【注目テーマを探る】新春相場は「木を見て森を見ず」、テーマ株、個別銘柄の一本吊り

【ロータス投資研究所代表 中西文行 氏】

■際立つ情報通信業界の明るさ

12月11日に財務省・内閣府が公表した19年10-12月期法人企業景気予測調査(調査日は11月15日時点)で、大企業全産業の景況判断指数(BSI)の現状判断はマイナス6・2と2四半期ぶりにマイナスに転じた。今後の見通しについては、20年1-3月期のBSIがプラス2・0、4-6月期は同プラス1・1と、新春は景況感の改善を示していた。全規模の19年度業績は前年度比0%増収、同6・3%経常減益だが、情報通信機械器具製造業を見ると同48%経常増益である。楽天の携帯事業参入に見られるように情報通信業界の明るさが際立つようだ。

12月13日に公表された日銀短観12月調査でも、大企業製造業の業況判断指数の「最近」が9月調査から5ポイント悪化してゼロとなり、4四半期連続して悪化であり、13年3月調査のマイナス8以来の低い水準だった。「先行き」も2ポイント悪化してゼロだった。大企業全産業の19年度業績は前年度比0・8%減収、同9・2%経常減益と見通され、当期純利益は同3・9%減益と厳しい計画だった。その中で、設備投資に明るさがあり、ソフトウエア投資額は同6・6%増、中堅・中小も含めた全規模合計で10・1%増だった。金融機関のソフトウエア投資額も同12・0%増と2ケタ増だった。事業環境は明るくないが、企業の設備投資意欲までは衰えていないようだ。

■東京オリンピックでお祭り騒ぎ!5G投資は待ったなし

7月から東京オリンピック・パラリンピックが開催され、国内はお祭り騒ぎ、マスコミ報道もオリンピック一色となろう。不透明な国際情勢とは対照的に国内情勢は明るい。20年度の一般会計予算案も8年連続の過去最高規模で、オピンピック以降の景気後退を防止するため国土強靭化など公共インフラ投資に重点が置かれた。民間設備投資、とりわけ自動運転やフィンテック、シェアリングエコノミーなどのツールとなるスマホ、その高度化の土台である第五世代通信網(5G)の投資は、待ったなしだ。

大企業の19年度・20年度業績見通しは楽観できない。新春相場は「木を見て森を見ず」、小売業などへの消費税増税の影響を警戒、1月から3月にかけて四半期決算発表ラッシュの中、テーマ株、個別銘柄の一本吊りである。具体的には、ディフェンシブの薬品として中外製薬、国土強靭化でライト工業、太平洋セメント、5GでコムシスHD、村田製作所、ソフトウエア開発でSCSK、伊藤忠テクノソリューション、訪日外国人増加で京成電鉄、ソースネクスト、全国からオリンピック観戦でJR東日本、大型テレビ、パソコン買い替えでヤマダ電機、電気自動車(EV)で日東工業などである。

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