスマスイブの24日のニューヨーク市場では、ダウ工業株30種平均が653ドル安と大幅続落し1年3カ月ぶりの安値に突っ込むなか、ニューヨーク商品取引所の金先物価格は一時、1トロイオンス=1273.90ドルと今年6月以来半年ぶりの高値をつけた。一方、マーカンタイル取引所の原油先物(WTI)価格は、対照的に世界的な景気減速懸念や需給悪化不安を背景に一時1バーレル=42.36ドルと1年半ぶりの安値に沈んだ。

 来2019年の新春相場も、リスクオンかリスクオフかといえば、取り敢えずリスクオフ材料を織り込みながらスタートするとみた方が無難なようだ。1月3日に上院と下院の多数派が異なる米国議会の「ねじれ」が始まり、国内大手証券の来年の「びっくり予想」では、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の解任、トランプ大統領の弾劾成立、ペンス副大統領の大統領就任などが予想されており、このペンス副大統領も、就任当初の好意的な親日派評価よりトランプ大統領に輪をかけた対中国強硬派との強面評価が強まっているだけに、米中の貿易戦争はさらにエスカレートする展開も想定範囲内となってくる。

 以上のように金価格の上昇と原油価格の下落は、リスクオフ市場で消去法の消去法で数少ない買い材料となるはずだ。クリスマス・プレゼントが不発なら、その逆手を取って新春相場のお年玉に期待する投資スタンスを可能にしてくれる。金価格が、今年年初の高値水準の1トロイオンス=1300ドル台を回復し、一方、WTI価格が、40ドル台を試す場面では、関連株への逆張りも一考余地がありそうだ。

■金価格上昇へ敏感セクターの貴金属リサイクル株に加え年初来安値水準の産金株も

 金価格の上昇が、即業績の上方修正につながる敏感セクターは貴金属リサイクル株である。アサヒホールディングス<5857>(東1)は、今年7月に今2019年3月期の第2四半期(2Q)累計業績を上方修正し、その2Q累計決算開示時の今年10月には今期配当の年間配当120円(前期実績63円)への大幅増配を発表した。松田産業<7456>(東1)も、今2019年3月期業績は期初予想に変更はないが、今年11月に開示した今期2Q累計業績は、期初予想を上ぶれて着地した。アサヒHDはPER9倍台、配当利回り5.4%、松田産業もPER10倍台、PBR0.6倍と割り負けており、逆行高素地は十分だ。アサカ理研<5724>(JQS)は、今2019年9月期業績が、減収減益予想にあるが、足元の金価格が、今期想定の1グラム=4200円を上回る4700円台で推移しており、PBR1倍水準は買い一考余地がある。中外鉱業<1491>(東2)は、今2019年3月期業績を下方修正し、大幅赤字転落予想にあるが、その極低位株価は思惑を呼ぼう。

 産金株のDOWAホールディングス<5714>(東1)と住友金属鉱山<5713>(東1)は、いずれも銅やニッケル価格の低迷で今2019年3月期業績を下方修正し年初来安値を更新中だが、DOWAHDは、貴金属リサイクル事業を展開し、住友金鉱は、世界有数の高品位金脈の菱刈鉱山を保有しているだけに、逆張り余地がある。

■本命のエネルギー多消費の電力・ガス株を原油安メリットを享受のエアライン株が追撃

 原油価格下落では、逆相関でエネルギー多消費セクターの電力株、ガス株が、原油安メリットを享受することになり、現に東京電力ホールディングス<9501>(東1)、北海道電力<9509>(東1)、東邦ガス<9533>(東1)など売り込まれた銘柄が、12月に年初来高値まで買い進まれたが、原発比率ゼロで年初来安値目前となっている沖縄電力<9511>(東1)も、穴株としてキャッチアップを期待したい。

 次いでエアライン株の日本航空<9201>(東1)、ANAホールディングス<9202>(東1)、スターフライヤー<9206>(東1)、航空貨物株の日本通運<9062>(東1)、山九<9065>(東1)、日立物流<9086>(東1)、近鉄エクスプレス<9375>(東1)などに買い増勢となる展開が想定範囲内となる。また国内物流株も、年初来安値水準にありバリュー的にも売られ過ぎを示唆しているハマキョウレックス<9037>(東1)やトランコム<9058>(東1)などの底上げを期待したい。(本紙編集長・浅妻昭治)

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